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どういう話の切り替えなのか、嫌な話題を持ち出してくる。
国で起きた事件は真っ先に頭に届くと聞いていたが、噂通りのものである。
レイドに気付かれないように、アシェスは小さく舌打ちをした。
「…それはジェスターがな、実験に失敗して自宅ごと破壊しちまったんだ。スフィアのこともあって面倒ごとになるのがウザかったから、放置して逃げちまったんだが…悪かったな」
「なんだと…?あのジェスターという男がか?」
「ああ…アンタたち王宮の人間は本当のあいつを知らないだろうが、俺が知っている魔導師の中でも指折りなんだ。正直俺が戦っても勝てる見込みはわからねぇくらいな」
少なくとも化けていたハースとは互角くらいの力はある。
そういう意味では、あの茶番は洒落にならなかったことかもしれない。
もしもハースが余計な言葉を口走らなければ、本気で騙されていたのかもしれないのだから。
そんなことを付け加えながら、苦笑いでレイドに弁解していた。
「あの男がそんな実力を秘めていたとはな…脳ある鷹はなんとやら…だな」
「そんなわけだから、あいつにも協力してもらうことにした。俺一人ではさすがにカバーしきれないかもしれねぇからな。俺がスフィアについてやれねぇときは、あいつに任せたいんだが…構わねぇよな?」
「うむ…そなたがそう言うのなら任せよう。そんな男が加わるのならば心強いことはないのだからな。だが…本当に任せて良い男なのか?」
「心配ねぇよ。人柄は俺と違って反対な優秀なやつさ。あんたがディオを買っているように、俺もまたあいつだけは信用している」
「そうか…なら心配はいらぬことだな」
やはりレイドという男はアシェスを買い被りすぎる節がある。
普段ならばそれを快く思わないアシェスではあったが、今回の場合はそれを素直に感謝した。
物分かりの良い人間というのは嫌いではない。敢えて頷くだけに止めた。
「しかし…」
レイドは突然よそよそしいような言葉をうめくように発した。
思案しているのではない、勿体ぶっているかのよう。
顎を擦るようにして視線を彷徨わせている。
「それならば収穫際の話は一段落だな」
「ん?」
「当日はジェスターと二人でスフィアを頼んだぞ」
(まあ確かにそういう流れで考えれば、問題ないかもしれねぇが…)
アシェスは負けたといったように苦笑する。
「はっ…まったく食えねぇなアンタも」
口に出した言葉はそんな皮肉ったものだった。
「仕方あるまい、そなたほど魔導師との戦いに慣れている者もおらんでな。あれほどの猛者を退ける実力と経験、これは認めているのだ」
「正直、魔導師との戦いってのは楽じゃねぇ…俺だって一歩間違えたら軽くオダブツなんだぞ」
気楽に言ってくれるが、アシェスにしてみれば言葉にした以上に大変なのだ。
魔力を持たない人間が魔力を持つ者と戦うというのは、高台から攻撃を仕掛けてく相手に素手で立ち向かうものだ。
遠距離攻撃と近距離攻撃、どう考えたところでこちらの分が悪い。
頭が切れなければ、近づくすべなく生き絶えることだろう。
(だからこそ、俺は対魔導師の戦法を必死で身につけたんだからな)




