63.
マーシーと再会してから、三か月が過ぎた。
彼女は、私に嫌がらせなどの類は、一切してこなかった。
あれ以降、彼女から私に会いに来ることはなかったけれど、廊下ですれ違えば、向こうから挨拶してきた。
私は、戸惑いながらも、そんな彼女と挨拶を交わした。
どうやら彼女は、更生施設で生まれ変わったみたいだ。
そう見える。
そうなのだと、思い始めている。
もう、彼女のことは、何も心配しなくてもいいのかもしれない……。
*
(※マーシー視点)
私は清く正しい生徒として、振る舞っていた。
更生施設で生まれ変わり、以前のような自分勝手で横暴なことはしないようになった。
……と周りからは思われている。
しかし私は、中身は以前と変わっていない。
これが施設で身に着けた、演技力よ。
いくら施設で暮らしても、私の本質は変わらなかった。
でも、そのままだと、ひどい罰を受けることになる。
そこで私は、演技力を身に着けた。
生き残るために、必死だった。
そうして、指導員をも騙せる演技力を身に着け、晴れて施設から出ることができたのである。
そんな私は、ほかの学園で一年すごしたのち、この学園にやってきた。
目的はもちろん、カトリーへの復讐だ。
いや、もう、カトリーだけにもとどまらない。
この学園自体が、私の復讐の対象なのだ。
この学園は、私から青春を奪った。
自由を奪った。
だから私が、この学園自体を壊してあげる。
そのためにはまず、この学園で、信頼を得なければならない。
そのための、演技である。
そしてこの学園に編入してから数か月が経ち、私は完全に信頼を得ていた。
べつに、誰かと仲良くする必要はない。
ただ、悪い人物ではなくなったと、思われるだけでいいのだ。
もう誰も、私を怪しむような人物はいない。
さて、今こそ、行動を開始するときよ……。
私は、ある物をこの学園に持ち込んでいた。
それは、手製の爆弾である。
作り方や材料の調達方法は、施設にいた人物に教えてもらった。
まあ、正確にいえば、爆弾ではなく発火装置なのだけれど、そんなことはどうでもいい。
肝心なのは、この学園を崩壊させられる破壊力を有しているということだ。
一つでは、単なるボヤ騒ぎになる程度だけれど、これを要所にいくつも仕掛ければ、学園を炎上させることができる。
学園での生活を送りたくても送れない気持ちを、カトリーにも、この学園のみんなにも、たっぷりと味合わせてあげるわ。
私は爆弾をポケットに忍ばせていた。
一つ一つは、小さいものだけれど、いくつもしかければ、この学園を炎上させることができる。
鞄に入れて学園に持ち込める量には限りがあるから、これから毎日少しずつ持ち運ぶつもりだ。
そして、まずはこれが、一つ目よ。
私は、誰もいない空き教室に、爆弾を仕掛けようとした。
これが、私の壮大な復讐の、第一歩よ。
まさか、施設で生まれ変わった私がこんなことをするなんて、誰も思っていないでしょうね。
私は思わず笑みを浮かべていた。
カトリーが、みんなが絶望する様を想像するだけで、笑いがこみあげてくる。
「そこまでです! マーシーさん!」
「……は?」
突然声を掛けられて、私は驚いていた。
声の方に振り返ると、それはカトリーだった。
「へ、なんで……」
間抜けな声が出た。
現場を見られてしまった。
もう、完全に言い逃れできない。
カトリーの隣には、先生もいる。
私はその先生に、取り押さえられた。
「マーシーさん、あなたが施設で生まれ変わったのだと思っていましたが、やはりあれは、演技だったのですね。少しはまともになったと信じかけていたのに、残念です」
彼女は、哀れむような表情で、こちらを見ていた。
私にとっては、それが何よりも屈辱だった。
いつの間にか、憲兵も駆けつけていた。
私は彼らに連行されながら、カトリーに叫び続けた。
しかし、彼女は何も答えることはなく、私に哀れみの視線をむけるだけだった……。




