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いつまでこんなところに居るつもりなのか?
そんなことは自分にも分からない。何しろ今回の騒動について何も知らないのだ。
ただ一つ言えること。
犯人は自分を邪魔者だと思っている。
こうしてこの牢にいることは、そいつの計画通りなのだ。
それにもう一つ、挑発とも受け取れる。
自分をアシェス・ウィントンだと知っていて罠にはめたのだ。
どういう理由で誘っているかは理解しようがないが、売られた喧嘩は必ず返す。
試行錯誤出来れば良いのだが、生憎『賊』ということくらいしか判らないため、相手の出方を待つことしか出来ないのだ。
自分がこの場に居れば、必ず標的は動きだす。おとなしく捕まり沈黙を決め込んだ理由はそこにある。
壁に背を当てていると、微かに震動が伝わってきた。
揺れている。
遠くの方で何かが揺れ響くような音。それは不定期に感じられた。
この場で揺れを感じないのだ、地震などの類ではない。
ここは王宮の地下、音の所在地は決まっていた。
「まさか…」
はっと天を見上げる。
(もう始まっているのか…?)
眠りこけている間に、事態は進んでいたということになる。
「迂闊だったな」
くだらない自問で責めている場合ではない。
少なくともスフィアだけは護ってやらなければならないのだ。
「グスグスしてる暇はねぇな…行くか」
アシェスは壁ぎわに立つとゆっくりと剣を抜いた。




