31.
(※マーシー視点)
退学になってからの生活は、まさに苦痛だった。
今までは、毎日学園でエリオット様やハワード様を眺めることができたのに、退学になったせいでそんなこともできなくなった。
全部、私を退学に追いやったカトリーのせいだ。
本当はすぐに彼女に復讐したかったが、それはできなかった。
退学になってからは、私の行動は母によって厳しく制限されたからだ。
具体的には、外出禁止である。
これがもう、本当に苦痛である。
下校しているエリオット様やハワード様を眺めることもできないし、カトリーに復讐することもできない。
例外として、時々母と一緒に出掛けられることもあったが、母の監視の目があると、私に自由はないに等しかった。
だから私は、ほとんどの時間を家で過ごした。
やることがなさすぎて、暇すぎて、気が狂いそうになった。
母は勉強でもしなさいと言っていたが、とてもそんな気にはなれなかった。
時々母と一緒に出掛けて、残りのほとんどは家で過ごす。
そんな生活が何日も続いて、地獄のような思いをしていた。
しかし、私は家で、あることをするようになった。
これを始めてからは、家にいても暇ではなくなった。
これは、カトリーへの復讐への準備でもあった。
そして、何日もおとなしく過ごしていた私は、以前から母にお願いしていたことを聞き入れてもらうことができた。
一日限りの、外出許可である。
もちろん、母は一緒ではない。
一人きりで、母の監視もない。
一日限りとはいえ、実に久しぶりの自由だった。
そんな自由の身となった私のやることは、もちろん決まっている。
カトリーの学園生活を壊すことだ。
私が彼女にそうされたように……。
これは正当な復讐なのである。
そのための準備は、怠らなかった。
綿密に計画を立てた。
あとは、実行に移すだけだ。
私は、学園祭へ足を運んだ……。
*
「まずは、お化け屋敷へ行きましょう」
私はハワードに提案した。
彼はその提案を受け入れてくれた。
今日は学園祭当日。
ハワードと二人きりの、学園祭デートである。
クラスの出し物の当番は午前中の数時間で終わり、私は神がもたらした幸せな時間を楽しんでいた。
まずは定番のお化け屋敷である。
お化け屋敷の暗闇を利用して、ハワードに接触しようという魂胆も、ないわけではないけれど、純粋にお化け屋敷を楽しみたいという気持ちもあった。
列に並んで待って、いよいよ私たちの番になった。
中に入ると想像以上に真っ暗で、ほとんどどころではなく、全然何も見えなかった。
列に並んで待っている時に、「右手側にある壁に手を沿わせながら進んでください」と、受付をしていたお化けがやさしく教えてくれた。
なので私はその指示に従って、右手を壁に沿わせながら進んでいた。
暗くて見えないけれど、私の前にいるハワードも同じようにして進んでいるだろう。
「ハワードさん、いますか?」
「いますよ」
「あの、手を繋いでもいいですか?」
おぉ、言った。
言っちゃったぞ、私。
「いいですよ」
キター。
私はどきどきしながら、左手を前に伸ばした。
そして、手を握った。
……少し汗ばんでいる。
私の手ではなく、私が握っている手がだ。
汗ばんでいるというのは、少々控えめな表現だったかもしれない。
ぬるぬるしている、といった方が正確だ。
え……、人間って、こんなに汗をかくものなの?
「カトリーさん、どうしたんですか? 手を繋ぐのではなかったのですか?」
「……え?」
今は、違う意味でどきどきしていた。
あのぉ……、今私が握っている手は、どなたのものなのでしょうか?




