37 社長回
朝十時半。
スターライト・クリエイティブ社長、
大門剛志。
起床。
遅い。
かなり遅い。
だが。
誰も文句は言わない。
何故なら。
会社がめちゃくちゃ儲かっているから。
「んぁ〜〜……」
高級マンション最上階。
広い。
無駄に広い。
ガラス張り。
都心一望。
横。
二十代モデル風愛人。
「社長おはよぉございますぅ♡」
「ん〜〜」
社長、
まだ半分寝てる。
「今日もかっこいいですぅ♡」
「そうかぁ?」
完全に調子乗っている。
だが。
実際。
人生勝っている。
芸能事務所成功。
印税。
投資。
不動産。
全部当たってる。
しかも本人。
そこまで深く考えていない。
ほぼ運。
「いや〜〜」
社長、
ベッドから起き上がる。
「人生って適当でなんとかなるなぁ!!」
愛人たち、
爆笑。
「社長らしぃ〜♡」
本当にそう思っている。
⸻
十一時。
リビング。
高級ソファ。
ワイン。
競馬新聞。
そしてテレビ。
種馬ズ特集。
『勝ち馬が憎い 80万突破!』
社長。
「がっはっはっはっ!!!」
朝から爆笑。
「また売れてる!!」
愛人A。
「社長ほんとすごいですぅ♡」
「いや〜〜」
社長、
鼻をほじる。
「この曲、酔ってコンビニ帰りに書いたからな!!」
最低。
だが。
売れた。
しかもめちゃくちゃ。
実際。
社長の人生。
だいたいそんな感じだった。
・酔って決めたグループ名→ドーム
・適当に書いた歌詞→80万
・なんとなく採用したレイ→国民的人気
全部当たる。
胡散臭い。
かなり胡散臭い。
⸻
昼。
会社。
高級車。
運転手付き。
社長出勤。
社員たち。
「おはようございます!」
「うーっす」
軽い。
めちゃくちゃ軽い。
だが。
最近は誰も逆らわない。
結果出しすぎてるから。
エレベーター内。
幹部が説明。
「種馬ズドーム追加公演、スポンサー増えました」
「へぇ〜」
「レイ主演ドラマも配信契約拡大です」
「いいねぇ」
「黒崎さん競馬案件また増えてます」
「もう馬主にしろよ」
適当。
だが。
何故か全部上手くいく。
幹部も最近分かってきていた。
この社長。
理論じゃない。
勘。
全部勘。
そしてその勘が妙に当たる。
⸻
会議室。
大型案件会議。
真面目な空気。
資料大量。
局。
スポンサー。
広告代理店。
普通なら緊張する場。
だが社長。
「なんとかなるだろ」
終わり。
「いや今回はかなり大規模企画で……」
「レイ出しとけ」
「はぁ……」
「あと黒崎に競馬やらせとけ」
「……」
「ハルは泣かせとけばウケる」
「雑!!」
「神谷は黙って立たせとけ」
「雑!!」
だが。
何故か当たる。
会議室。
誰も強く否定できない。
何故なら。
実績がある。
しかも。
本人に悪意がない。
本当に感覚だけでやっている。
⸻
夕方。
社長室。
レイ襲来。
「のだぁあああ!!!」
「うるせぇ!!」
レイ、
机にスマホ叩きつける。
「市場が熱いのだぁ!!!」
「何の」
「“勝ち馬が憎い”初回盤なのだぁ!!!」
社長、
爆笑。
「がっはっはっ!!」
レイは真剣。
「今追加生産するのだぁ!!」
「プレミア消えるだろ」
「むむっ」
レイ、
固まる。
「……確かにのだぁ」
「お前ほんと転売脳だな」
社長は笑っていた。
レイを見るのが好きだった。
俗物。
小物。
欲望丸出し。
なのに。
何故かスター。
芸能界っぽい。
「のだぁ〜〜」
レイ、
ソファに転がる。
「働きたくないのだぁ」
「でも働くと売れるな」
「嫌なのだぁ」
「でも数字出るな」
「ぐぬぬなのだぁ……」
社長、
また爆笑。
「お前ほんと面白ぇな!!」
実際。
レイを見てると飽きない。
しかも。
数字持ってる。
最高。
⸻
夜。
高級寿司屋。
社長。
スポンサー。
局幹部。
広告代理店。
芸能界上層。
酒。
笑い。
接待。
だが。
社長だけ妙にラフ。
「いや〜〜」
寿司食いながら笑う。
「今の時代分かんねぇな!!」
局幹部も苦笑。
「種馬ズここまで行くと思いました?」
「全然」
全員笑う。
スポンサーが聞く。
「なんで“種馬ズ”って名前に?」
社長。
真顔。
「酔ってた」
爆笑。
「いやほんとに」
「そんな理由!?」
「競馬見ててなんか馬でいいかって」
最低。
だが。
成功している。
それがさらに胡散臭い。
⸻
深夜。
マンション帰宅。
愛人たち。
ワイン。
高級ソファ。
社長。
上機嫌。
スマホ通知。
印税。
グッズ売上。
配信。
全部伸びている。
「がっはっはっはっ!!」
笑い止まらない。
愛人が甘える。
「社長ぉ♡」
「ん〜〜?」
「なんでそんな人生うまくいくんですかぁ♡」
社長。
少し考える。
数秒。
そして。
「なんも考えてねぇからじゃね?」
静止。
愛人たち爆笑。
だが。
本人は割と本気だった。
考えすぎない。
勢い。
ノリ。
欲望。
勘。
それだけ。
なのに。
全部当たる。
胡散臭い。
だが。
芸能界には時々こういう男がいる。
そして今夜も。
社長は高級ソファで笑っていた。
「いや〜〜人生ちょれぇな!!」




