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街中はいつもの日常よりも微妙に慌ただしかった。

注意して観察しなければわからない程度ではあるが、足取りは軽く、心なしか浮かれた人間たちが数多く見受けられる。

商業区は活性化したように賑わいを増す。人々は間近に迫った日への世間話に華を咲かせ、笑顔を覗かせていた。

美術品など雑貨を扱う店などでは、その日のために精魂込めて職人たちが各々手腕を発揮し、創作を行なっていく。

収穫際が近い。

その匂いは人々の間にひしひしと感じられていた。


「中止はしないだと!?」


「無理だ…こればかりは私の独断で中止などできん」


王室から二人の言い合いが響く。

分厚い壁によって外部へは遮られているが、その声は喧嘩でもしているかのようなもの。

王宮へと一人先に戻ったアシェスは、レイドに真っ先に収穫際の件を話していた。


「国民のことを考えるのがアンタの仕事だろう?犠牲者が出てからでは遅いんだぞ!」


「確かにそなたの言いたいことはわかった。そしてそれが正しいこともな。しかし、それでは今起きている事実を公表してしまうと同じだ。これはスフィアのためという独占的な考えではない、余計な不安を抱かせないこともまた、最善だと思うのだ」


「く、一理あるが…」


「心配は無用だ、今の状況では確かに厳しいかもしれないが、収穫際には城の者すべての人員を使うつもりだからな」


「…おいおい、それは凄い発案だが、この王宮とスフィアはどうなるんだよ?」


「発案も何もこれは毎年のことだ。それに、そのためにそなたが居るのではなかったのか?」


当たり前と言わんばかりに、レイドの受け答えは自然なものだった。

拍子抜けしてしまうくらいの返答に一瞬戸惑うアシェスだったが、


「アホか!俺はそんなに万能じゃねぇぞ!俺は複数を相手に出来るような魔導師とは違うんだ」


ベッドに両手を叩きつけて突き返した。

しか、国王までが自分の意見に反対するとは思わなかっただけに、余計に苛立ちが募るようだ。


「まあ落ち着くが良い。どちらにせよ狙いはあの子だ。そなたが護ってくれているのなら何も変わらぬ」


「そりゃあ…そうだが」


「結局我らは敵のことを何も知らぬ…。どこから来るのか、勢力はどのくらいなのか?収穫際を行なおうが行なわまいが、変わらないというのが現状と違うのか?」


「そうかも…しれねぇな」


「収穫際が狙われようと、今すぐ襲撃を受けようと、結果は変わらぬ。どちらにせよ我々は全力で戦うがな。実際はたった一人にあそこまで脅かされたが、それはどちらも『予期せぬ襲撃』だったからだ。常に態勢を整えている今、この前のようにはいかんよ」


「今から民衆を非難させたとしても…パニックは避けられない。それこそあいつらの思うツボ…かもな」


「…そういうことだ。我々が自然にしているほうが向こうの動きも分かり易くなるものだろう」


レイドの顔は引き締まった表情をしていた。それは魔導師としてのプライドもあるのだろう。

老いたからとはいえ、実質は殺されていてもおかしくはなかった状況。完敗。

とどめを刺されなかったのは、スフィアの居場所を吐かせるためだったからだ。

どちらにせよ、君主からすればそれは国を落とされたと同等の意味に等しい。

しかしこの分ならば本当に心配はいらないのだろう。

レイドの表情はどこか自信に満ちあふれていた。


「それよりも街中の民家から、凄まじい魔力が放出されたと報告を受けたが…そなたは何も知らぬのか?」


(う…さすがに耳に入るのが早いな…)

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