閑話 ―思惑―
「宰相、一体どうなっておるのだ!」
豪華な身なりをした男が叫ぶ。
「私も現状を確認しているところでして・・・」
宰相と呼ばれた男は、しどろもどろに答える。
「それで姫はどうした」
「勇者楠様の所でございます」
「王太子は?」
「勇者小鳥遊様の所へ」
「はぁ・・・もうよい」
豪華な身なりをした男は、アルカディア王国の国王、フィリップ=アルカディアであった。
王はうなだれていた。
37名の勇者の召喚に成功し、これでアースガルドの覇権を得られると意気揚々としていたのは一か月前。
そう、たった一ヶ月でアルカディア王国の国内はボロボロになっていたのである。
勇者の行動で。
まず一部の勇者の国からの離反。
次々と勇者が失踪するのである。
秘かにいなくなるものもいれば、衛兵を蹴散らしながら去っていく者もいた。
王都で暴れるものもいた。
素行が悪く犯罪を犯す者、住民を虐げる者。
また、正義感の強い勇者は素行が悪い者と対立し街を半壊させたこともある。
異様なところで、奇抜な恰好で夜な夜な王都の空を飛び回る者もいる。
一部の勇者は城内で大人しくしていたが、いつの間にか貴族の子弟を取り込み、毎夜、舞踏会や茶会などの宴を繰り返している。
「宮廷魔術師長、勇者達につけた首輪はどうした」
「外されていたり、効果をなくしていたりと全て無効化されております」
「ステータスブレスレットで勇者を操れると言ったのはお主だったな?」
「計算では制御できるはずでした。勇者達のスキルが思いの外異常で・・・」
「司祭、天使様達はなんと?」
「あれからお告げはございません。天使教としては、召喚した勇者を上手く扱えない王国に落ち度があると認識しております。天使様も呆れているかと思います」
王は頭を抱える。
一体どうすれば良いのかといくら考えても解決法が見つからない。そもそも勇者の力が異質すぎてどうにもできないのだ。
不毛な会議の続く部屋に伝令の兵士が飛び込んできた。
「スレイブヒール公爵が挙兵しました。謀反です!」
「また勇者の仕業か!」
原因は、王太子だった。
勇者小鳥遊花に入れ込んだ王太子は婚約者であるスレイブヒール公爵令嬢を無実の罪で陥れ、一方的に婚約破棄したのである。更に公爵令嬢は小鳥遊花の取り巻きの男達に言われなき侮辱を受け、心を壊し自殺してしまったのである。
これにスレイブヒール公爵は怒り狂った。更に火に油を注いだのは、取り巻きの男たちが、宰相の息子、魔術師長の息子、騎士長の息子や有力貴族の長子などの権力の中枢にいる者の関係者であったからだ。
スレイブヒール公爵はこれは王国の陰謀だとして挙兵したのである。
アルカディア王国は破滅への一歩を踏み出したがまだ誰も気づいていない。
「ベルゼブブ様、勇者達が動き出しました」
「そうか、魔族領に近づく者はおるか?」
「現状そこまでの力を持つものはおりませんが、今後はわかりません」
「アスタロトよ、引き続き勇者の監視を続けよ。真理に近づく者がいれば手を貸し、それ以外は放置してよい」
「よろしいので?」
「かまわん。頃合いを見て天使共が間引くであろうしな。我々は我々の使命を果たすだけだ」
何処かの島の、何処かの城の一室。
7つの王座に座る7人の異形の王たちは、その王座に気怠そうに座り静かに佇むのであった。
「どうしたのミカエル?楽しそうな顔をして」
「やあガブリエル、見てごらん勇者達の花が美しく咲いているよ。ああ、あの美しい花を摘んでしまいたくなる。」
「駄目だよミカエル、実が熟すまで待たなくちゃ。あの花たちはどんな実を付けるのだろうね」
「そういえばラファエルとウリエルはどうしたのだい?」
「ラファエルはゲートの様子を見に行っているよ。今回の召喚は無理をしたからね。龍族は怒っていたよ。ウリエルはアルカディアに動乱を起こしに行ったよ。勇者達が実るまでまてないからおやつだってさ。」
「ウリエルには困ったものだ。あまり介入しないように伝えてくれないかな?いや、試練を与えることによって勇者達の栄養になるか・・・」
アースガルドを管理する天使と呼ばれる存在は世界を俯瞰する。
これからくる魂の収穫と言う名の宴を楽しみにして。




