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3


長い間口を閉ざしていたものをいざ口にするというのは相当な勇気が要るはずだ。

ましてや親という立場。

アシェスは肩肘を突き、足を投げ出したまま語るのを待った。

それは堅苦しくなるなと言わんばかりの、横暴な意思表示。


やがてレイドは重たい口を開きだした。

代行者のこと、それを狙う輩のこと、王位のこと。

監禁に至った経緯など、すべてをスフィアに言い聞かせた。

スフィアは一つ一つの言葉をしっかりと目を見据えて聞いていた。

ようやく証された自分の正体。

代行者という存在だということに実感がわかないようだったが、それでも真剣な面持ちでレイドの言葉に頷いていた。


「すまぬな…お前に重みは背負わせたくないという想いが、結果的に苦しめ悲しい想いをさせてしまった」


「ううん…お父さまは私の為を思ってしてくれたということが分かったんだもの。私はそれが嬉しい」


胸に手を当てスフィアは優しげにレイドを見つめていた。

何十年にも及ぶ胸の支えが取れたのだろう。

彼女の目にはうっすらと涙さえ浮かんでいた。


「しかし苦労叶わずお前が代行者ということが、外部の賊に漏れてしまった。これからまた恐い目に合わせてしまうかもしれん…腑甲斐ない私はこうして怪我を負ってしまった。私自身が護ってやることは出来ぬ…」


レイドはアシェスの方へと向き直った。


「アシェス、この子を…頼む」


「ああ…任せておけ」


アシェスはその約束に力強く頷いた。


「王位を継ぐか、王都へ行くのか…それはお前自身が決めること。よく…考えておいてくれ」


「…はい」


娘の幸せを願う。

親ならば当たり前のこと。

だが現実は辛い局面に瀕している。

これからどのようなことが待ち受けているのかレイドにすら想像も付かないことだろう。

例え片付いたとしても、スフィアは辛い宿命を背負い、選ばれた道にしか進むことが出来ない。


「少し疲れた。私は眠らせてもらうぞ。アシェス…くれぐれもスフィアを頼む」


「ああ」


立ち去る間際、スフィアは一度振り返りレイドに声をかけた。


「お父さま…お休みなさい」


「うむ、お休み」


もっと話したかったのだろう、甘えたかったのだろう、しかしスフィアはそれらを堪え王室の扉をゆっくりと潜り抜ける。

やがてその扉は光を遮るように閉じられた。

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