56.
(※マーシー視点)
部屋に入り、私と指導員はお互い向かい合って座った。
いったい、何の話だろう……。
ここ最近は、真面目に生活していた。
何も、怒られるようなことはしてない。
しかしそれでも、指導員と二人きりになると、異様に緊張していた。
「マーシーさん、一か月ほど前、何があったか覚えていますか?」
一か月前?
えっと、私が点呼に遅れたことかな……。
ここで、返答を間違ってはいけない。
指導員に鋭い眼差しを向けられ、私は微かに震えていた。
「えっと、私が点呼に遅れてしまいました。それからは反省して、一度も遅れたことはありません」
質問に答えつつも、私が真面目にしていることもアピールしておいた。
「そうですね。あの時、私が言ったことを覚えていますか? 私はあなたに、寝坊したのは、うっかりだったのかと聞きました。そしてあなたは、はいと答えた。そうですね?」
「は、はい、その通りです」
私はつばを飲み込んだ。
「この施設の目的はですね……、間違いを犯した子供たちに、罰を与えることではありません。それはあくまでも、目的を達成するための手段に過ぎません。この施設の目的は、間違いを犯した子供に、更生してもらうことです。この一か月ほど、私はあなたに、ずっとチャンスを与えていたのですよ」
「え……」
チャンス?
いったい、何のことだろう……。
「わかりませんか? 私はずっと待っていたのですよ。あなたが、寝坊したのはうっかりではないと、正直に話してくれるのをね」
「え……」
私は、あまりに驚き過ぎて、心臓が止まるかと思った。
まさか……、まさか、バレていたの!?
そんな……。
わかっていたうえで、私が正直に話すのを待っていたの?
そして私は、一か月以上たったのに、正直に話さなかった。
私は過ちを犯してしまった。
そんな私を、許してくれるだろうか……。
私は、目の前にいる指導員を見た。
彼はこちらを見て、にっこりと笑っている。
とても、許してくれるようには見えなかった……。




