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種馬ズ  作者: 雪だるま
第一章

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33

スターライト・クリエイティブ本社。


大会議室。


空気。


険悪。


理由。


映画会社からの大型主演オファー。


しかも一本じゃない。


三本。


全部。


「佐藤レイ主演希望」。


今のレイは数字を持っている。


視聴率。


配信。


SNS。


グッズ。


全部強い。


だから当然、

映画界も放っておかない。


だが。


当の本人。


「断るのだぁああああ!!!!」


絶叫。


会議室に響く。


田村が頭を抱えた。


「また始まった……」


レイは机を叩く。


「嫌なのだぁあああ!!!」


「映画会社泣くぞ」


「吾輩も泣いてるのだぁあああ!!!」


完全に本気だった。


何故なら。


最近。


ハルが地獄を見ているから。


35億ヒット。


大成功。


だがその代償。


番宣。


舞台挨拶。


地方キャンペーン。


雑誌。


SNS。


インタビュー。


地獄。


レイは全部見ていた。


その結果。


映画への印象が完全に壊れた。


「のだぁ……」


レイは真顔だった。


「映画はコスパが悪いのだぁ」


「お前その言い方やめろ」


「宣伝地獄なのだぁ」


「まあそれはそう」


「拘束長いのだぁ」


「うん」


「出演料安いのだぁ」


「それは作品による」


「なのにぃ!!」


レイは立ち上がった。


「ヒットしたらさらに働かされるのだぁ!!!」


「正論なのが嫌だな」


実際。


映画業界は、

ドラマより拘束長い割に、

若手俳優の出演料はそこまで爆発しない場合も多い。


特に今のレイ。


ドラマ一本で莫大な広告価値がある。


つまり。


レイ目線だと。


「ドラマの方が美味しい」。


そして何より。


「のだぁあああ!!」


レイは叫ぶ。


「吾輩はお偉いさん主演ドラマの脇役がいいのだぁあああ!!!」


静止。


会議室。


「……は?」


黒崎が聞き返す。


レイは真顔。


「脇役最高なのだぁ」


「なんで」


「責任が軽いのだぁ♡」


最低だった。


だが。


めちゃくちゃ本音。


レイは続ける。


「大女優様ぁ〜〜♡」


両手を広げる。


「主演お願いしますなのだぁ♡」


「うわぁ」


「吾輩は後ろでワチャワチャするのだぁ♡」


「夢が小物」


「視聴率コケても主演のせいなのだぁ♡」


「最悪」


レイは完全に開き直っていた。


「主演映画なんてぇ……」


「うん」


「当たったら宣伝!」


「うん」


「コケたら主演責任!」


「うん」


「怖いのだぁあああ!!!」


机バン!!


田村が深いため息。


「お前ほんと変なとこだけ現実的だな……」


だが。


実際。


レイの言うことも分かる。


今の芸能界。


主演はリスクがデカい。


ヒットすれば祭り。


コケれば戦犯。


SNSで叩かれる。


記事になる。


しかも。


レイはメンタルが小物。


めちゃくちゃ気にする。


「のだぁ……」


レイは遠い目。


「吾輩ぁ……」


「うん」


「エゴサで“戦犯”とか見たら三日寝込むのだぁ……」


「意外と繊細」


「だから脇役がいいのだぁ♡」


「守りに入るな」


その時。


ハルがフラフラ入ってきた。


「おはよぉ……」


死んでる。


完全に映画疲れ。


レイ、

秒速で指差す。


「見ろなのだぁ!!!」


「うん?」


「35億男の末路なのだぁ!!!」


「やめてぇ……」


ハルはソファへ倒れた。


「まだ番宣あるのぉ……」


「ほらぁ!!!」


レイ大興奮。


「映画は怖いのだぁ!!!」


「いやお前ドラマも十分忙しいだろ」


「ドラマはまだ家で寝れるのだぁ!」


「映画も寝れるわ!」


「地方舞台挨拶があるのだぁ!!!」


ハル、

半泣き。


「北海道日帰りしたぁ……」


「ほらぁあああ!!!」


レイ、

完全に怯えている。


神谷が静かに言う。


「でも映画って俳優として格上感あるよね」


レイ。


静止。


数秒。


「……のだぁ」


揺れた。


「映画賞とか」


「のだぁ……」


「海外映画祭とか」


「のだぁ……」


レイ、

少し考える。


そして。


「でも宣伝嫌なのだぁ」


戻った。


黒崎が笑ってしまう。


「結局そこか」


レイは真顔。


「吾輩ぁ……」


「うん」


「家でゴロゴロする時間ないと死ぬのだぁ」


「お前それでよく芸能界いるな」


その時。


映画会社側スタッフが入ってきた。


「レイさん!」


レイ、

ビクゥ!!


「のだぁ!?」


「ぜひ前向きにご検討を!」


レイ。


秒速土下座。


「脇役なら出ますのだぁあああ!!!」


「なんでェ!?」


「主演怖いのだぁ!!!」


映画スタッフ、

困惑。


「でも今レイさん主演で企画通るんですよ!?」


レイ。


さらに青ざめる。


「うわぁぁぁぁぁん!!!」


「なんで泣く!!」


「責任重いのだぁあああ!!!」


完全に情緒崩壊。


だが。


映画会社は諦めない。


何故なら。


今のレイ。


本当に数字を持っているから。


その頃。


社長室。


社長は高級ソファで笑っていた。


「がっはっはっは!!」


愛人たちも笑う。


「レイ君ほんと面白いですねぇ♡」


「主演嫌がるスター初めて見たぞ!!」


社長は酒を飲みながら言う。


「まあでもあいつ頭いいんだよな」


実際。


レイ。


俗っぽい。


小物。


うるさい。


だが。


“どこが地獄か”だけは妙に分かっている。


そして今日も。


会議室で。


「のだぁあああ!!吾輩はお偉いさん主演ドラマの二番手がいいのだぁあああ!!!」


という情けない叫び声が響いていた。

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