43.
(※謎の令嬢視点)
厳つい風貌で身長二メートルを超える大男(私は親しみ込めて彼のことをマッチョくんと呼んでいる)が、テーブルを挟んで私の向かい側の席に座っている。
このクラスのお店で注文した、熱々の具がパンにはさまれた料理を私たちは食べている。
否、私はもう食べ終えたので、現在食べているのは目の前にいる彼だけである。
彼は持っているパンにふーふーと息を吹きかけ、何とか冷まそうとしている。
厳つい見た目とのギャップが凄まじいけれど、彼がこうしている姿を私はもう見慣れている。
「お待たせしました、お嬢様。それでは、次の模擬店へ行きましょう」
ようやく彼が食べ終えた。
次のクラスのところへ行っていると、偶然にも知り合いと遭遇した。
「あ、レナードさん。こんなところで会うなんて奇遇ですね」
私は彼に声を掛けた。
彼は、憲兵に所属している人物である。
そして彼と話していると、すぐ近くのクラスで繰り広げられている騒動に、私たちは気が付いた。
「カトリー、あなたの辛気臭い顔をもう一度見に来てあげたわよ。もうそろそろ、学園祭が中止になって、あなたが絶望する頃かしら」
私服を着ているから、彼女は一般のお客さんのようだ。
「マーシーさん、この騒動は全部、あなたがやったことだったのですね」
彼は制服を着ているので、この学園の生徒なのだろう。
私たちは彼らの様子をしばらく見ていた。
「あら、ハワード様。久しぶりに口をきいてくれましたわね。そんな根拠もない言いがかりでなかったら、素敵だったのですけど」
「まさか、あなたにここまでの執念があるとは思いませんでしたよ。正直なところ、このまま学園祭が中止になることも覚悟していました」
「ええ、そうでしょうね。その通り、このままいけば、学園祭中止は既定路線ですよ。今更この状況を覆すことなんてできませんわ」
彼女は得意げな顔をして言った。
「それが、そうでもないのですよ。学園祭を中止するために策を弄したようですが、残念ながら、あなたの思い通りにはなりません。なぜなら、この騒動が、あなたの起こしたものだという証拠を見つけましたから」
「しょ……、証拠ですって!? そんなもの、あるはずがないわ! 私の計画は……、あ、いえ、私は何もしていません! 無実の人に罪を着せようとするなんて最低だわ!」
さっきまで得意げだった彼女の表情が、今は焦った表情になっていた。
なるほど……、大体の状況は分かった。
「レナードさん」
隣でこの騒動の様子を見ていた彼に、私は耳打ちした。
「この学生さんたちを、フォローしてあげてください。あくまでも、こっそりとですよ。憲兵が大騒ぎすれば、学園祭が中止になってしまうかもしれませんからね」
「わかりました。確かに、あまり大事にしない方がよさそうですね。若い学生たちの青春を台無しにするわけにはいきませんから」
「ええ、そうです。それに、私も学園祭デートの最中なので、中止になったら困ります」
*
(※マーシー視点)
証拠ですって?
そんなもの、あるはずがないわ。
私の計画は、完璧なものなのだから……。
「では、さっそくあなたに、証拠をお見せしましょう。それは、倒れた女性が食べていた料理に入っていた、歯です」
「……は!?」
私は驚きのあまり、言葉を失っていた……。




