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種馬ズ  作者: 雪だるま
第一章

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10

種馬ズ全国ツアー追加公演。


会場――超満員。


本来なら絶対に押さえられなかった規模のアリーナ。


ペンライトの海。


歓声。


熱気。


そして物販コーナー。


地獄だった。


「最後尾こちらでーす!!」


「押さないでくださーい!!」


「馬蹄型ペンライト売り切れです!!」


「ええええ!?」


「“種馬も辛い”湿布タオル残り僅か!!」


「黒崎の謝罪アクスタありますか!?」


「神谷の無言ブロマイドください!!」


「ハルの“おつかれニンジン”チャーム二個!!」


スタッフ全員が死にそうだった。


なお。


グッズは当然のように馬関連だらけである。


・馬蹄型ペンライト

・蹄鉄キーホルダー

・ニンジンクッション

・競馬新聞風パンフレット

・レイの「餌代くれなのだぁ♡」うちわ

・“種馬も辛い”湿布ケース

・馬小屋風小物入れ

・「本日の放牧終了」Tシャツ


もうアイドルグッズなのか牧場なのか分からない。


だが。


売れる。


異常に売れる。


特にレイ関連。


「レイのアクスタ一人三個まででーす!!」


「えええ!?」


「転売対策でーす!!」


その瞬間。


楽屋裏。


「のだぁあああああ!!!!!」


レイの絶叫。


「個数制限反対なのだぁあああ!!!」


「お前が言うな!!」


田村が叫ぶ。


だがレイは本気で怒っていた。


「市場が冷えるのだぁ!!!」


「冷やせ!!」


「熱狂は資産なのだぁ!!」


「アイドルとして最低!!」


レイはキラキラ衣装のまま床を転がった。


今日はライブ仕様である。


白×金のジャケット。


謎に王子っぽい装飾。


だが腰には馬の尻尾アクセサリー。


意味不明だった。


「のだぁ……」


レイはブツブツ言う。


「せっかく吾輩たちが育てた市場がぁ……」


「株みたいに言うな」


「転売ヤーとの戦いなのだぁ……」


「お前も転売ヤー側なんだよ!!」


一方その頃。


他メンバーはちゃんとアイドルしていた。


黒崎蓮。


今日も安定感が凄い。


ファンサが丁寧。


手を振る。


微笑む。


会釈する。


視線を合わせる。


しかも最近、

妙に“疲れた包容力”が増していた。


そのせいで既婚女性人気が異常。


「黒崎くーん!!」


「ありがとー!」


「ちゃんと寝てーー!!」


「みんなもねー!」


優しい。


安心感がある。


だが。


最近の黒崎は謝罪仕事が増えすぎて、

謝るフォームが異常に綺麗になっていた。


「本日は混雑してしまって本当にすみません」


ペコリ。


「転売行為はご遠慮ください」


ペコリ。


「グループ名に関しましては……その……」


ペコリ。


もはや芸術的謝罪。


スタッフからは、

「お辞儀だけで飯食える」

と言われ始めている。


その隣。


神谷悠真。


相変わらず顔が良い。


異様に良い。


照明を浴びるとほぼ彫刻。


だが本人は。


「……どうも」


喋らない。


ファンサはする。


微笑む。


視線を送る。


手を振る。


だが会話が続かない。


コミュ障だからである。


ただし。


本人は顔が良いことをちゃんと理解していた。


そのため。


「……」


無言。


でも成立する。


ファンが勝手に解釈する。


「キャアアア!!」


「見つめられた!!」


「無言だった!!」


「尊い!!」


神谷は内心思っていた。


(助かる……)


顔で生きている男である。


レイには以前、


「お主、顔面に甘えすぎなのだぁ」


と言われた。


神谷は否定できなかった。


そして。


早乙女ハル。


ニコニコ。


元気。


犬。


「ありがとーー!!」


「気をつけて帰ってねーー!!」


「うわっ!その馬耳かわいい!!」


愛嬌が強い。


だが。


実態は愛嬌というよりアホ。


そのためレイと異様に仲が良い。


「レイ君レイ君!」


「のだぁ?」


「これ見て!」


ハルが馬のおもちゃを頭に乗せていた。


「お馬さんだよ!」


「のだっ♡かわいいのだっ♡」


「えへへ!」


レベルが近い。


黒崎は遠い目をしていた。


神谷は無言で水を飲んでいた。


その時。


ライブ開演五分前。


メンバー整列。


歓声が漏れ聞こえる。


アリーナ全体が震えている。


レイはステージ袖から客席を見て、

ニヤァ……と笑った。


「のだぁ……」


目がギラギラしている。


「見ろなのだぁ」


「何を」


「人間がいっぱいなのだぁ♡」


「言い方」


「餌代を稼ぐ時なのだぁ♡」


黒崎が疲れた顔で微笑んだ。


だがツッコまない。


アイドルだからである。


神谷もツッコまない。


ハルはむしろ笑っていた。


「いっぱいニンジン買えるね!」


「のだっ♡」


「高い肉も食べれるのだっ♡」


「やったー!」


黒崎だけちょっと頭を抱えた。


だが。


もう慣れている。


ステージスタッフが合図する。


「本番入りまーす!」


暗転。


歓声爆発。


「キャアアアアアア!!」


その瞬間。


レイが両手を広げた。


「のだっ♡」


ニッコニコ。


「ライブが終わったらちゃんと吾輩たちの餌代のために買うのだっ♡」


「キャアアアア!!」


「レイーーー!!」


「買うーーー!!」


「転売するなよーーー!!」


「のだぁっはっはっはっは!!!」


大歓声。


レーザー。


爆音。


種馬ズは今日も、

意味不明な勢いのままステージへ飛び出していった。

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