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「クソ野郎が!」


アシェスは天に向かっておたけびを上げていた。

エルビスの手がかりに繋がる存在をまんまと逃がしてしまったのだ。


「アシェス・ウィントン…君は魔力を持たぬ人間ながら確かに強い。それは認めるよ。だが…やはり甘すぎるね。戦いの場で仲間に気を取られるようでは、君は僕らには勝てない」


ハースの声が部屋全体に振動するように響き渡る。

見渡すが存在は確認できない。


「どこにいやがる!!」


「油断してたとはいえ今日は僕の完敗だ。だが次会ったときはこうはいかないよ」


「姿を見せろ!」


「ははは…ごめんねぇ、それは出来ないよ。本当のゲームはこれから始まるんだから」


「…これから…だと?」


辻褄の合わないことを言っている。

一体何が目的なのか?


「本当なら今日は挨拶程度だったはずだったんだけどね…少しばかり遊びすぎたようだ。代行者については近々頂かせてもらう。精々…スフィア姫を護ってみるんだね」


「てめぇらが何を企んでるかは知らねぇが、思い通りにはさせねぇよ」


「…実はね、エルビスが君のことを甚く恨んでいるんだ」


「な…に?」


(エルビスが俺を恨むだと?)


身に覚えなどないと言ったように、アシェスはあらぬ方向へと視線を漂わせた。

だがすぐに頭に血が上ってきたのか、ぎりぎりと歯を食い縛る音が鳴り響く。


「エルビスの所在は言えないけれど、近々彼は君の前に姿を表わすはずさ。代行者の在処を突き止めた今、御大の復讐がいよいよ始まるんだよ…くくく」


「復讐?」


「おっと…喋り過ぎるとクェルドに怒られちゃうな。ではそろそろ…」


「待ちやがれ!」


アシェスの叫びは虚しく響くだけ。声の所在は発見すること叶わない。


「ごきげんよう」


ハースがそう言い残すと、辺りには静寂だけが残った。


がいん!


アシェスの拳は溢れ出た怒りを大地に向けて吐き出す。

破壊し尽くされたローウェンス王宮。傷つき倒れた多くの兵たち。

これらすべてがエルビスの企みにより、もたらされた結果だ。

長年探し続けた男が今、再び何かを企み動き出したのだ。

それは彼があの日見た絶望の再来なのか。


「俺は…」


アシェスは片膝を突きながら、疼く左手を強く握り締めた。

打ち付けた拳はいつまでもいつまでも…その場から放すことが出来なかった。

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