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居る。
この近くに。
あの男が。
すぐ近くで俺を見ている。
どす黒い感情が心の底から沸き上がってくる。
エルビス・トルファー。
自分を強固な鎖で縛り、統括し束ねていた南京錠。
殺せる。
ようやく殺せるのだ。
この手で。
アシェスの表情は鬼神ともいえるものだった。
見入るハースでさえ、その表情に畏怖というものを背筋に感じのか、足が一歩引けている。
それ程、今のアシェスは恐ろしい空気に包まれていた。
「…答えろ。ヤツは今どこにいる」
「ぼ…僕が素直に言うと思うのかい?これで君は否がおうでも僕と戦わざるを…」
「答えろ」
アシェスはハースを見据えたまま歩き出す。
その歩みは警戒心や緊張感などまるで持ち合わせていない。
真っすぐにハースのもとへと距離を縮めていく。
「答えろよ…」
「く…」
ものを言わせない異様な威圧感に焦りと危険を感じたのか、ハースは近づくなと言わんばかりに光の針を打ち出す。
無数の針がアシェスを襲う。
ぎんぎんぎん!
アシェスはシュヴァゼルトを鞭のように舞わせ、すべての針を弾き返していく。
歩みは微塵も止めることはない。
先程までの男とはまるで別人のようだ。
「答えろよ…エルビスはどこだ」
「う…うわぁぁぁ!!」
蛇に睨まれた蛙のように、ハースは自分を見失ったように魔力を高める。
今度は光輪を放つ。
二撃同時に光輪を放つが、今のアシェスには通用しない。
シュヴァゼルトを使う事無く、紙一重で斬撃を躱す。
微量の髪が舞うだけで、光輪は壁へと突き刺さるだけに終わる。
目線は依然としてハースの瞳を離さない。
(なんだ…コイツは…エルビス、話が違うじゃないか…)
たかが剣士、更に魔法の素養の欠片さえない男が、いとも簡単に自分の魔法を軽くいなしていく。
獣のような鋭い目付き、他者をひれ伏させるくらいの眼力。
ハースにしてみれば冗談意外の何物でもなかった。
(アシェス・ウィントン…コイツは…)




