06.港街アガルタと道具屋とマント
「んーーー」
先ほどから髭面のおっさんが、マントを見ながら唸り声をあげている。
そう道具屋にあのマントを売りに来たのだ。
マヨネーズから脱するために!
「あんちゃん、本当にこれ売るの?」
「お願いします。出来れば買い取り額で別のマントに替えてもらえれば・・・」
「うちでは買い取れないな」
「やはり価値ないですよね」
「逆だよ逆、うちの店にはこのマントを買い取るだけの金はない」
思っていなかった返答に呆然としていたら髭面のおっさんに説明された。
「まずこのマントの素材は、魔糸だな」
「さらに、この刺繍は魔金糸。魔金糸に込められた温度調整魔法と外部遮断魔法を、魔糸による常時魔力によって常に発動している状態だな」
「このマントは、衣類と言うより魔道具の類だな」
王都のなんでもない道具屋でお勧めされたなんでもないマントだったのだが。
銀貨5枚くらいの何でもないマントのはずなのだが。
「そのマントを付けていると寒さも暑さも感じなかっただろ?温度調整魔法でマント内はいつも適温だ。更に外部遮断魔で雨風の影響も受けない。こんなマントを気軽に売ろうとするお前何者だ?」
そう言えば・・・。
マヨネーズの刺繍ばかり気になってマントの異常性に気づいていなかった。
「あんちゃん、まったく気づいてなかった顔してるな。雰囲気や態度は冷静で知的な感じがするが案外ぬけてるな」
「実はまだ駆け出しでして価値に気づきませんでした。マントも王都の道具屋で気軽に薦められたもので価格も銀貨5枚だったものでまさかそれほどの物とは」
「恐らくだが、魔道具の名工ハンニバル様の作品だな。魔道具作りの天才で貴族向けに魔道具を作っているのだが、稀に気に入った冒険者に高性能の魔道具を安価に売りつけるそうだ」
「ハンニバル作なら貴族がに高額で売れる。本気で売るなら貴族を紹介するがどうする?」
マヨネーズを我慢して、利便性の高いマントを選ぶか。
マヨネーズ回避で普通のマントにするか。
現代っ子なめるな!
売るのをやめた。冷暖房付き防水防塵マントとか手放せない。
髭面のおっさんに迷惑をかけたので、消費していた旅道具の補充をした。
ついでに、料理用でちゃんとした包丁とまな板、何種類かの鉄鍋を購入。
電脳にいくらでも収納出来るようになったから重量や大きさに遠慮なく買える喜び。
メタルマッチが売っていたので購入。火打石って不便だったんだよなー。
というかメタルマッチあるのか!
マグネシウム加工とかそんな技術あるんだ。
買い物を済ませ港に移動。
移動中、色々気になっていたマグネシウムや魔糸、魔金について知識検索をかけてみた。
マグネシウムは大森林の魔物素材だった。
特に石や鉄の様に硬い魔物がドロップし、マグネシウム以外にも色々な非鉄金属をドロップするようだ。
大部分は利用法が不明で廃棄されるそうだが。
物はあるのだから、科学を広めれば色々発展しそうな気がする。
だがその後の魔糸や魔金の存在で科学を広める意味がないことがわかった。
魔法の概念便利すぎだろ。
魔糸は、大森林に発生する魔力の強い蜘蛛型の魔物の素材で、微弱だが常時魔力を発動している。衣類系の魔道具や装備品の材料などになる。更に魔金属の粉末を定着させた刺繍糸には魔法を込めることができ、魔糸製の道具と組み合わせることによって色々な効果の魔道具が作れる。
魔金は、魔金属の一種で大森林の鉱物を主食とする魔物がドロップする素材だ。
金が主食なら魔金、銀なら魔銀、鉄なら魔鉄と貴金属の種類と同じだけ魔金属は存在する。
さらに魔金属をドロップする魔物を主食とする魔物のドロップ品に霊金属があるがあまりにも希少で伝説扱いである。
魔金属は、種類によって特性が違い色々な組み合わせの合金が魔道具の材料になり、その配合は魔道具技師の秘中の儀となっている。
また、武器の材料としても有名で魔金属の武器は魔剣と呼ばれ(剣の形状に限らず全てを魔剣と称する)さまざまな魔法付与で多種多様である。
魔糸、魔金属に魔法付与を組み合わせれば色々な道具が作れそうだ。科学が発展しないわけだ。魔法の世界怖い。
港に到着。
ミズガルズ大陸の南部、ヴァナニール帝国の船を探す。
北部は群雄割拠状態で荒れているらしくまともな情報がないと思い、航路で迂回予定だ。
乗船可能な交易船がすぐ見つかりすぐに船賃を払う。
異世界の船旅ということでちょっとテンションが上がり一等客室にしてみた。
あとで冷静に考えたら無駄遣いだった・・・。
時刻はちょうどお昼くらい。
出航するまで3時間ほど余裕があったので近くの市場で魚介類を物色。
店内で貝や魚を買って店先の竈で網焼きをするスタイルの店で貝類を購入。
サザエぽいのとハマグリぽい貝があったのでテンションあがりまくり、あとよくわからない貝も買った。売り物だしきっと火を通せばなんでも大丈夫!
店にあった調味料は塩のみだったのでここは自重せずに醤油を出す。
焼き貝には醤油でしょ。
サザエとハマグリは絶品だった。
よくわからない貝も甘みが強く肉厚で美味。
あと見た目がナマコみたいな謎貝の味は牡蠣の味だった。
生はちょっと難しいかな。日本の牡蠣ですら当たるのだから異世界の謎貝は・・・。
怖いからやめた。
ああ、醤油垂らした貝汁うめぅ。
焼き貝を堪能していたら匂いにつられて人が集まってきた。
この貝は、誰にもやらないよ!
凄く食べたそうな顔をしていたので貝を持参してた人に醤油をわけてあげたら狂喜乱舞していた。
王都では受け悪かったのだけどな。
貝食べながら雑談していたらこの世界では魚醤が主流で、地方では普通だが王都では特に貴族に田舎の味、平民の味と忌避されるそうだ。
そしてこの日本の醤油は癖がなく魚醤よりも上品だと現在大好評中。
「実は、味噌と言うものが」味噌を出そうとしたら突然乱入者が現れた。
護衛に囲まれたでっぷりとした乱入者は「その美味しそうなものをわけてくれないかな?」と遠慮なくこちらに突っ込んできた。
「これは子爵様!」
周りの人は皆一斉に頭を下げた。
子爵様?貴族?
「少年!その貝を分けてくれないかな?私は美味しいものに目がなくてな」
面倒事は無理なので抵抗しないで貝を渡す。
貴族のおっさん、一飲みで食べてるよ。
貝は飲み物ではない。
「柑橘系の特に酸味が強い果汁あるともっとおいしいですよ」
あまりに幸せそうな顔で食べてたのでそうアドバイスしたら貴族のおっさんは護衛を買い物に走らせた。
しばらくして黄色い果実をかってきたわけだがこれって檸檬だよなー。
鑑定したらレモモの実となっていた。味は完全に檸檬だった。
最終的に、醤油と檸檬のしぼり汁で焼き貝パーティーですよ。
そろそろ出航の時間だったので後ろ髪をひかれつつパーティー会場をあとに。
別れ際にビスマルク=ローレックアガルタ子爵とがっつり握手ですよ。
貝を通じて友情が生まれたのでストックしてあった醤油の半分を献上。代わりにレモモの実を大量に貰いました。
あと、こっそり刺身について教えておいた。忌避される行為らしいので嫌な顔されると思ったが子爵はノリノリだった。
ん?この街を治めるローレックアガルタ子爵?何かあったような、なかったような。
口の中が幸せのまま出航時間前に無事に乗船。
異世界で新たな国、ヴァナニール帝国を目指し10日ほどの船旅にでるのであった。
あっローレックアガルタ子爵の娘のアントワネットさんに誘われてたの忘れてた。
まぁどうでも良いか。
檸檬の誘惑に勝てず、牡蠣ぽい味の謎貝をレモモ汁を絞って生で食べた尚人だったが
後ろの門は、見事に決壊した。
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名前 真神尚人 17歳
種族 人間族
職業 勇者
レベル 3
HP 900/900
MP 121/121
力 200
体 180
俊 180
魔 250
【スキル】
万物創造 共通言語認識 電脳
剣術 刀術 体術
回避 解体
【称号】
異世界人 勇者 閃光のマヨネーズ
【装備】
打刀無銘
皮の鎧
お洒落なマント
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フラグはどんどん回避!(笑)
今週は、1日1本の投稿となります。




