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種馬ズ  作者: 雪だるま
第一章

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29/57

25

朝四時半。


種馬ズ。


全員死にそうだった。


「……眠い」


黒崎が珍しく机に突っ伏していた。


神谷は無言。


ハルはソファで半目。


そして。


レイ。


「のだぁ……」


魂が抜けていた。


何故なら。


今の種馬ズ。


完全に“芸能界の取り合い対象”になっていたからである。


テレビ局。


配信会社。


雑誌社。


CM。


イベント。


全部。


「今のうちに使いたい」


状態。


特に最近は。


神谷主演ドラマ成功。


レイ主演ラブコメ大ヒット。


種馬ズドーム成功。


全部重なった。


結果。


芸能界全体が、

種馬ズを中心に回り始めていた。


そして当然。


仕事量も壊れた。


朝。


情報番組。


昼。


雑誌撮影。


移動。


ラジオ。


番宣。


収録。


ライブリハ。


CM。


取材。


SNS撮影。


深夜帰宅。


数時間睡眠。


翌日また朝四時起き。


地獄。


しかも。


最近は扱いが露骨に変わっていた。


局幹部が直接挨拶に来る。


スポンサーが笑顔。


衣装予算アップ。


メイク班増員。


雑誌表紙連発。


テレビ局同士の取り合い。


完全に売れっ子待遇。


だが。


当人たちは普通に限界だった。


楽屋。


「種馬ズさん入りまーす!」


スタッフたちのテンションが高い。


「今日もよろしくお願いします!」


「ありがとうございます!」


黒崎だけはちゃんと返す。


プロである。


だが。


ハル。


「……おはよぉ……」


ほぼ犬の老化。


神谷。


「……どうも」


省エネ。


レイ。


「のだぁ……」


死体。


完全に死体。


メイクスタッフが笑う。


「レイくんまた寝てない?」


「寝たのだぁ……」


「何時間?」


「……一時間半なのだぁ」


「短っ!!」


レイは椅子に座ったまま、

遠い目をしていた。


「吾輩、最近ぃ……」


「うん」


「自分が人間か分からないのだぁ……」


「ちゃんと寝ろ」


「移動中に寝てるのだぁ」


「それ睡眠扱いじゃない」


その時。


局プロデューサーが楽屋に入ってきた。


しかも。


かなり偉い人。


空気が少し変わる。


普通の若手なら緊張する。


だが。


レイはもう反射だった。


「のだぁあああ!!!」


秒速起立。


九十度お辞儀。


「いつもありがとうございますなのだぁあああ!!!」


「お、おう」


「吾輩、局の犬なのだぁ♡」


「そこまで言わなくていい」


媚び。


完全に媚び。


しかも。


最近は局幹部クラスが直接来る。


理由。


数字。


「次クールもぜひお願いします」


「ありがとうございますなのだぁ♡」


「レイ君本当に数字持ってるねぇ」


「局様のおかげなのだぁ♡」


「ははは!」


完全に営業モード。


その横で。


黒崎は静かに思っていた。


(切り替え早すぎるだろ……)


さっきまで死体だったのに。


その後。


番宣収録。


また別局。


また挨拶。


また撮影。


また移動。


車内。


全員無言。


限界。


ハルがボソッと言う。


「……お肉食べたい」


「分かる」


黒崎も即答。


神谷は窓を見ていた。


レイはスマホ。


「むむっ」


「まだ相場見てんの?」


黒崎が呆れる。


レイは真顔。


「癒しなのだぁ」


「終わってる」


「市場だけは裏切らないのだぁ」


「いや普通に暴落するだろ」


レイは数秒考えた。


「……確かにのだぁ」


「学ぶな」


その時。


車が止まる。


次。


雑誌撮影。


しかも。


最近は予算が露骨に違った。


衣装豪華。


セット豪華。


ヘアメイク増員。


撮影時間長い。


完全に“売れてる側”扱い。


スタッフも妙に優しい。


「種馬ズさん入りまーす!」


「今日表紙です!」


「よろしくお願いします!」


しかも。


女性誌。


当然。


メイク班も気合いが違う。


「肌仕上げよう!」


「照明もっと柔らかく!」


「レイくん目元綺麗!」


「神谷くん前髪ちょっと流そう!」


「ハルくん笑顔かわいい!」


「黒崎くん疲れ顔も色気ある!」


完全に商品。


だが。


レイ。


鏡を見ながらボソッと言う。


「のだぁ……」


「何」


田村が警戒。


レイは真顔だった。


「仮病でも使うかなのだぁ?」


静止。


黒崎がゆっくり振り向く。


「……は?」


「熱あることにするのだぁ」


「最低」


「人類には休息が必要なのだぁ」


「その通りだけどお前はダメ」


レイはソファに沈んだ。


「疲れたのだぁ……」


「みんな疲れてる」


「吾輩ぁ……」


レイは天井を見る。


「最近もう何の仕事してるか分からないのだぁ……」


「まあ分かる」


黒崎も苦笑。


実際。


最近は忙しすぎて、

曜日感覚も壊れている。


神谷も小さく呟く。


「……昨日何してたっけ」


「ドラマ番宣!」


ハルが即答。


「そのあと雑誌!」


「……そうだった」


「そのあとラジオ!」


「覚えてるなお前」


「えへへ!」


ハルだけ少し元気。


だが。


そのハルですら。


「……でもちょっと寝たい」


限界だった。


その時。


レイのスマホ通知。


ピコン。


レイが見る。


そして。


目が光る。


「あっ」


「嫌な予感」


「吾輩の初期アクスタまた値上がりしてるのだぁ♡」


「元気になるな!!!!」


レイ、

即復活。


「働けるのだぁ!!!」


「現金すぎる!!」


「資本主義最高なのだぁ♡」


黒崎は深いため息をついた。


神谷は静かに水を飲む。


ハルは笑っている。


種馬ズ。


今、

芸能界で最も忙しいアイドルグループ。


そして。


最も騒がしいグループでもあった。

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