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最終話放送翌朝。
テレビ局。
芸能事務所。
スポンサー企業。
広告代理店。
全部。
祭りだった。
モニターに表示される数字。
【最終話視聴率 38.0%】
空気が一瞬止まり。
次の瞬間。
「うおおおおおおお!!!」
拍手。
歓声。
ガッツポーズ。
制作スタッフが抱き合っていた。
「38!!」
「やばい!!」
「平成か!?」
「今令和だぞ!?」
「化け物だろ!!」
途中、
何度か視聴率は上下した。
中盤で少し落ちた。
SNSで脚本が叩かれた回もあった。
「キャラ増やしすぎ」
「情報量多い」
「レイまた変なアドリブしてる」
など言われた。
だが。
戻った。
何故か戻った。
しかも最終回でさらに上がった。
局総力戦。
若手美少女大量投入。
宣伝地獄。
SNS祭り。
そして。
レイという“なんか気になる男”。
全部噛み合った。
結果。
38%。
局上層部は完全に脳を焼かれていた。
「続編やるぞ」
「映画化だ」
「スピンオフも」
「配信独占も取れる」
「今のうちに囲え!!」
完全に戦争。
その頃。
主演。
佐藤レイ。
「のだっ♡」
超笑顔。
「祝賀会ですのだぁ?」
プロデューサーもニコニコだった。
「もちろん!」
「行きますのだぁ♡」
「今日は主役だからな!」
「のだっ♡」
レイ、
完全にご機嫌。
だが。
次の瞬間。
ピコン。
スマホ通知。
レイの動きが止まる。
数秒。
真顔。
そして。
「のだぁああああああああ!!!」
絶叫。
「どうした!?」
「今吾輩の古いグッズが100万円で引き落とされたのだぁあああ!!!」
静止。
空気停止。
プロデューサーが固まる。
田村が頭を抱える。
レイは震えていた。
感動で。
「100なのだぁ……」
「お前……」
「六年前の初期チェキなのだぁ……」
「お前売ったの!?」
「売ったのだぁ♡」
「本当に売ったのかよ!!」
レイはスマホを抱きしめた。
「努力が実ったのだぁ……」
「何の努力だよ」
「芸能活動なのだぁ♡」
最低だった。
だが。
本人は本気で感動している。
「のだぁ……」
目が潤んでいた。
「昔は誰も欲しがらなかったのだぁ……」
「……」
「チェキ余ってたのだぁ……」
「……」
「箱に詰めて倉庫で眠ってたのだぁ……」
レイは空を見た。
「それが今は100万円なのだぁ……」
「感動の方向がおかしい」
「芸能界って夢があるのだぁ……」
「転売市場に夢見るな」
だが。
レイの脳は完全に資本主義で焼かれていた。
「のだぁっ♡」
ニヤァ。
「今が売り時なのだぁ♡」
「やめろ」
「まだ在庫があるのだぁ♡」
「怖い怖い怖い!!」
レイは急に忙しくなった。
スマホ。
通知。
銀行。
相場確認。
「むむっ!?」
「また何だ」
「うちわも上がってるのだぁ!!!」
「もう知らん!!」
「“最終回記念需要”なのだぁ!!!」
「株式用語みたいに言うな!!」
その時。
祝賀会会場からスタッフが呼びに来た。
「レイくーん!みんな待ってるよー!」
「のだっ♡」
レイは振り返った。
だが。
数秒後。
「……むむっ」
またスマホ。
「おい」
「海外ファンが初期グッズ探してるのだぁ」
「やめろ」
「世界市場なのだぁ♡」
「お前本当に芸能人か!?」
レイは真顔になった。
「芸能人なのだぁ」
「うん」
「だから価値があるのだぁ♡」
「嫌な説得力出すな」
その時。
局幹部が笑顔で近づいてきた。
「レイ君!本当にありがとう!」
レイ、
秒速で切り替え。
「のだぁあああ!!!」
超低姿勢。
「こちらこそありがとうございますなのだぁあああ!!!」
「いや〜君のおかげだよ!」
「そんなそんななのだぁ♡」
「今後も頼むよ!」
「靴でも舐めるのだぁ♡」
「舐めなくていいよ!?」
媚び。
全力媚び。
レイは完全に理解していた。
数字がある今だけ、
皆優しいことを。
だから。
今は全力で媚びる。
笑う。
頭を下げる。
愛想を振りまく。
そして。
裏でグッズを売る。
完璧な俗物である。
祝賀会場。
シャンパン。
拍手。
豪華料理。
キャスト陣。
スタッフ。
スポンサー。
全員笑顔。
その中央。
主演・佐藤レイ。
ニコニコしている。
だが。
机の下。
スマホ。
相場確認。
「のだぁ……」
「まだ見てるの!?」
「今熱いのだぁ……」
「お前祝賀会中だぞ!!」
レイは真顔だった。
「祭りの時に市場から目を離すのは三流なのだぁ」
「誰だよお前」
その時。
また通知。
『レイ初期サイン入りタオル 150万円 即決』
レイ。
硬直。
数秒後。
「のだぁああああああああ!!!!!!」
会場中が振り向いた。
レイは涙目だった。
「吾輩、生きててよかったのだぁああああ!!!!!」




