表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/191

2




別館、スフィアの住居とも呼べる場所。

そして彼女と再会を果たした場所。

食堂にはすでにスフィアとジェスターが揃っていた。

テーブルに並ぶ料理は朝食とは思えないほどの華やかさ。

高価な食器や飾られた花瓶など、見た目も派手なそれらを見やると、アシェスは朝から目眩がした。


「おはよう、アシェス」


「…ああ」


「まだ…怒ってるのかな?」


「単に眠いだけだ。気にするな」


まともに答えるのも怠いようで、アシェスは一息吐くとすぐに席に着く。


「今日はお前はどうすんだ?」


腰を降ろすなり、開口一番スフィアに訊ねる。

意表を突かれたように一瞬目を丸くしたが、すぐに答えを口にする。


「え?うん…ジェスターさんにお話でも聞かせてもらうつもり」


「そうなのか?」


「ちょっと収穫際の話でも…とね。結局例年どおりやることになったんだから、スフィアさんも楽しみなようだし」


「ふーん、なら今日も俺が護衛する必要もないな」


同じことを何度も言うのも馬鹿らしいと、アシェスは鼻で返事をするだけだった。

腹が減ってるのか、早々に焼きたてのパンを掴む。


「あ!」


「あん?」


口に運ぼうといった所で、スフィアがいきなり叫んだ。

大きな口を開けたままアシェスは固まる。


「アシェス…前々から思ってたけどその手袋。食事中くらいは外したほうが…」


黒い革手袋。アシェスはそれを左手だけに常に身につけている。

黒い色彩ながらまともに洗濯さえしてないようで、遠めから見ても汚れは目立つ。

その手袋の上から無造作にパンは握られていた。


「別に良いだろが?俺は気にしねぇんだから」


「ダメだよ!凄い汚れてるし…不潔。気になってたけど、何でそれ外さないの?」


アシェスは思わぬ質問に渋い顔をしていた。


「気に入ってんだよ」


「じゃあせめて洗濯しなきゃ。そんな手で食べちゃ病気になっちゃうよ?」


「いいんだよこれは。俺はそんなことくらいで病気になるほどヤワじゃねぇんだ。ほっとけ」


「う~…」


「ス…スフィアさん!あれはあとで僕が洗わせますから」


ジェスターが助け船を出すように割り入ってきた。

昨日アシェス自身のことについては、そっとしておいてやれと言ったはずだが、手袋についてもその一つだということを彼女は認識していない。

無意識のうちに彼女は、それに触れてしまう性なのだろうか。

無垢とは罪というのはこういうことなのだろうかと、ジェスターは胸中で苦笑いをしていた。


「でも…」


「お節介なヤツだなお前は。ほっとけって言ってんのに」


気抜けたような目線でスフィアに訴えかける。

アシェスの呆れ顔は、彼女にとってもはや慣れたものだった。

心配させないがための言い訳。それだけに怯まない。


「なんか…引っ掛かるなぁ。ひょっとして…それも私に言えないこと?」


「………」


アシェスは無視しながらそのままパンを口へ運んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ