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「舞台は整った」
深遠の闇は光さえ拒む。それは漆黒。
陽の光を拒み闇を望む。
男は神器に触れた。
淡い光沢を放ち神々しい。
「この世界は…すでに闇色なのだ。ならばすべてを染めてやろう」
かつて自身が絶望したように、世界もまた絶望に包まれる。
この世界に光などない、あるとすればそれら全ては偽善。
力でしか抗えないのならば、それが『在り方』というものなのだろう。
それが世界の在り方であるのならば、喜んで受け入れよう。
滅びの未来に向かっているのならば導けば良い。
抗う必要などない。
その道筋を少しだけ変えてやればいいだけだ。
いくつもの血管が浮き出た左手で、抱えていた書のページを捲る。
「アウクヴェストの思想が正しいなどと思わせぬ」
ゼレオという筋書き通りに人は進まない。もはや神など必要としないのだ。
虚言と妄想。
理想を掲げているだけの愚かな幻想家に過ぎない。
ダスクヴェイルはもう時期一つになる。
男は神器を撫でるように触れながら、低く呻くような声で嗤っていた。
いつまでも。いつまでも。
その声はまるで、何かに全てを蝕まれているかのような…。




