表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
種馬ズ  作者: 雪だるま
おまけ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/57

45 レイ回

朝七時半。都内高級タワーマンション。佐藤レイはベッドの上で死んだ顔をしていた。


「のだぁ……」


眠い。


とにかく眠い。


昨晩も深夜まで番宣、撮影、取材、SNS動画、ライブリハ。帰宅したのは二時過ぎだった。だが売れっ子に人権などない。スマホには既にマネージャー田村から通知が十件以上来ている。


『起きろ』


『車着く』


『今日生放送』


『寝るな』


『スポンサー来る』


レイは布団へ顔を埋めた。


「働きたくないのだぁ……」


だが、その十分後にはもうメイクされていた。


テレビ局。朝の情報番組。


エレベーターが開いた瞬間だった。


「きゃっ……!」


女性スタッフの小さな悲鳴。


レイが眠そうな顔のまま歩いてくる。黒髪、長身、一九三センチ。パーカー姿なのに妙に目立つ。しかも朝だからか機嫌が悪そうで、余計に色気がある。


女性ADが固まっていた。


「レ、レイさんおはようございます!」


「のだぁ〜〜……おはようなのだぁ……」


眠そうに返事。


その瞬間。


「やば……声……」


「近い……」


「顔ちっさ……」


後ろで女性スタッフたちがザワつく。


レイ本人は慣れていた。というより、最近はどこへ行ってもこんな感じだ。局、スタジオ、雑誌社、CM現場。女がいる場所では大体空気が変わる。


しかも厄介なのは、レイは妙に愛想が良いことだった。


「寒いのだぁ?」


「えっ?」


「顔真っ赤なのだぁ?」


ニコッ。


「っ……!!」


女性AD、崩壊。


後ろのスタッフたちもザワつく。


「近い近い近い」


「やばい今の」


「無理なんだけど」


レイはもうメイク室へ向かっている。完全に無自覚だった。


メイク室。


女性ヘアメイクたちが既にテンション高い。


「レイくん今日ビジュいい!」


「肌つよ……」


「寝不足なのに顔終わってないの怖い」


レイは椅子へ座りながらボソッと言う。


「吾輩は常に美しいのだぁ♡」


「腹立つけど顔がいい」


「それなのだぁ♡」


キャッキャ。


完全に慣れた空気。


だが、周囲の女性たちは本当に楽しそうだった。レイはうるさい。俗っぽい。変なことばかり言う。なのに、顔が良すぎるせいで全部ギリギリ成立してしまう。


メイク中。


若い女性スタッフが恐る恐る近づいてくる。


「あ、あの……」


「のだぁ?」


「その……いつも応援してます……」


レイは鏡越しにチラッと見る。


「ありがとなのだぁ♡」


ニコッ。


「っっ……!!」


女性スタッフ、限界。


後ろへ下がる。


「無理……」


「分かる」


「至近距離やばい」


メイク室、女子校みたいになっていた。


その後、生放送。レイが出るだけでスタジオの空気が妙に華やぐ。MCの女子アナですら若干テンションが高い。


「今日は種馬ズのレイさんでーす!」


「のだっ♡」


ニコッ。


観覧席。


「キャアアアア!!」


歓声。


SNS。


『朝から顔が強すぎる』


『レイ見てから出勤した』


『女子アナ嬉しそうで草』


『あの顔で“働きたくないのだぁ”はズルい』


朝からトレンド入り。


その後、雑誌撮影。


女性誌。


これがまた地獄だった。


スタジオ入りした瞬間。


「きゃーーー!!!」


若い女性編集たちがザワつく。


「レイくん今日やばい」


「脚長……」


「待って横顔……」


レイは眠そうに欠伸しているだけなのに、何故かそれすら絵になる。


撮影開始。


カメラマンが叫ぶ。


「いい!!」


「その目線!!」


「ちょっと気だるそうに!」


レイ。


「のだぁ〜〜」


ダルそう。


だが、それが女性ウケ最強。


モニター確認した編集部女性陣。


「やば」


「国宝」


「なんでこんな顔面であんな喋り方なの」


「ギャップ死ぬ」


撮影休憩中。


モデル系女優が近づいてくる。


「レイくん久しぶり〜」


「のだぁ?」


かなり美人。


だがレイ。


「誰ですのだぁ?」


最低。


「ひどっ!去年会ったじゃん!」


「覚えてないのだぁ♡」


「ムカつく〜〜!」


なのに。


女性側、笑っている。


何故なら顔がいいから。


そして妙に距離感が近い。


「相変わらずモテてるねぇ」


「吾輩は国民的アイドルなのだぁ♡」


「自覚あるのウザい」


「事実なのだぁ♡」


周囲女性スタッフ。


(顔が良すぎる……)


結局そこ。


夜。高級ブランドイベント。


今度は大人の女性たちが危険だった。


女優。


モデル。


女性経営者。


スポンサー。


みんなレイを見る。


しかも最近のレイは、以前より少し大人っぽくなっている。二十代前半特有の危うさが妙な色気になっていた。


会場入り。


フラッシュ。


「レイーーー!!」


「こっち向いて!」


「今日もかっこいい!」


女性記者ですらテンション高い。


レイは軽く手を振る。


「のだっ♡」


それだけで。


「無理……」


「破壊力やば……」


「近くで見ると人間じゃない……」


騒然。


そしてイベント後。


レイは疲れ果ててソファへ沈んだ。


「のだぁ……」


田村が水を渡す。


「おつかれ」


「モテる男は大変なのだぁ……」


「自分で言うな」


だが。


実際。


最近のレイは異常だった。


SNS。


テレビ。


雑誌。


全部で“佐藤レイ”という存在が回っている。


しかも本人が俗っぽくて隙だらけだから、女性側も勝手に「私でもいけるかも」と錯覚する。


危険。


かなり危険。


その瞬間。


レイのスマホ通知。


『女性誌が選ぶ国宝級イケメン1位』


レイ。


静止。


そして。


「のだっ♡」


ニヤァ。


「吾輩、今日も世界一なのだぁ♡」


田村は深いため息をついた。


「その自信だけは本当に凄いよお前……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ