表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/191

20

「その腕で何が出来んだよ。切り落とすつもりで斬ったんだが、それでも傷の度合いは同じだ」


「こんなもの…掠り傷に過ぎないさ」


軽い魔法で出血だけを止める。今この場で出来る治療と言えばこのくらいが限度であった。

しかしそれだけで十分と言わんばかりにハースは更に飛び退き間合いをとった。

戦いを止めるつもりは毛頭ないらしい。


「まさかゼピス創石の剣を持っていたとはね。これだけは迂闊だったよ…」


「詳しいな、一目で気付くとはよ。そうさこいつはシュヴァゼルト。すべてを切り裂く剣」


金色の光を放つ剣・シュヴァゼルト。

刀身は非常に薄く透明で景色が透けて見える程。それでいながら強度は非常に高く、この世に切れぬ物はない言っても過言ではない。

何よりも軽く、その薄さなこともあり持ち手に重量感を与えない。

力ではなく技術で斬る。さすれば岩をも紙切れのように裂いてしまう。同時に空気までをも切り裂く。

まさしく旋風の剣。

かつて手に入れたゼピス創石を加工し作り上げた、魔法の扱えぬアシェスの絶対たる力。


「なぜ君がそんなものを持っているかは知らないが、これは確かに厄介な代物だね」


「本来ならコイツは人を斬るもんじゃねぇ。だが、てめえみてぇなヤツを相手にするときは別だ」


「ふ…それが紅き旋風と呼ばれた所以…か」


「紅き旋風現わる場所に血の雨が降り注ぐ。それはまさに旋風のようで、突風を感じたとき死を描く軌跡が大気を裂く。まさに噂どおりの通り名だった…というわけだね。油断したよ」


ハースは負傷した左手を庇いながら静かに語る。

今の彼からは戦闘意志が見えなかった。


「油断してたとはいえ、この僕に傷を与えたんだ。ご褒美をあげないとね」


「あん?」


「教えてあげるよ。君が狂喜することを…」


ハースはにやりと口元を歪めた。


「僕らが言った御大という存在…それが誰かわかるかい?」


「……………」


アシェスは答えない。知るはずがないのだから。

しかし予感はあった。それはハースのその笑みから感じたのだ。


「エルビス・トルファー。君が長年捜して続けていた男だよ」


アシェスは目を見開いた。

体中の血が騒ぎ騒めく。

逆立つ産毛が鳥肌となって体中を震えさせる。

剣を握る手はいつしか歯止めなく力がこもり、右手からは潰れた豆からじわりと血が滲んできた。

狂喜、ハースは言った。

まさしくその通り。

アシェスは抑えきれない感情を制御しようとしたが、本能がそれを拒んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ