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プライドももう破り捨てられた。

今は生還することを考えるしかハースの頭にはない。


「やれよ…やってみやがれ。その瞬間、てめぇは地獄を見ることになるがな」


もはや何を言おうと何をしようと、我を見失ったであろうアシェスには通じない。

本気で言っているのかそれとも別の意図があるのか、アシェスの刺すような眼力によりハースは判断を躊躇う。


「う…動くな!僕を本気にさせるなよ!やると言ったらやる!」


足を一歩踏み出そうとしたが、その右足がぴたりと静止する。


「ふはは…やっぱりハッタリじゃないか!」


動きの止まったアシェスを見て笑いが込み上げてくる。

しかし彼は何故か背後を振り返っていた。


「…レイ…ド…王」


扉の前に、剣を杖代わりにここまで辿り着いてきたと思われるディオの姿があった。

砕け散った無残な形をした鎧だったものを纏い、全身傷だらけの体を引きずるようにして二人の元へと向かっている。


「あの…馬鹿野郎」


毒づくアシェスを前にハースに笑みが浮かぶ。

危険を察知したのかアシェスは駆けた。

アシェスという男は冷静さを失ったように見えて、その実状況は常に把握し、臨機応変に切り換える。

それが長年の間に培われたものなのか、だが今この現状ではハースにとって好都合だった。


「感謝するよ!王宮騎士隊長さん!」


最後の魔力をディオに向け放った。


「ディオ!伏せろッ!」


迫り来る光の渦。

五体ボロボロなディオにはよろけるだけで、その光をただ見つめるだけしか出来なかった。


「く…ぅ…レイド…王…」


「馬鹿野郎ッ!なにやってやがんだ!」


アシェスは懸命にディオに飛び付いた。


轟音と爆煙が壁の破片を撒き散らす。

破壊の衝撃。

アシェスはディオと転がりながら激しく床を舞った。


「…ッ」


破片が舞う中、額から出血し煤だらけの顔を起こしディオを見るが、気絶したのか意識を失っていた。

胸の起伏が生きている証拠だった。


「くそ…あのガキは!?」


玉座の方を振り返ると、すでにそこにハースの姿はない。

投げ出されたようにレイドだけが無残な姿で床に転がっている。

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