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2

ハースとクェルドという二人の存在。背後に控えるエルビス。

彼らが何を企み、どう実行に移してくるのかは検討もつかない。

だが今回はエルビスという男が、アシェスに自らの存在を知らせるために仕組んだ茶番とも受け取れるものだった。

そんなくだらないことの為に、ローウェンス王宮は半ば崩壊し、死者をも出した。

表情では冷静だが抑えきれない感情に己を食われそうになるのを必死で堪え、拳に力がこめられていた。


「あんたも今回の事件で身に染みて分かったろうが、あいつらの力は半端じゃない。もはやスフィアの存在を隠している場合じゃないのは明白だろう?」


レイドは的を突かれたのか、その言葉にしばしの沈黙を貫いた。

項垂れ真っ白なシーツに視線を移す。


「このまま城の連中に黙ったままじゃ指揮にも影響する。不信感を募らせたままでは、今度攻め込まれた場合どうなるかはあんたでも容易に分かるはずだ」


自分たちが何の大義で戦っているのか。それすら教えられないようでは、やがて城を捨てて逃げてしまいかねない。

ここは魔法国家ローウェンス。

独占欲が強く我が強い魔導師を束ねていられるのは、レイドという男の人柄と王としての器のおかげもあるだろう。


「うむ…」


それでも尚、レイドは口を濁していた。

やがて決意を決めたように頭を上げた。


「スフィア!入ってきなさい」


レイドは奥の扉に向かって呼び掛けた。

しばしの沈黙。


(あいつ、隣に居たのか…?)


しばらくすると扉が開き、不安そうな顔をしたスフィアが姿を現わした。


「お父さま…」


スフィアは助けを乞うような目でアシェスを見ながら、レイドの横に立った。


「お前に…話さねばならないことがある」


声の緊張を感じ取ったのか、スフィアの喉が音を鳴らした。


「あの…」


「黙って聞いてやれよ。お前が長年監禁されていた理由を語ってくれるって言うんだ。余計な気遣いは無用だからな」


何かを言い掛けたスフィアをアシェスは制した。


「う…うん」


レイドは視線で謝礼の合図を送ってきた。

アシェスは気を遣ったのか部屋を出ていこうと、立ち上がり体を扉の方へと向ける。


「アシェス、そなたも居てくれ。そのほうが私も語り易い…」


緊張を隠しきれない声で、レイドはアシェスを呼び止めた。

渇いているような間の抜けた声が場の空気を和ませる。


「…ったく、この話するのに俺は場違いだろうが。何を言ってやがんだ…」


アシェスは呆れたように頭を掻く。

親と子の溝を埋めるであろう会話に、他人が立ち入る必要など本来ならありえないだろう。

だがそれでも恐怖という感情があるのだろう。

レイドの瞳からは一人の弱い人間としての光しか感じ取れなかった。


「はぁ…子が子なら親も親だな」


レイドとスフィアを交互に見渡したあと、アシェスはかったるいと言わんばかりに、部屋の片隅に腰を下ろした。

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