三章・信頼と裏切り1
どよめきと悲鳴、階段を駆け上がる無数の足音。
がしゃがしゃと重なった金属的な音を混じらせ、それは部屋の前で集結したように止んだ。
すると、ドアを乱暴に引き剥がさんとばかりに力が加えられる。
鍵が掛かっていることが分かると、扉に槍が突き立てれられた。
破壊してでも内部に侵入しようとする意志が伝わってくる。
無数の槍による攻撃により刺し貫かれ、木製の扉はあっさりと壊れた。
「アシェス・ウィントン!!」
乱暴な足音と共に、叫び声は狭苦しい部屋中に響き渡る。
侵入してきた男たちは見回すが、室内にその人物らしき男は見当たらなかったのか焦りをあらわにする。
「クソ…逃げたか…」
全身を物々しい鎧に包まれた男たちが部屋を退室しようとすると、目を見開き驚愕の表情をあらわにした。
「いきなりなんだよ、てめぇら」
アシェスは扉のすぐ脇の壁にいた。
最初からその場で静観し、一部始終を見続けていたのだ。
壁にもたれながら腕を組み、横目で男たちを睨み付けている。
その姿と表情は平然そのものだ。
「王宮の連中が随分手荒なモーニングコールをくれるじゃねぇか」
鎧に包まれた男たちはローウェンスの騎士たちであった。
胸に描かれたシンボルマークがそれを意味している。
「貴様を…連行する!」
「なに?」
彼らは本気だった。
冗談を言っているわけでもなく、かといって脅しているわけでもない。
後ろには少数ながら魔導師たちまで待機している。
いきなり武装して民間の宿などに乗り込んで来るとは、もはや正気の沙汰とは思えない行動。
「何があった?」
「とぼける気か!?貴様はもはや国中で手配された。逃げられはしない」




