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地平線のように見える、果てしなく長い廊下を三つの人影が歩く。
しかし動いているのは中央の人物だけで、両側の二人は引きずられるような形で自らの足では歩いてはいない。
「ア…シェス…さん?」
右肩に担いでいるディオが目を覚ます。
未だ辛そうではあるが、口を聞くくらいば大丈夫のようだ。
「起きたか。自力で歩けるか?」
「はい…大丈夫…です」
肩を借りねば歩けない様だが、アシェスにしてみればそれだけでも負担が減ったのか多少楽になった。
「レ…レイド王!」
左肩には未だ意識を失っているレイドの姿がある。
ディオの顔は今にも不安で潰れそうな様子だった。
「心配ねぇよ、気を失っているだけだ。怪我の程度はそこまでひどくはなさそうだが、医務室を探してんだ。わかるか?」
「はい…ここは…」
ディオは辺りを見渡し、位置を確認する。アシェスたちは謁見の間より一つ階段を降りた廊下を歩いていた。
「医務室は一階の北側…に有ります。私も手伝います」
震える手をレイドに伸ばすが、アシェスはそれを跳ね除けた。
「てめぇだってボロボロの怪我人だろうが。おとなしく肩に掴まっておけよ」
「すみ…ません…」
何も出来なかった自分を悔やむように、気付かぬ内に肩を掴むディオの手には力がこもっていた。
「何処に居るかはわかんねぇが、スフィアも無事なようだからな。そう自分を責めるんじゃねぇよ」
「…はい」
力ない言葉が肩に伝わる。
「アシェスさん…侵入者は…?」
「逃がしたよ…」
呟くように言葉を漏らしたアシェスの顔は、とても悔しげな表情をしていた。
ディオは思い出す。
アシェスが侵入者の攻撃から助けてくれたことを。
ひょっとしたら自分があの場に現れなければ、彼は侵入者を倒していたのではないだろうか?
今は固まっているが、額から流れた血の跡を見てディオは俯くように顔を地に向けた。
(私は…どうしてこんなにも無力なんだ…。今までの状況に過信して、努力が足りなかったのだ…)
自分を責めたところで何も変わらない。
しかし今回の戦いで部下を何人も失ったばかりか、またもレイドを護ることが出来なかった。
更にアシェスの足まで引っ張る形になってしまった。
完全に役立たず。
肩書きだけの『王宮騎士隊長』。
情けなくて惨めで、ディオは声を殺して泣いた。
「泣くんじゃねぇよ…みっともねぇ。あの戦いから無事生還できたんだ…今はそれで良いだろ。後悔するよりもこれからのことを考えろ、てめぇはこの城の騎士隊長だろうが」
「は…い…」
「生きてりゃ借りを返す機会だってあるさ。そう…諦めなきゃな」
アシェスその言葉を発した後、医務室に着くまでの間口をつぐんでいた。




