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令嬢、祝福される

 わあああああぁぁ!!! と、歓声が聞こえてきた。教会から一歩外に出ると、真っ白な光と一緒に耳が痛くなる様な音が聞こえてくる。何が起こったのかと光にゆっくりと目を慣らしながら見たら、広い階段の下に群衆の姿。何これ? 今日何かのお祭り? そう思っていたら私達に手を振って彼らはこんな事を言う。


「アイオライト様ー!」


「アリアネル様ー!!」


「おめでとうございます!」


「ご結婚、おめでとうございますー!!」


 わああああーーー! きゃーーーー!!


「? …??」


 何で? 隣を見るとアオも驚いている。私の両親もアオのご両親も目を丸くしてしばらくそれを見ていた。


 が、やがて。


「ほら。何をやっているんだ。行きなさい」


「皆待ってるわよ」


 と、両親が笑顔で頷く。


「こんなに沢山の人から祝福されるなんて、本当に幸せねぇー」


「うんうん」


 いやいや。待って。誰も呼んでないのにどうして。


「何で…?」


 と、二人で両親を見るけれど、四人とも首を傾げている。親の仕業じゃないらしい。けれどアオのご両親がやがてこう言った。


「別に秘密にしていた訳じゃないんだから、来たい人が来てくれただけでしょう」


「そうそう。お前達だって結婚式を見かける事くらいあっただろう?」


「それにしても、あなた達の人気凄いわねぇ―」


「本当に、王族の結婚式みたいだ」


 と、私の両親も呟いて気が付いた。最前列に殿下とソフィー様がいる。第二王子とルビー姫も。


「あ…」


 思わず駆け寄ろうとしたら、その手をアオが握り締めて止めた。振り返ると笑って彼は言う。


「危ないよ」


「…」


「一緒に行こう。良く見たら知った顔ばっかりだ。皆、祝福しに来てくれたんだな」


「…」


 確かにそうだ。元クラスメイト、学校の人達。家やアオの家の使用人の人達。王宮の人達の姿もある。知らない人も多いけれど、きっとアオの知り合いなんだろう。


「嬉しいな」


 と、階段を下りながら幸せそうにアオが呟く。その言葉が私に染み込んで、さっきの痛みを少し刺激する。この人は何て素直なんだろう。きっと何一つやましい事も隠し事も知られたら困る事も無いんだろうな。


「うん」


 その言葉に、間違いの私は頷いた。ただ彼みたいになりたくて。彼の気持ちを一緒に大きくしたくて。


「殿下。ソフィー様」


 歓声が続く中で、階段を下り切って二人に対面する。そして第二王子とルビー姫にも。その瞬間に沢山の風船が空に放たれて雪の様な花弁が舞った。綺麗。なんて綺麗なんだろう。


「アイオライト、アリアネル。結婚おめでとう」


「おめでとう」


 と、二人が笑ってくれる。


「アリアネル! おめでとう!!」


「おめでとうー!! アリアネルー!!」


 と、ルビー姫が抱き付いてこようとするのを第二王子が抱っこして阻止した。ルビー姫ジタバタ。


 二人には今日結婚式という事を伝えていた。伝えただけで来てもらえるとは思っていなかった。そう伝えたらソフィー様は膨れっ面で「来るに決まっているじゃない」と言う。それからため息をついてこんな事を言った。


「少し前まで誰もいなかったのよ? でも、ほら。お洒落した私達が二人、ここにいたらばれちゃった」


 あ! 殿下とソフィア様だ。アイオライト様とアリアネル様もいらっしゃるのかな? ……ううん。いない。いらっしゃらないねぇ。珍しいねー。それにしてもお二人、お洒落してどこに行かれるのかな。ずっとあそこに立ってらっしゃるけど。ねー。まだ動かないねぇー。ねー………ん? ……あれ? ねぇ? あそこって教会だよね? うん。そうだね。教会だね。……んん? 教会? 何で教会? ……教会って……え? あれ? もしかして! あーーー!!? えーーー!!!? 嘘ーー!!? うわぁーー!! っていう流れらしいけれど本当に? その内、使用人や他に知っていた数少ない人達もお洒落してぞくぞく集まってくるものだから何も聞かずとも察したその他大勢がいたらしい。


「いや、誤解なら否定しようと思ったけど誤解じゃないから放っておいたらさ。凄い事になっちゃったね」


 すぐに二人が出てくるのかと事実確認もされずに質問されて、殿下は苦笑いしながら答えたらしい。まだ時間あるなら皆に伝えないと!! と、走っていく姿を何人も見たとか。その姿が見えなくなるや否や、今度は何人もこっちに向かって走ってくる。間に合ったと分かると皆にこにこと教会を見上げていたそうだ。


 と、話している間にも人が集まり続けていたらしい。人が人を呼び、歓声と祝福は町に溢れた。


「アリアの事、皆大好きなのよ」


 と、ソフィー様が言う。


「皆を幸せにした分、アイオライトに幸せにしてもらうんだよ」


「…?」


 私は何も…。


 そう言いかけた私の肩を抱いて、アオが代わりに頷いた。


 それは夢みたいな一日だった。沢山の人が自分達を心から祝福してくれた。物語の主人公みたい。いつまでこんな幸せが続くんだろう。どうか、ずっと続きます様に。

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