35 レイのファン回
種馬ズ。
今や国民的人気グループ。
その中でも。
佐藤レイ。
人気の熱量がちょっとおかしかった。
普通のアイドルファン。
もちろんいる。
「顔が好き」
「歌好き」
「面白い」
「スタイルいい」
健全。
だが。
問題はその先。
“濃いファン”。
いや。
もはや。
崇拝者。
最近では事務所スタッフすら、
少し怯えていた。
⸻
SNS。
深夜二時。
レイ関連タグ。
動き続けている。
『レイ様今日も尊い』
『レイの寝癖=芸術』
『レイがコンビニ入った世界線に感謝』
『人類はレイに餌代を払う義務がある』
『レイが呼吸してる』
『ありがとうございます』
宗教だった。
しかも。
本人が変なせいで、
ファン側もどんどん感覚が壊れていく。
⸻
都内カフェ。
飼い主オフ会。
机の上。
レイグッズ。
大量。
「この初期うちわさぁ……」
「201円時代のやつ?」
「そう」
「今60万」
「安い」
「感覚壊れてるって」
だが。
全員真顔。
しかも。
一部ファン。
本当にレイを“存在そのもの”として崇め始めていた。
「最近仕事つらくてさぁ……」
「うん」
「でもレイが“働きたくないのだぁ♡”って言ってる動画見たら頑張れた」
「分かる」
「レイって人間の弱さ肯定してくれるよね」
「分かる」
「でも顔は超絶イケメンなの意味分かんない」
「分かる」
完全に情緒が握られている。
⸻
一方。
現場。
レイ。
「のだぁ〜〜」
眠そう。
今日も番宣。
だが。
移動中。
道路向こう。
ファン。
普通に泣いていた。
「レイーーー!!!」
「今日も生きててくれてありがとーーー!!!」
レイ、
ビクッ。
「のだぁ!?」
スタッフ慣れている。
「最近ああいうの多い」
実際。
レイファン。
熱量が異常。
何故か。
人生を救われた扱いされ始めている。
本人。
転売大好き。
俗物。
小物。
なのに。
「無理して完璧ぶらない感じが救い」
とか言われている。
レイ本人は全然そんなつもりない。
ただ怠惰なだけ。
⸻
地方空港。
出待ち。
女性ファン。
レイを見た瞬間。
「うっ……」
泣く。
「のだぁ!?」
「レイが……いるぅ……」
「いるのだぁ」
「本当に存在してるぅ……」
「してるのだぁ」
「人間なのぉ……?」
「一応なのだぁ」
周囲スタッフ、
もう止めない。
慣れた。
しかも。
レイ。
変にファン対応だけは悪くない。
媚び体質なので、
好意を向けられると反射的に愛想が良い。
「寒いのだぁ?」
「う、うん……」
「風邪引くなのだぁ〜〜」
ファン。
崩壊。
「優しいぃぃぃ!!!」
神格化加速。
最悪。
⸻
最近では。
レイ語録アカウントまで存在した。
『市場が熱いのだぁ♡』
『働きたくないのだぁ♡』
『靴を舐めるのだぁ♡』
『責任は嫌なのだぁ♡』
フォロワー数。
数十万。
意味不明。
しかも。
一部ファン。
本当に人生指針にし始めている。
「レイって本音で生きてるよね」
「分かる」
「人間臭い」
「弱さ隠さないの好き」
「でも顔が強すぎる」
そこだった。
結局。
超絶イケメンなのに、
言ってることが終わってる。
そのギャップで脳を焼かれている。
⸻
楽屋。
黒崎がスマホを見る。
「……またトレンド入ってる」
神谷も覗く。
『#レイ教』
静止。
ハル。
「えぇ!?」
レイ。
「のだぁ?」
黒崎、
頭抱える。
「お前のファン本当に怖い」
レイは真顔。
「人気者なのだぁ♡」
「そういうレベルじゃない」
実際。
最近のレイファン。
熱量が宗教。
ライブ。
レイ登場だけで泣く。
MCで泣く。
変な発言で泣く。
転売発言でさえ、
「レイらしい」と感動する。
もう何をしても肯定される。
危険。
かなり危険。
⸻
ライブ会場。
レイ。
「のだぁ〜〜♡」
歓声。
「今日も可愛いのだぁ?」
「かわいいーーーー!!!」
「世界一なのだぁ?」
「世界一ーーーー!!!」
「餌代持ってきたのだぁ?」
「持ってきたーーーー!!!」
宗教だった。
完全に。
しかも。
レイ本人も、
ちょっと気持ちよくなっている。
「のだっ♡」
ドヤ顔。
「飼い主たちは優秀なのだぁ♡」
「レイーーーー!!!」
「今日も吾輩を養うのだぁ♡」
「養うーーーー!!!」
黒崎、
横で真顔。
(終わってる……)
だが。
ライブ後。
スタッフルーム。
新人スタッフが震えていた。
「レイさん人気やばくないですか……」
田村が遠い目。
「最近もう崇拝に近い」
「怖……」
「本人が俗っぽいから逆に依存されやすいんだよ」
実際。
完璧超人ではない。
弱音吐く。
怠ける。
怖がる。
媚びる。
俗物。
だから。
「自分でも好きになっていい」
と思わせる。
そこへ。
顔。
スタイル。
カリスマ。
ライブの熱量。
全部乗る。
結果。
化け物みたいな熱狂が生まれた。
⸻
その頃。
レイ本人。
ソファで寝転がりながら、
自分のファンアートを見ていた。
「のだぁ〜〜♡」
ニヤニヤ。
「吾輩、神みたいなのだぁ♡」
黒崎。
「調子乗るな」
レイは真顔だった。
「でもぉ」
「うん」
「実際かなり崇拝されてるのだぁ♡」
「否定できねえのが腹立つ」
その瞬間。
レイのスマホ通知。
『レイ様の使ったコンビニ箸 3万円』
静止。
レイ。
「のだぁ!?」
目が光る。
「市場が壊れてるのだぁ♡」
黒崎、
絶望。
「もう終わりだこのグループ……」




