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魔王選定  作者: 華宵 朔灼
五章 少女期・国越え
96/113

01 国境の街ルイーデ

久々にTRPGやったら、

友人「えげつな」

自分「え? そう?」

友人「いや、もう少し優しさを持たせようぜ」

自分「フェードアウトしたと思ったら家出してて交通事故にあって病院が来い状態だから無理」

友人「何それ怖い」

私が書いたシナリオのNPCに対する友人の評価でした。


さて、久々のシノちゃん!

本編始まります―

 農耕国家シシラギヤと神聖帝国フロウェルの国境にある街、ルイーデに繋がる街道に、シノとスペーラとクロの二人と一匹は立っていた。

 夜になるのも早まってきた時期で、空気はどこか冷たい。

 朝でもなく昼でもない、そんな時間に出歩いている者は少なく、シノとスペーラはいつもなら目深にかぶっているケープのフードを卸し、髪を風に靡かせながら眼下を見下ろしていた。


 「あれが、国境の街、ルイーデです」

 「広いね………」


 シノの眼下に広がるのは、ディルエバーズでも広いと言われていた町であるガラムが数個入りそうな大きな住宅街。ガラムのように街道に沿って畑や牧場が広がっていて、それも含めると、ただ広いとしか言えなくなる。眼下に広がるルイーデの街の配置を少しでも覚えようと、シノは目を走らせていた。

 シシラギヤは数十年前の戦争で多くの土地を荒廃させてしまったが、ギルドーナを国と認めるのを条件に妖精族の力を借り土地そのものを引き伸ばし肥沃で平坦な土地を作り出したと言うのは有名な話だ。当然ながら妖精族の力を借りることができないフロウェルは土地が総じて低く、防衛の面と国家間の意志を尊重してルイーデの街はフロウェルの土地と同じ高さになっている為、ルイーデに行く為の街道は、急勾配な斜面を緩やかに下れるようにひたすらに長く多くの曲がり角がある街道に仕上がっている。

 登り居りするだけでひたすらに時間を食う街道であり、途中には休憩所が設置され、屋台も出店されていたりと、この街道はシシラギヤでも有名な観光地になっている。


 「―――それであの山脈の間に、帝国へ入るための検問があるそうです」


 検問、と言う言葉に反応したシノは、ルイーデの向こうにある山々へと目を向けた。

 山脈の間、つまりは谷に設置されている検問へ向かうまでの道はどうやら蛇行しているようで、目を凝らしても視えないのだが、山々の上にはこれ見よがしと帝国の国旗がはためいていて、なんとも異様な雰囲気を醸し出している。


 「抜けるのは無理そう、だね」

 「簡単に密入国するとか言わないでください。どこに耳があるか分からないんですからっ」


 きょろきょろと不安そうにあたりを見回すスペーラの顔は、元の白さに加えて青さが加わっている。

 挙動不審なスペーラを呆れたような目線を向けるだけのシノの目には、確かに感情が宿っていた。


 「とりあえず降りましょう。フード、被ってくださいね」


 汚れが目立たない濃い灰色のケープフードをかぶり、シノのフードも同じように深く被せるスペーラの様子は、傍から見れば歳の離れた妹を世話している過保護な兄にも、姉夫婦の忘れ形見を手厚く保護している叔父にも見えるかもしれない。

 二人が出会った氷村カゾスから旅立って、三年が経過した。

 未だに自分が何者か分からないスペーラの外見は全くと言っていいほど変わりないが、シノは普通の子供よりは幼く見えるが、頭一つ分は大きくなった。クロも成長し普通の馬より一回り逞しくなり、黒々とした毛並はしっとりと輝くようになり、以前にもまして存在感が増している。

 栄養面でかなり改善された生活を送っているスペーラの白髪は流れるような銀髪となっているし、健康的に痩せているシノの体も少し丸みを帯びていて、傍から見たらそれなりに裕福な暮らしをしているのだろうとすれ違う人は考えるだろう。


 「お前ら今からルイーデに行くのかー?」


 そんな彼ら一行に話しかけるのは、基本的に装備の不十分な冒険者か、商機を逃すまいと目を輝かせる商人。今回は後者であるが、ルイーデの街から街道を登っている途中である為、こんな時間に下ってくるそんな恰好な者たちが珍しくて声をかけた、と言うのが正しいのかもしれない。


 「ええ、ルイーデに知人がいると聞いて」


 旅の最初のうちは、話しかけられることになれていなくて吃っていたスペーラだが、シノのと旅で強制的に話さなければならない環境に置かれて、今では滑るように口から(方便)が出るようになっている。


 「そうか、今帝国からお客人が来てるらしいから、そっちのちっこい嬢ちゃんは特に気をつけろよ」

 「善処する」


 シノの方もまだぶつ切りな喋り方だが、きちんとした呂律で発音できるようになった。なったのだが、なるべく話す言葉を少なくしようとしているのか、言葉としては足りないくらい短い。

 それでもちゃんと喋るようになった分、成長したのだろう。


 「おう、難しい言葉使えるんだな。兄ちゃんも、嬢ちゃんを守ってやれよ」

 「はい。ありがとうございます」


 同じようなことを何度か繰り返して、もうすぐ昼、という時間にルイーデの街に入る門の前に着く。

 ルイーデの街に入るための門の種類は一か所に付き三つ存在する。

 一つ目は、大型の馬車と貴族を通す門。一番大きい門で、昼間は常に開けっ放しになっているが、それなりの検査を毎回行う門。

 二つ目は、馬車に乗っていないものの初めてルイーデに来る者たちが入街検査を行う門。毎回扉を開け閉めできるようになっており、兵士によって厳重な検査が行われる。対象は冒険者であったり、身軽な商人であったり、旅人などである。

 三つ目は、この街に住んでいるか拠点として活動している者が入れる門。兵士による確認はあるものの、タグを見せれば通してくれる場所である。

 シノたち一行が並ぶのは二つ目の列。


 「おや、二人で旅かい?」

 「え、あ、はい。妹と二人旅です」


 長い列で待つには時間がかかる。

 時間つぶしは基本的に前後に居る者との会話か、手持ちの書類であったり本であったり、これから行うであろう商談や対話への仮想訓練である。

 暇そうに呆けているような者は、基本的に入場管理が厳しいこんな街には来ない。


 「最近物騒だけど、君らは大丈夫だったのかい?」

 「え? そんな物騒なことあったんですか?」

 「ああ。お嬢ちゃんと二人旅なんだろ? このくらいの子供が連れて行かれたとか、いつの間にか消えてたとか、他にもいろいろ話を聞いたからなぁ………」


 眉根を寄せながら、子供たちへの憂いを乗せる顔を作り上げる男性。

 シノは興味がないと言わんばかりにケープの内側に下げていた肩掛けカバンから本を取り出し読んでいる。『グルフェグの良好日誌』と表紙に書かれているよく分からない分厚い本だが、面白かったら今度貸してもらおうと思いながらスペーラは男性の話に乗る。


 「特に危ない目には合ってませんけど………十分気を付けます」

 「おう。そうしておけ。小さい子は守らないとな」


 二カッと黄色い歯を見せて笑う男性。

 連れているのはクロのようにほっそりとした体躯を持つ馬ではなく、鈍くさそうな顔つきを持つくたびれた獣。姿は馬に似ていなくもないが、広い背は多くの荷物を載せるのに適しているのだろう。

 木枠の上に載せられ、紐でくくられている荷物は獣の動きに合わせて左右に揺れている。


 「その、言いにくいんですが、もう少し紐をきつく締めないと荷物落ちるんじゃ………」


 そう、スペーラが言ってしまう程度には、左右に揺れていたのだ。


 「ああ、大丈夫ですよ。きつく縛ってもどうせ緩むんです。落ちたらまた縛りなおせばいいんですよ」


 ぐらぐらと揺れるその荷物を見ている限りだと、なんとも不安になる完全なお人よしになってしまったスペーラは困ったようにシノに目線を向けるが、シノはその目線を受て一度揺れている荷物を見ただけでまた本に視線を落とす。

 明らかに興味なしと視線で告げられたスペーラは、一度肩をすくめて黄色い歯の商人らしき男と世間話を続ける。


 「次っ」


 シノたちが呼ばれたのは、完全にお昼になるかどうか、という時間であった。

 途中で何度か列の前方で騒ぎが起きていたのは聞こえてきていたのだが、直接関係なければ関わらないのが当たり前である為、あえて無視していたのだ。そのせいでここまで順番が回ってくるのが遅くなったのは少々計算外だったかもしれないが。


 「あ、僕らですね。それでは」

 「ああ、いい暇つぶしができたよ」


 光らない黄色い歯を見せて笑う男を置いて、スペーラはシノをクロから降ろすと、外壁の中にある入街管理所に入っていく。


 「証明証を提出してくれ」

 「はい。二人とも冒険者です」


 スペーラは、二つの革紐を渡す。

 革紐の先には、四枚のタグが揺れている。


 「………ふむ、一応フードを下ろしてもらえるかな」

 「………」

 「すまない。以前、奴隷と主を偽って入国しようとした奴らが居てな。街中ではフードをつけていてもいいが、ここでは一応フードを脱いでくれ」


 シノたちに声をかけていた兵士は、その奥で椅子に座っている兵士にタグを渡すと向き直り、説明する。

 フロウェルとの国境の街。

 青年の奴隷を連れた幼女など、帝国の者からすれば恰好の的でしかないと考えたから、彼は守る対象に加えようとそのフードの下の顔を見たがった。

 彼の本来の仕事は、タグを預かり、もう一人に渡し、冒険者ギルドの協力の元作り出した刑罰対象検査機と言うモノに通すことで、指名手配になっていたりその人本人であるかを知り、タグが手元に帰ってくるまで対象者たちとの世間話にふける、ということだ。

 もちろん彼はこの街の兵士としてかなり熟練の者だ。絶やさない笑顔と、その目の確かさと、真っ直ぐな心根はこの町の領主と直下の騎士団からも信頼がおかれているような者、それが彼。

 その彼の直観が告げていた。

 この二人は、必ずフロウェルの者と問題を起こす、と。


 「わかった」

 「はぁ………」

 「ふむ。よし、また被っていいぞ。別に私は帝国主義ではないが、君は少し見目が良過ぎる。金に物を言わせている者もいるから気を付けたまえ。そちらの銀髪の奴隷君も、主人をきっちり守るように」


 確認した彼は、淡々とそう告げる。

 シノは普通にフードをかぶりなおしたが、スペーラは驚きで目を丸くしていた。


 「ん? 私の顔に何か付いているかい?」

 「え、いや。随分と丁寧な態度だな、と」


 大きな街には寄ろうとせずにシノと旅をしてきたスペーラだが、こうして門があり検問が敷かれている場所に訪れ、冒険者であることと自らの身分を明かした時に侮蔑の視線を向けられることはあっても、こうして真摯な態度で接されたことがなかったのだ。


 「君がどんな状況で奴隷になったかは分からないが、少なくともこの主を立てているのは分かる。首に印がないから、最初(タグを見る前)は妹に甘い兄かと思ったがな」


 ため息を付きながら彼はそう言う。


 「それと、この街にはお尋ね者専用の宿はない。居心地は悪いだろうが、奴隷は奴隷らしく納屋にとめることをお勧めしたいんだが」


 そこでシノを見れば、シノははっきりを横に首を振る。

 それは当然だ。何故首では手首に『所有印』を刻んだのか、わざわざフードをかぶっていたのか、それを見れば、多くの人を見てきた彼には、主人であるシノか、シノにスペーラを付けた者がディルエバーズ出身であることまで分かる。


 「それは出来ない」

 「だろうな。そこで少々高めなんだが、兵士用の寄宿舎の横にある宿を紹介しよう。この紙を宿舎の受付に持って行ってもらえれば泊まれるから」

 「何でそこまでしてくれるんですか?」

 「そうだな、私の両親はディルエバーズ出身だからかな」


 彼がそう言えば、シノは頷いて彼が差し出す紙を受け取る。

 スペーラはだからなんなんだと話に一切付いていけていない。

 フロウェル出身者が総じて奴隷を家畜以下の存在の物としているように、ディルエバーズ出身者では奴隷を利用価値がある者と考えるのは、育てられた環境で学んでいれば当然と身につく考え方だ。

 シノがフロウェルにおける奴隷のような扱いを受けていたあの屋敷でも、普通に手に入れた奴隷たちは人として最低限の待遇は受けていた。それを知っているからこそ、シノはその紙を受け取ったのだ。

 良心ではなく、利益に重きを置く姿勢を持つのがディルエバーズ出身者。それを明かすことは、金で買えない信用を渡しましょうと言う意味に繋がる。同郷の者にしか通じないが。


 「え、と? シノ様は宜しいのですか?」

 「ん。これでいい」


 シノが良いと言えばそれで良いスペーラは頷く。


 「主任、終わりました。異常なしです」

 「おう。はい、落さないように。今日中にギルドで登録を済ませてくれ」


 わざわざシノにはしゃがんで渡す彼。

 スペーラはそんな彼の様子に好感を抱きながらも、シノに何かあるかもしれないと警戒を緩めない。

 そんなこんなで検問を終え、クロに再び跨ったシノは、彼に言う。


 「一つ」

 「なんだい?」

 「利益にならない物が箱の裏」

 「………ああ、ありがとう。参考にするよ」


 後ろで扉が閉まり、彼の次の者を呼ぶ声がクロの耳に届いた。


 「シノ様、一体どういうことですか?」

 「………」

 「はぁ。答えが得られるのは期待してませんでしたけど、とりあえず冒険者ギルドですね」


 冒険者ギルドが大通りを真っ直ぐ進んだ先にあるのが分かっている分大きな街は楽ですね、なんて言っているスペーラを呆れたように見下ろしたクロだったが、首筋を優しく(シノ)に撫でられてスペーラから視線を外す。

 クロは魔獣だ。シノが意図せず人工的に作り出してしまった魔獣がクロだ。

 魔獣は獣のように思考することができる。判断する力が備わり、自らが持っている魔石に蓄えられた魔力を扱う術を日々学んでいる。

 言葉を解し、行動することぐらいクロには容易い。

 シノと共に居たからこそ知ってしまった知識。それ故に分かってしまった。

 馬に似たあの獣が『所有印』を刻まれていることも。

 その非道な内容も。


 「クロ」


 シノの言葉に、ただ自らを呼ぶ声にクロは慰められる。

 馬は使い潰すべき、人間に劣る生き物は使われるべき。そんな考え方が嫌いなシノが、クロにしてやれることと言えば撫でる事しかない。それをシノが悔いていることもクロは知っている。


 「あ、あれですね。さすが街のギルドだ。大きなぁ………」


 そんな間抜けにも聞こえるスペーラの言葉を聞き流しながら、はるか後ろで同胞の声なき叫びを聞き取ったクロは静かに目を伏せた。


 ―――安らかな永眠(ねむ)りを彼の(もの)


 そう、願うことだけは出来る。

 クロから降りたシノが鼻面を撫で、クロはそれに応えるように鼻を鳴らし大人しく冒険者ギルドの厩舎へと向かう。

 シノとスペーラは、人の出入りがそれなりにあるギルドの入口へと歩を進めた。

シノ、クロ、スペーラの三人旅。

始まって早々ですが、六章はおそらく召喚勇者に視点を当てます。


もう書き方これであってたっけと戦慄中。

ブクマ、評価、感想など励みになります!

連続投稿頑張るぞー!

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