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スターライト・クリエイティブ本社。
大会議室。
空気。
険悪。
理由。
映画会社からの大型主演オファー。
しかも一本じゃない。
三本。
全部。
「佐藤レイ主演希望」。
今のレイは数字を持っている。
視聴率。
配信。
SNS。
グッズ。
全部強い。
だから当然、
映画界も放っておかない。
だが。
当の本人。
「断るのだぁああああ!!!!」
絶叫。
会議室に響く。
田村が頭を抱えた。
「また始まった……」
レイは机を叩く。
「嫌なのだぁあああ!!!」
「映画会社泣くぞ」
「吾輩も泣いてるのだぁあああ!!!」
完全に本気だった。
何故なら。
最近。
ハルが地獄を見ているから。
35億ヒット。
大成功。
だがその代償。
番宣。
舞台挨拶。
地方キャンペーン。
雑誌。
SNS。
インタビュー。
地獄。
レイは全部見ていた。
その結果。
映画への印象が完全に壊れた。
「のだぁ……」
レイは真顔だった。
「映画はコスパが悪いのだぁ」
「お前その言い方やめろ」
「宣伝地獄なのだぁ」
「まあそれはそう」
「拘束長いのだぁ」
「うん」
「出演料安いのだぁ」
「それは作品による」
「なのにぃ!!」
レイは立ち上がった。
「ヒットしたらさらに働かされるのだぁ!!!」
「正論なのが嫌だな」
実際。
映画業界は、
ドラマより拘束長い割に、
若手俳優の出演料はそこまで爆発しない場合も多い。
特に今のレイ。
ドラマ一本で莫大な広告価値がある。
つまり。
レイ目線だと。
「ドラマの方が美味しい」。
そして何より。
「のだぁあああ!!」
レイは叫ぶ。
「吾輩はお偉いさん主演ドラマの脇役がいいのだぁあああ!!!」
静止。
会議室。
「……は?」
黒崎が聞き返す。
レイは真顔。
「脇役最高なのだぁ」
「なんで」
「責任が軽いのだぁ♡」
最低だった。
だが。
めちゃくちゃ本音。
レイは続ける。
「大女優様ぁ〜〜♡」
両手を広げる。
「主演お願いしますなのだぁ♡」
「うわぁ」
「吾輩は後ろでワチャワチャするのだぁ♡」
「夢が小物」
「視聴率コケても主演のせいなのだぁ♡」
「最悪」
レイは完全に開き直っていた。
「主演映画なんてぇ……」
「うん」
「当たったら宣伝!」
「うん」
「コケたら主演責任!」
「うん」
「怖いのだぁあああ!!!」
机バン!!
田村が深いため息。
「お前ほんと変なとこだけ現実的だな……」
だが。
実際。
レイの言うことも分かる。
今の芸能界。
主演はリスクがデカい。
ヒットすれば祭り。
コケれば戦犯。
SNSで叩かれる。
記事になる。
しかも。
レイはメンタルが小物。
めちゃくちゃ気にする。
「のだぁ……」
レイは遠い目。
「吾輩ぁ……」
「うん」
「エゴサで“戦犯”とか見たら三日寝込むのだぁ……」
「意外と繊細」
「だから脇役がいいのだぁ♡」
「守りに入るな」
その時。
ハルがフラフラ入ってきた。
「おはよぉ……」
死んでる。
完全に映画疲れ。
レイ、
秒速で指差す。
「見ろなのだぁ!!!」
「うん?」
「35億男の末路なのだぁ!!!」
「やめてぇ……」
ハルはソファへ倒れた。
「まだ番宣あるのぉ……」
「ほらぁ!!!」
レイ大興奮。
「映画は怖いのだぁ!!!」
「いやお前ドラマも十分忙しいだろ」
「ドラマはまだ家で寝れるのだぁ!」
「映画も寝れるわ!」
「地方舞台挨拶があるのだぁ!!!」
ハル、
半泣き。
「北海道日帰りしたぁ……」
「ほらぁあああ!!!」
レイ、
完全に怯えている。
神谷が静かに言う。
「でも映画って俳優として格上感あるよね」
レイ。
静止。
数秒。
「……のだぁ」
揺れた。
「映画賞とか」
「のだぁ……」
「海外映画祭とか」
「のだぁ……」
レイ、
少し考える。
そして。
「でも宣伝嫌なのだぁ」
戻った。
黒崎が笑ってしまう。
「結局そこか」
レイは真顔。
「吾輩ぁ……」
「うん」
「家でゴロゴロする時間ないと死ぬのだぁ」
「お前それでよく芸能界いるな」
その時。
映画会社側スタッフが入ってきた。
「レイさん!」
レイ、
ビクゥ!!
「のだぁ!?」
「ぜひ前向きにご検討を!」
レイ。
秒速土下座。
「脇役なら出ますのだぁあああ!!!」
「なんでェ!?」
「主演怖いのだぁ!!!」
映画スタッフ、
困惑。
「でも今レイさん主演で企画通るんですよ!?」
レイ。
さらに青ざめる。
「うわぁぁぁぁぁん!!!」
「なんで泣く!!」
「責任重いのだぁあああ!!!」
完全に情緒崩壊。
だが。
映画会社は諦めない。
何故なら。
今のレイ。
本当に数字を持っているから。
その頃。
社長室。
社長は高級ソファで笑っていた。
「がっはっはっは!!」
愛人たちも笑う。
「レイ君ほんと面白いですねぇ♡」
「主演嫌がるスター初めて見たぞ!!」
社長は酒を飲みながら言う。
「まあでもあいつ頭いいんだよな」
実際。
レイ。
俗っぽい。
小物。
うるさい。
だが。
“どこが地獄か”だけは妙に分かっている。
そして今日も。
会議室で。
「のだぁあああ!!吾輩はお偉いさん主演ドラマの二番手がいいのだぁあああ!!!」
という情けない叫び声が響いていた。




