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種馬ズ  作者: 雪だるま
第一章

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28/57

24 神谷回

夜。


種馬ズ楽屋。


テレビ前。


空気が妙に浮ついていた。


何故なら。


現在放送中――


神谷悠真主演ドラマ

『雨煙る街角探偵』。


初回視聴率。


17%。


普通に大ヒット。


しかも内容も評判がいい。


「神谷の雰囲気合いすぎ」


「静かな演技めちゃくちゃ良い」


「探偵役似合う」


「顔面で雨が似合う男」


SNSでも大盛り上がり。


事務所もお祭り状態だった。


「神谷くん主演成功だ!!」


「続編いける!!」


「配信強い!!」


「スポンサー継続来てます!!」


スタッフたちはテンションが高い。


一方。


主演本人。


神谷。


「……」


静かに水を飲んでいた。


いつも通り。


だが耳だけ少し赤い。


嬉しいのは嬉しい。


ただ騒ぎ方が分からない。


黒崎が笑う。


「おめでとう」


「……ありがとうございます」


ハルは大興奮。


「すごいよ神谷くん!!」


「……ありがと」


「探偵めちゃくちゃかっこよかった!!」


「……そう?」


「あとスーツ!!」


「……衣装さんです」


「謙遜しなくていいって!」


空気は平和。


本来なら。


だが。


部屋の隅。


「のだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


地獄みたいな悲鳴。


レイ。


四つん這い。


床バンバン叩いていた。


「うるせえ!!」


黒崎が即ツッコむ。


だがレイは止まらない。


「聞いてないのだぁああああ!!!」


「何が」


「ミレイとのキスシーンなのだぁあああ!!!」


空気停止。


神谷、

静かに瞬き。


ハル、

「あっ」


黒崎、

「あー……」


レイは床を叩き続けた。


「のだぁああああ!!」


バンバンバン!!


「まさかぁあああ!!!」


バンバン!!


「濡れ場もあるのだぁあああ!?!?」


「ない」


神谷、

即否定。


冷静。


「ないです」


「本当なのだぁ!?!?」


「ない」


「絶対なのだぁ!?!?」


「探偵ドラマだよ」


レイは床に突っ伏した。


「うわああああん!!!」


完全に情緒が終わっていた。


ちなみに。


白鳥ミレイ。


現在かなり売れている。


あの焼きそばラブコメ以降、

一気にブレイク。


CM。


映画。


ドラマ。


雑誌。


そして今回。


神谷主演ドラマのヒロイン。


清楚系ミステリアス美女役。


かなりハマっている。


ネットでも、


『神谷×ミレイ空気感良すぎ』


『顔面が強い』


『距離感が大人っぽい』


など大好評。


そしてそれを見たレイ。


壊れた。


「のだぁぁぁ……」


床に転がる。


「神谷めぇえええ……」


神谷、

静かに言う。


「仕事」


「仕事でも嫌なのだぁ!!」


「知らないよ」


「吾輩だってぇ!!」


レイは起き上がった。


「ミレイとぉ!!」


「うん」


「焼きそばドラマでキスしたのだぁ!!!」


「知ってる」


「だからぁ!!」


「うん」


「吾輩専用なのだぁ!!!」


静止。


三人、

真顔。


黒崎がゆっくり言った。


「最低だなお前」


「のだぁ!?」


ハルは笑い転げていた。


「レイ君面白すぎる!!」


「笑い事じゃないのだぁ!!」


レイは本気だった。


かなり本気。


「神谷ぁ!!」


「……何」


「どこまでしたのだぁ!!」


「ドラマ撮影」


「そうじゃないのだぁ!!」


「だから仕事」


神谷は静かだった。


だが。


少しだけ面倒そう。


「別に付き合ってないし」


その瞬間。


レイ硬直。


数秒。


「…………のだぁ」


「何その間」


「付き合ってないのだぁ?」


「付き合ってない」


「本当にぃ?」


「本当に」


「手とか繋いでないのだぁ?」


「撮影でなら」


「うわあああああん!!!!」


また崩壊。


レイは床を転がった。


「吾輩より進んでるのだぁあああ!!!」


「小学生みたいな発想やめろ」


黒崎が頭を抱える。


だが。


レイは止まらない。


「絶対現場でぇ!!」


「うん」


「いい匂いしてたのだぁ!!!」


「まあした」


「うわああああああん!!!!!!」


神谷は少し困っていた。


実際。


ミレイは売れた。


綺麗になった。


現場でも華がある。


だから今回の共演も普通に話題だった。


ただ。


神谷にとっては本当に仕事。


むしろ。


「会話どうしよう」


の方が大きかった。


だが。


レイはそんな事情を知らない。


「のだぁ……」


床に顔を押し付けながら呟く。


「ミレイぃ……」


「重いって」


「吾輩のこと忘れてぇ……」


「付き合ってないんだろ?」


「そうなのだぁ……」


「じゃあ別にいいだろ」


レイは数秒止まった。


そして。


「……確かにのだぁ」


急に冷静。


黒崎が呆れる。


「落ち着くの早」


「吾輩たち付き合ってないのだぁ」


「そうだな」


「なのに何故こんな気持ちに……」


「知らん」


レイは天井を見た。


「芸能界怖いのだぁ……」


「お前の情緒が怖い」


その時。


スマホ通知。


レイが見る。


そして。


目が光る。


「のだっ」


「嫌な予感」


「神谷ドラマグッズ高騰してるのだぁ」


「話変わるの早!!」


「今なら限定アクスタがぁ♡」


「お前本当にブレねえな」


レイは即復活した。


「神谷ぁ♡」


「何」


「サイン入りグッズ余ってないのだぁ?」


「転売する気?」


「市場調査なのだぁ♡」


「最低」


ハルはまた笑っていた。


黒崎は疲れた顔。


神谷は静かにため息。


だが。


その空気はどこかいつも通りだった。


種馬ズ。


今日も平和に、

騒がしかった。

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