32.
「あのぉ、ハワードさん、私、既に手を握っているのですけれど……、いったいこの手は、どなたのものなのでしょうか?」
「……え?」
今度はハワードが驚いていた。
そしていきなり、私のいる辺りが明かりに照らされた。
視界が確保されたことにより、私の手を握っている者の正体もわかった。
私の手を握っていたのは、手がぬるぬるの、よくわからないお化けだった。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」
お化けの叫び声ではなく、私の悲鳴である。
死ぬほど驚いた。
私の悲鳴で、お化けもハワードも驚いていた。
今も、心臓がバクバクいっている。
もちろん、手を握っていたお化けにときめいたわけではない。
「お客さん、いいリアクションですね。あ、これ、どうぞ」
お化けがハンカチを手渡してきた。
私はそれで、ぬるぬるになった手を拭いた。
どうやら手に何か塗っていたようである。
普通に手を握られるより、確かにこちらの方が驚きは倍増する。
「はい、それでは明かりを消しますので、また壁に手を沿わせて、気をつけてお進みください」
辺りを照らしていた明かりが消えた。
優しいお化けの言葉に従って、私たちはまた進み始めた。
受付にいたお化けの人や、さっきのお化けの人もそうだけれど、お化けの格好をしたままで普通に話しかけてくるのは、なんだか学生の手作り感があって、ほのぼのとする。
お化け屋敷自体は、死ぬほど怖いけれど……。
*
(※マーシー視点)
私は学園祭に来ていた。
一般の入場者もたくさんいるし、中等部と高等部の学生もたくさんいる。
学園内は、たくさんの人であふれかえっている。
みんな、楽しそうだ。
学生たちを見ていると、私は怒りが爆発しそうになった。
本当は私も、彼らの様に青春を謳歌するはずだったのに。
それをすべて、カトリーが台無しにした。
彼女が、私から学園生活を奪った。
そして今日は、彼女にその報いを受けてもらう。
しかし、一つ問題があることに気付いた。
カトリーのクラスの模擬店が、どこにあるのかわからない。
何年何組の模擬店か、というのは掲示されているが、私は肝心のカトリーがどのクラスなのか知らないのだ。
彼女が一年だということはわかっている。
こうなったら、誰かに聞くしかないか……。
私は一年生の模擬店にいる人に尋ねた。
「あの、私、一年生のカトリーさんのお友達なの。お店に遊びに行くって約束していたんだけど、うっかりしていて、どこのクラスか忘れてしまって……。それで、彼女がどこのクラスか知りたいんだけど」
「ああ、彼女なら三組ですよ。ここから二つ隣です」
「どうも、ありがとう」
私はその学生にお礼を言った。
そして、カトリーのクラスの模擬店の場所へと向かった。
さて、それでは始めましょうか……。




