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鎖のようなもので体中を巻かれ、連れられた先は謁見の間であった。
危害を加えられないようにするためか肩から両手の先まで力強く結ばれている。
魔力の感じられない彼には分からないことだろうが、魔法もかけられていることだろう。
普通は罪人など直接牢へと放り込まれるのだが、どうしても確認しておきたいと国王がアシェスとの対面を望んだのだ。
昨日の今日でこんな事態になるなど、レイドも自身思いもよらぬ出来事だったろう。
囚われの身となったアシェスを悲しげに見つめ、レイドは口に出すべき言葉を探していた。
「…一つ聞く。そなたは本当にあの事態を自分の仕業だと認めるのか?」
アシェスは何も答えない。
静かにレイドを見つめている。
その瞳には焦燥も困惑もない。
ただ目を見開き、目の前にあるものを眺めているだけに過ぎない。
レイドの背後にはディオの姿があった。
アシェスにかける言葉さえ見当たらないようで、終始動向を見守る立場を貫く。
「なぜ答えない!」
声量の増した怒鳴り声ともに、その拳が肘掛けに叩き付けられる。
レイドは苛立ちを隠そうともせず、感情の赴くままに吐き出す。
信じていた人物に、一夜にして裏切られたのだ。
代行者の事実はすでに王宮の人間にはほとんど伝わってしまっていた。
スフィアが代行者という存在であることは漏れなかったにしても、これももはや時間の問題であろう。
レイドは金属で出来た肘掛けを、行き場のない怒りで握り潰さんばかりだ。
老いたとはいえ、政治だけの権威力だけでこの地位にいるわけではない。
生粋のヴェルナンの血を受け継いだ魔力の力。
レイドから感じる威圧感はそこにある。
だがアシェスは黙りを決め込む。語ることは何もないとでも言いたいのだろうか。弁解も謝罪も自白さえも口にすることはなかった。
ただ空気のようにその場に佇むだけ。
しかし眼だけは逸らすことはない。
激しい怒りの眼差しで睨み付けられようと、アシェスは真直ぐだけを見つめていた。
何を考え、何を思うのか。
その態度は国王の怒りを増幅させた。
「黙認…それが答えか!」
レイドは自身が吐き出した言葉で折れたように、がっくりとうなだれた。
何一つ語らない男。
それは認めているとも言えるのだ。
王は絶望したかのように力なくこうべを地に向け垂らした。
「…連れていけ」
「承知」
搾り出すような声で命令を飛ばす。
ディオはアシェスを束縛する鎖を引っ張り、謁見の間から連れ出した。




