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種馬ズ  作者: 雪だるま
第一章

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11/57

9

テレビ局・大型会議室。


空気が殺気立っていた。


「……この枠、絶対に取りたい」


「次クール覇権ですよ」


「レイ相手なら跳ねる」


「今一番数字持ってる若手ですからね」


机の上に並ぶ大量の企画書。


資料。


スポンサー一覧。


視聴率データ。


そして中央モニターには大きく表示されていた。


【主演:佐藤レイ(予定)】


予定。


一応予定。


だが現場全員、

“もう決まってる”空気だった。


何故なら。


恋する♡焼きそばエンジェル。


視聴率23%。


今の時代にその数字は化け物である。


しかも配信も強かった。


切り抜きもバズった。


SNSミーム化。


中年層にも刺さった。


若年層にも刺さった。


テレビ局側は完全に脳を焼かれていた。


結果。


次回作の条件が異常に豪華になっていた。


・ゴールデン帯

・制作費大幅増

・有名脚本家

・人気女優との共演

・主題歌タイアップ強化

・スポンサー大量


完全に“勝負作品”。


そして今。


最も地獄になっているのは――


ヒロインオーディションである。


「絶対受かりたい……」


「レイ相手なら国民的人気いける……」


「今ここ外したら終わる……」


待機室。


若手女優たちがバチバチだった。


笑顔。


でも目が笑っていない。


清楚系。


クール系。


王道系。


モデル上がり。


元アイドル。


全員、本気。


何故なら今、

“レイの相手役”というだけで価値があるからである。


しかも。


最近の芸能界では妙な噂まで流れていた。


『レイと共演すると何故か跳ねる』


実際。


焼きそばエンジェルのヒロインだった白鳥ミレイは今や大ブレイク。


CM。


雑誌。


ドラマ。


バラエティ。


全部増えた。


なので業界内では半ば真面目に、


「レイ、視聴率の座敷童子説」


みたいなことまで言われ始めていた。


一方。


そんな芸能界の欲望と打算の中心人物は――


別室ソファで溶けていた。


「のだぁ……」


ぐったり。


完全に液体。


長い脚がだらんと垂れている。


193cm男がソファから半分落ちていた。


スタッフが言う。


「レイ君、そろそろ打ち合わせ……」


「すぴー……」


寝ている。


死ぬほど忙しいので、

最近のレイは“寝れる時に即寝る生物”になっていた。


移動中に寝る。


メイク中に寝る。


CM待機中に寝る。


ソファ見ると寝る。


しかも妙に寝付きが良い。


「社長の尻が8つに割れてても寝るのだぁ……すぴー……」


「どういう夢?」


田村が死んだ目で呟く。


スタッフたちは少し離れた位置でヒソヒソ話していた。


「……本当にこの人が今一番数字持ってる若手俳優なんですか?」


「そう」


「なんか犬みたいに寝てますけど」


「実際かなり犬」


レイは寝ながらモゴモゴ言っていた。


「転売ぁ……限定グッズぅ……」


「最低」


田村は額を押さえた。


だが。


忙しいのも事実だった。


今のレイは異常にスケジュールが詰まっている。


朝ドラゲスト。


雑誌。


ライブ。


ラジオ。


番宣。


CM。


取材。


SNS。


その合間にドラマ準備。


なのに本人は未だに転売価格を監視している。


意味が分からない。


その時。


オーディション会場から若手女優たちが出てきた。


空気が重い。


誰も笑っていない。


「あの役絶対欲しい……」


「やばい……緊張した……」


「スポンサー多すぎ……」


そして。


その中の一人が。


ソファで寝てるレイを見た。


「…………」


他の女優たちも見る。


今まさに、

全員が人生を賭けて奪い合ってる“主演俳優”。


だが本人は。


「のだぁ……プリン食べるのだぁ……」


寝言。


しかも口開いてる。


女優たちの空気が微妙になった。


「……かわいい」


「分かる」


「でもムカつく」


「分かる」


レイは寝返りを打った。


その拍子にソファから半分落ちる。


「のだぁっ」


ゴン。


床に頭ぶつけた。


だが起きない。


「……強い」


「疲れてるんだろうね」


「最近ずっと働いてるもんね」


すると。


レイが急に半目を開けた。


「のだぁ……?」


ぼんやりしている。


目の前に若手美人女優たちが大量にいる。


普通なら緊張する場面。


だが。


脳が寝てるので判断能力ゼロだった。


「……オーディションなのだぁ?」


「はい」


「頑張るのだぁ……」


「……」


「吾輩もう眠いのだぁ……」


また寝た。


静寂。


女優たちは思った。


(こいつ本当に大物かもしれない)


実際は違う。


ただの睡眠不足である。


だが芸能界は勘違いで回る世界だった。


「余裕あるよね……」


「オーラある……」


「やっぱスターって違う……」


田村は心の中で叫んでいた。


(違う!!ただの限界睡眠不足だ!!)


だが。


周囲は勝手に“天才感”を感じ始めていた。


その時。


社長が現れた。


「レイ」


「すぴー……」


「起きろ」


「すぴー……」


「次、有名脚本家との打ち合わせだ」


「すぴー……」


「お前のグッズ転売対策の話もする」


レイの目が開いた。


「のだぁ!?!?」


飛び起きた。


「転売!?」


「そこだけ反応すんな」


「市場を守るのだぁ!!」


「お前から守るんだよ!!」


会議室に連行されるレイ。


その背中を見ながら、

若手女優たちは静かに思っていた。


(……なんでこの人売れてるんだろう)


なお。


業界人全員、

未だにそこはよく分かっていなかった。

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