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数週間後。
スターライト・クリエイティブ会議室。
空気。
ざわついていた。
理由。
一本の企画書。
机の中央。
超大型ドラマ企画。
主演。
国民的大女優。
芸歴三十年。
視聴率女王。
映画賞常連。
そして――
この前、
レイが息子を帽子で叩いた相手の母親。
芸能界でも別格。
局もスポンサーも逆らえない。
そんな存在。
そして。
その企画書のキャスト欄。
大きく書かれていた。
【佐藤レイ】
マネージャー田村。
「……マジか」
黒崎。
「え、指名?」
神谷も静かに企画書を見る。
ハルは普通に驚いていた。
「すごーーい!!」
だが。
レイ。
「のだぁ……」
顔が青い。
めちゃくちゃ青い。
何故なら。
完全に心当たりがある。
数秒後。
スマホ着信。
田村。
「……はい」
相手。
超大物女優側マネージャー。
数分後。
電話終了。
会議室静寂。
田村がゆっくり言う。
「……正式オファーだ」
静止。
そして。
「出ますのだぁあああああ!!!!!!」
秒速。
レイ、
超高速土下座。
「ありがたいのだぁあああ!!!」
「早っ!!」
黒崎がツッコむ。
だがレイは止まらない。
「命だけは助けてほしいのだぁあああ!!!」
「誰も殺さねえよ!!」
「大女優様なのだぁあああ!!!」
完全に権力へ屈していた。
しかも。
今回は単なる媚びではない。
“貸し”がある。
レイの中では。
『息子叩いたのに許してくれた超偉い人』
である。
つまり。
逆らえない。
「のだぁ……」
レイは真顔で言った。
「これは断ったら消される流れなのだぁ」
「違う」
「芸能界の闇なのだぁ……」
「お前の被害妄想だ」
だが。
実際。
断れる空気ではない。
しかも。
企画自体も超大型。
・ゴールデン帯
・超高予算
・大物脚本家
・有名監督
・スポンサー大量
・局本命枠
つまり。
普通に出たい。
若手俳優なら土下座してでも出たい。
そして。
大女優側も理由がある。
最近。
若手視聴者層。
テレビ離れ。
数字が弱い。
だから。
今もっとも数字を持ってる若手。
佐藤レイ。
欲しい。
めちゃくちゃ欲しい。
「あの人絶対計算してるよなぁ……」
田村がボソッと呟く。
「レイ使えば若い層来るし」
黒崎も頷く。
「SNSも回るし」
神谷。
「……海外人気もある」
ハルは普通に感心していた。
「レイ君売れたねぇ〜!」
レイ。
「のだぁ……」
まだ青い。
完全に、
“権力者に呼び出された庶民”
の顔。
その時。
また電話。
今度は本人。
大女優。
スピーカーON。
落ち着いた声。
「レイ君?」
「のだぁあああ!!!」
超大声。
「いつもありがとうございますなのだぁあああ!!!」
「元気ねぇ」
「生かしてくれて感謝なのだぁ!!!」
「まだ言ってるの?」
会議室、
少し笑い。
大女優も笑っていた。
完全に余裕。
「ドラマ、出てくれる?」
「出ますのだぁあああ!!!」
間髪ゼロ。
「スケジュール全部空けるのだぁ!!!」
「そこまでしなくていいわよ」
「靴も舐めるのだぁ!!!」
「舐めなくていい」
「現場の床も磨くのだぁ!!!」
「だからいいって」
黒崎、
頭抱える。
「なんで毎回そこまで媚びるんだよ……」
レイは真顔。
「怖いからなのだぁ」
「潔いな」
大女優は少し笑ったあと、
静かに言った。
「まあ半分冗談で名前出したら」
「のだぁ?」
「局が“ぜひ!”ってなっちゃって」
静止。
会議室。
ざわつく。
レイ。
「……のだぁ?」
「今、レイ君本当に数字持ってるのねぇ」
その言葉。
芸能界では重い。
数字。
つまり価値。
スポンサー。
視聴率。
配信。
SNS。
全部込み。
そして現在。
レイは本当に強い。
「のだぁ……」
レイは少し黙った。
嬉しい。
だが。
怖い。
期待値が高い。
芸能界は、
上がれば上がるほど落下も怖い。
大女優は続ける。
「でも安心して」
「のだぁ?」
「ちゃんと私が守るから」
静止。
会議室。
少し空気が変わる。
レイも固まった。
その言葉。
芸能界ではかなり強い。
超大物女優の庇護。
スポンサーも局も無視しづらい。
つまり。
めちゃくちゃありがたい。
レイ。
数秒。
そして。
「うわああああん!!!」
急に泣いた。
「情緒どうなってんだよ!!」
「優しいのだぁあああ!!!」
大女優、
笑っていた。
「変な子ねぇ」
「頑張るのだぁあああ!!!」
「でももううちの子叩かないでね?」
「絶対叩かないのだぁあああ!!!」
「サインもちゃんと書いてあげて」
「百枚書いたのだぁ!!!」
「多いわねぇ」
電話終了。
静寂。
レイはまだ土下座状態だった。
「のだぁ……」
黒崎が呆れる。
「お前ほんと権力に弱いな」
「怖いのだぁ」
「まあ分かるけど」
ハルは笑っていた。
「でも良かったじゃん!」
「のだぁ……」
神谷は静かに言った。
「……主演級に気に入られるの普通に強いよ」
田村も頷く。
実際。
芸能界。
こういう“貸し借り”は大きい。
しかも。
大女優側も完全にレイを気に入っていた。
うるさい。
俗っぽい。
小物。
でも。
妙に可愛い。
現場が明るくなる。
数字も持ってる。
そして何より。
媚び方が全力。
そこが妙に面白い。
その時。
レイがボソッと言う。
「のだぁ……」
「何」
「これで視聴率コケたら怖いのだぁ」
静止。
全員。
「あっ」
そこ。
結局そこ。
レイは真顔だった。
「超大物女優様の数字まで落としたらぁ……」
「うん」
「今度こそ本当に消されるのだぁ……」
「だから被害妄想なんだよお前は」




