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「なぜ…何も答えなかったのですか?」
地下牢へと連行する際、ディオは重い口をようやく開いた。
謁見の間でのやりとりのことを訊きたいのだろう。
厳しい顔つきがアシェスに突き刺さる。
「私は…あなたが首謀者などとは信じていません。一体…何を考えているのです?」
「……………」
「…真実だから答えられない、という訳ではないでしょう!今の貴方はどこか不自然すぎる」
いつのまにか歩くのを止め、目の前に立ちすくむディオ。
アシェスはそれが勘に触ったのか、ここに来て初めて感情が読み取れるであろう表情を浮かべた。
静かに怒りを含んだ口元。
眼光からは敵意や殺意は発せられないが、その眼差しには有無を言わせない意志が宿っている。
「黙れ…」
「…っ!」
アシェスは一言そう吐くと、目の前に立つディオを無視し勝手に歩き出す。
自ら率先して牢へと向かうようだ。
(一体…何を考えているのです…)
言葉にしなければ弁護すら叶わない。
ディオは信じたくなかった。
あの紅き旋風と呼ばれた熱血漢が、このような計画的真似をしたなどと。
自分がかつて憧れさえ抱いていた男のこんな姿を認めたくなかった。
いつしか手にしていた鎖は放れ、ディオはその場に立ち尽くしていた。




