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―――収穫祭前日。


街の雰囲気は打って変わり賑わいを増す。

静けさなど無用、騒ぎたてる民衆の歓喜の声が響き渡っている。

大通りには普段の倍近くの露店が並び、明日への準備を着々と進められていた。

前夜祭と思わせるほど活気だち、すでに収穫祭は始まってしまったような雰囲気。

結局これまでエルビスたちに動きはなく、不気味さと不安さだけが募っていた数日間。スフィアの監視など、ジェスターにも協力してもらっていたとはいえ気の休まることはなかった。

いつ攻めてくるとも言えない状況下、鍛練だけは怠らないようにディオと毎日のように剣を合わせていた。

警戒すべきはやはり明日の収穫祭なのだろうか。などと考え事をしていたアシェスは、宿泊室のベッドで寝返りをうっていた。

もはや陽も沈み、辺りは静けさと闇に包まれている。

寝付けないというわけではないが、どうにも気が昂ぶっているのか落ち着かない様子だった。

相手の出方を待つことしか出来ないのは前回同様歯痒くて仕方なく、言い様のない疼きが睡眠を拒む。


「ちょっと風にでも当たってくるか」


アシェスは独り言を呟くなり、ベッドの反動を利用して飛び上がるように宙に舞った。

暖かな季節はそろそろ終わりと告げるように、夜風は涼しさを増している。

アシェスが扉を開こうと手を伸ばすと、ひとりでにドアノブが回った。


「お」


「うわ!アシェス…起きてたんだ」


扉を開けた先から現れたのはスフィアだった。

まだ眠っていなかったらしく、服装も昼間見た普段着のままである。

お互い扉の前に居た事で驚いた様を見せる。


「起きてたんだ…じゃねぇ!ノックもなしに入って来やがって」


「ご…ごめんなさい。ちょっと話をしたかったから…。でも、どこか出かける予定だったの?」


「ああ、ちょっと風に辺りにな…ってか、一人で出歩くなって言っただろうが?緊張感なさすぎだぞ」


首を傾げながら訊ねてくるが、一人で出歩くなという忠告を無視して来たスフィアに、アシェスは軽く頭をこずいた。


「あいた!それは悪かったと思うけど…」


「お前は危機感が足んねぇんだよ!」


怒鳴るとまではいかないが、事の深刻さを認識させるために強く言い放った。


「ごめん…なさい。でも、アシェスと二人きりで話をしたかったから」


悲しげに満ちたようなしょぼくれ顔で言われては、まるでいじめているような気分に苛まれる。

先を続けようとしていた声が思わず喉に詰まった。


「ち…しゃあねぇな。んじゃ中庭まで付き合え」


「う…うん!」


やれやれと肩をすくめながらアシェスは首だけで促した。

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