21 学園都市国家スコルダスⅢ
雑談ですこんにちわ。
初めて読んだシリーズ↓
文庫本:十津川警部シリーズ (六歳・漢字は父に教わりながら)
漫 画:風の谷の○ウシカ (五歳・単純に映画からはまった)
単行本:レイル -王国の暗殺者- (十歳・表紙に惹かれて。重かった)
こうやって並べてみると濃い幼少期だなぁと。信用より断罪に性格が傾いたのはこのせいなのかと思わずにはいられない選別。
ジブリの映画を繰り返し見過ぎて今ではすべての台詞と簡単なその時の構図が書けるようになってしまっている不思議。それを受験で生かしなさいと何度担任に言われたか。
そして読むばかりだったせいか、漢字は読めるが書けない。
読めるが書けない。(重要なことなのでもう一度)
さて、本編へ行きましょー
スコルダス以外にも迷宮研究を行っている学者は居るが、国の八割が迷宮であるスコルダスに学者の数は集中しているし、スコルダス以外の学者もスコルダスにある迷宮と他国にある迷宮との違いを念頭に置いて研究・調査しているのだからほとんどがスコルダスの迷宮研究者と言っても違いない。
「どうですかなー? もう私たちも動いていいですかなー」
「学者はもう少し黙って後ろにいてくれ!」
白衣を着て、魔物除けの薬で描かれた円の中で両手を大きく振って叫ぶ男性に、円の外で魔物と剣を交える女性は退治する魔物から目を離さず剣を振り回す。
魔物除けの薬は、効能が弱い物だと魔物が好まない匂いや音を出すものだが、特定の魔物除けになるとその魔物から認識されなくなる、と言う強い効果が得られるようになる。
「あー! そのバグゥの角、必ず持ち帰ってくださいねー!!」
「無茶をおっしゃるッ」
迷宮は出入口に近いところは普通の魔導鉱石でできた洞窟、と言った感じなのだが、進めば進むほど中の様子は大きく変化する。
例えば、今彼らが居る場所は地面から草や樹が生え、整っていない様はまさに樹海と呼ばれるに相応しい地形で、本物の空のように青く染まる天井は、迷宮の壁となっている魔導鉱石の層に溜まった水がどこからか入ってきた地上の光を吸収して届けていると考察されている。
「きゃあ!」
「一次突破ッ、右に飛べ!」
「うっりゃああぁあ!!」
怒涛のように繰り返される斬撃に魔物が怯む様子はない。
魔物の大きさは、向かっていく彼らの数倍以上する。大きい物が小さい物を恐れず煩わしいと言う感情のみを向けるのは当然だ。だからこそ非力な人間が努力を積み上げることで打ち倒すことができる機会に恵まれるのだが。
魔物に弾き飛ばされた者とそれを引きずる仲間をかばうように斬撃を浴びせた者が怪我をして後ろへ下がる頃には、控えていた別の仲間が魔物の前に飛び出す。
そんなことが繰り返されてどのくらい時間が経っただろうか。
満身創痍まで一歩手前と言うところで、魔物はそれなりの色と大きさを持つ魔石に変わっていた。
「白2黒8か………私たちもまだまだなのだな」
黒に近い灰色の球を拾って、彼女は仲間を労いながら魔物除けのある少し離れた基地へと戻る。
魔石が付いた瓶の蓋を開け、その中にその魔石を加え蓋を閉めると、一瞬中の魔石が光り、どんどん小さく黒くなり、蓋の魔石が僅かに明るい灰色になる。
それをみてため息を付いた後、地面に落ちている素材の一つ、切り落とした角を手に持って、護衛対象である研究者たちが寛いでいる天幕の中へと入っていった。
「おかえりー! 角は? 角とれた!?」
「あります。ほら」
「やったぁー!」
白衣の裾を翻しながらその男は自らの研究物が置いてある場所へと駆けて行く。
「すまんなぁ」
「いえ、慣れました」
「あはは………角の回収まで、本当にありがとう。あれは私たちでも素材回収までできないから」
「その分報酬は上乗せしますから大丈夫です」
「うぐ………お手柔らかに」
迷宮で無い場所に出没する魔物だったなら、直に魔石になるわけではない。体表や内臓なんかも全て残り解体作業が必要となるのだが、迷宮内の魔物は死亡とほぼ同時に魔石へと変換されてしまうので、殺す前に素材を切り飛ばさないといけないのだ。
迷宮にしか生息が確認されていない魔物も存在する為、そう言う魔物の革が欲しいと言う依頼をこなしたければ半殺しにした状態で状態異常の魔術をかけ縄でしっかりと縛った後、死なないように生きたまま革を剥ぐのだ。
死体が残らないのは便利だが、跡形もなく消えてしまう為素材を得るには胸糞悪い魔物の断末魔を聞きながらの作業となるのことが多く、多くの探索者は忌避しているし、探索者ギルドでの依頼でも割高な報酬設定となっている。
「ボス、お疲れ様です。さすがですね、バグゥの角をほぼ完全な状態で切り離すなんて」
バグゥとは、この樹海に生息する魔物の中で群を抜いた強さを誇る魔物ある。
正式名はバグゥリッツア。強靭な四肢を持ち、まるで鎧のように硬い体表と斧のように重くたたき切ることに特化した爪、それに人間の胴体より太い木を噛み伐る顎と魔導鉱石にも突き刺さる角を持っている、大変危険な魔物だ。
爪や歯、角は高値で取引されているのが何より危険な魔物であると言うことを示している。
「経験とこの剣のおかげ、かな」
「息子さんがつくられたんですっけ」
「あ、ばかっ」
止める声もむなしく、彼女の口上が始まる。
「ああ。まだ幼いのに、私の為に打ってくれたこの剣が有れば、私はどこまででも行けるだろうさ」
またボスの息子自慢が始まった、とため息交じりに聞き笑いあう仲間たち。
皆楽しそうに話を聞き、そのうちにわずかに、とはいってもこの人数でぎりぎり食べきれるほどの、はぎ取れた肉と果実を焼いて昼食と言う名の宴会へと移っていく。
「ボスの息子さん、まだ十歳でしょー」
「この前探索者に登録したって喜んでたね!」
「鍛冶屋の山人に気に入られているもんな」
「あ、やべ。俺の剣刃こぼれしてる」
彼らが外ではしゃぎながら焼きを始めれば、天幕の中にいた研究員も腹から盛大な音を響かせて死霊系の魔物のようににじり寄ってくる。
今日も生き残ったことに祝杯を上げ、楽器をかき鳴らし、踊り、歌い、笑う。危険な迷宮の中でこんなに騒げるのは、この樹海の主と言われていた一番強い個体を倒した故に、一定の時間は魔物が近寄ってこないのが分かっているから。
稀に寄ってくる魔物も、この場所で一番強い魔物を倒した彼女が睨めば踵を返して去っていく。強い者が一番上で支配する体系が成り立っている迷宮に置いて、その場所で一番強い魔物を倒した彼女たちに近寄ってわざわざ散るような頭の悪い魔物もいないのだ。
「そう言えば、明日か明後日あたりに雨が降ると思う」
「明日か明後日、誤差はありませんか?」
「うーん………もし早まったら今夜から降るかも」
「なら、早めに洞を探した方が良いかもしれません」
迷宮の中に降る雨という現象は、地中にある迷宮の植物にとっては恵みだが、そこにすむ生物にとっては最悪でしかない。
地上に置いて空から降ってくる水滴を雨を言うが、迷宮内では天井にある魔導鉱石が割れてその隙間に溜まっていた水が下に降り注ぐことを雨と呼ぶ。その様は滝に近く、飲み込まれれば水に圧されるか別の場所まで流されるか、稀に空いている縦穴から下へと落ちるか。不幸になり墓石に名前が刻まれる一歩手前まで行くのは避けられない。
それを回避する方法はいくつかあるのだが、大抵の者が選ぶのがそこらに生えている樹木に空いている洞の利用だ。特に面子の中に森人が居れば、精霊の宿る迷宮の樹は傷をつけないことを条件として寝床を提供してくれる。
「この人数が入る洞何てないだろうから、ある程度固まっていられるように近場に利用できる洞が集まっている場所を見つけてきてくれ」
「はい!」
仲間の森人が樹海の中に駆けだしていく様を彼女は見送り、学者に対して木の中それもあまり広くない場所で生活するから風呂敷を広げないで生活して欲しいことと、あまり人数が多くなると洞の中で十分な護衛もできないので何人かで組を作って別れて欲しいことを伝える。もちろん仲間は同じような護衛任務を熟している故に「いつも通り」として伝えていないが。
「そう………でも、今日から? できれば調合とか試してみたい組み合わせがあったんだけど………バグゥの角が折角手に入ったし。洞の中じゃ調合しちゃいけないんだろう?」
角を持ってはしゃいでいた学者の一人が目に見えて落ち込む。
樹を傷つける行為と言うのは、樹が不快に思う匂い重さ、精霊と会話ができる妖精族にしか分からない範囲である為、その学者が何と言おうと覆されないのは分かりきっている。故にもともと予想だと明日か明後日なのだからまだ移動しないで天幕暮らしでいいのではないかと意見を言うのだ。
「私たちはあなた方の護衛として雇われています。あなた方が洞に入らないのに私たちだけ避難するわけには行きません。それをどうか理解してください」
「うー………分かったよ。魔石になっちゃ研究もままならない」
口をとがらせるがとりあえず納得する学者。
彼女は少し心配そうに護衛対象である学者たちの責任者に目配せをして、知らしめることにならないようにしてくれと伝えれば彼からも了承したと言わんばかりの視線が返ってくる。
「洞、見つけました。今から移動を開始します。道中洞での注意事項を話すので、組ごとに分かれて彼らについて行き、それぞれの説明を聞いてください」
実験の続きができないとブツブツ言う学者に同僚が頷きながらも懸命に雨の危険性と洞の有用性を伝えている。
もともと雨が訪れる場合、一階層上へと登るかそもそも予報をあらかじめ聞いて置いて潜らないという選択肢を取るしかなかったのだが、あるパーティーが冒険者ギルドに「妖精族が居れば洞を貸してもらえるんじゃない?」と言う、なかなかに貴族に喧嘩を売る内容で報告したのが洞の使用の始まりと言われている。
妖精族を人間の仲間と認めず魔物の仲間として認識している貴族は未だそれなりに存在する。洞を使えるのは妖精族を邪険にしていない者、つまり妖精族を気に入っている精霊に嫌われていない者だけなので、事実そういう存在は洞を利用することができなかったりする。
迷宮にあるすべてのモノは意思を持ち動き存在していると言う証拠として扱われる理由にもなる洞の貴族嫌いだが、精霊の見える者を害したことのない者であれば必ず雨から守ってくる場所としての憩いの場としても、行き過ぎた者への断罪の場として使われることもある。
「私たちも雨は危険なものとして認識してきたのでここで眼前でそれを視る機会はそうそうありません。今回の雨の規模がどのようなものになるのか分からない以上、私たちには従ってもらいます。よろしいですね?」
「………はい」
不平不満はあるだろうが、雨をその身に受けなければならない間違いだけは犯してくれるなよ、と彼女は心の中で祈る。
さて、ギルドの依頼で面倒くさいと言われている依頼が二種類ある。
一つは植物魔物の討伐と採取。低ランク推奨で、爆発したり、走り出したり、切り落とそうとして来たり、絡め取ろうとして来たり、とにかく危険なものが多いのに報酬料金設定は低いので益にならない為、そう認識されている。
もう一つは、護衛依頼。商人はまだいいが、下級貴族や研究者の護衛依頼は下手なことを言えないと言う面で面倒くさいのだ。貴族がなぜ下級に限定されるかと言うと、中級以上であれば基本的に騎士団やそれぞれに護衛がかならず一人は付いている為、ギルドに護衛依頼が出されてもその本人と関わることなど万が一にもあり得ないのだ。好色だったり物色する目的で近づいてくるような奴もいないわけではないため、稀にはあるかもしれないが地位があればそれなりの益があるので文句はでない。金がなく冒険者になった者も多いため、歓迎するのは違うかもしれないが、喜んでその身をさらす者もいないわけではない。
「雨が降る可能性を考えて、なるべく早く物資を洞へと運んでおくように」
「分かりました」
今回彼女がこの研究者たちの護衛を引き受けた理由は、金払いが良かったのと、剣の切れ味を試したかったから。
彼女の息子は未だ幼いと言うのに、探索者の母親の影響を大いに受けて育ったせいか武器に対して大いに興味を示しているのだ。
十歳になったから探索者として登録をして、ギルドにほど近い鍛冶屋で見習いのような仕事を任せてもらっていると微笑みながら語る息子を愛している彼女にとって、早くまとまった金が欲しいと思わせたのは師匠に当たる人に褒められたからあげると言われて渡された剣を見てから。
素人が作ったにしては切れ味が良過ぎる剣を手にその師匠に会いに行けば、十分な素養がありこのまま埋まらせるのはもったいないから推薦状を書いてやると言われたのだ。
スコルダスの鍛冶・細工師育成専門学院は数ある学園の中でも金が必要になる学園なのだ。使用する機材、鉱石、その全てを学院が賄ってくれる代わりに、それらの使用料金として求められる年間費用が馬鹿みたいに高いのである。
「お母さん、早く戻るからね」
まるで空に浮かぶ星のように煌めく魔導鉱石を見上げて、洞から顔を出す彼女。
ピシリと何かに罅が入るような音がしたのは、感覚的に翌朝早くのことであった。
■□■□■
叫んでも叫んでも終わらない苦痛。
数年前は同じ机の上で同じ飯を食べていた仲間。
白衣を着ている連中が彼の前で、何かを書き連ねている。
その間も途切れなく襲ってくる苦痛苦痛苦痛。
喉は掠れ、すでに意味のある音を出せなくなっている。
それも当然かもしれない。
なんせ既に言葉が十分に話せないように引きちぎられているのだから。
「検体………って言うのも忍びないけどさー、お前が危険思想の持ち主だって認可されちゃったから仕方ないだろ?」
そう言いながらも体に刺さる剣を抜き刺しして流れる血液量を計ってから治癒魔術をかけるのはそれなりに仲の良かった、養成所の寮では同じ部屋で仲の良かった友人。
「体の部位欠損は治る範囲で行われてんだから良かったじゃん。俺がこの研究の発案者で良かったな」
奴隷ならどのくらいの血液が流れたかで意識の混濁や実際に冷たくなるまでを測るのだと苦痛を与えながら言う彼を見て、狂っていると思い、もう止めてくれと懇願する。
「この研究を思いついたのはいいんだけどさ、表ざたになんて出来ねーじゃん。とりあえず俺が担当してるのは失う血液量とそれから起きる死に対して種族や保有魔力量によって違いが出るのか、っていう研究だけど」
カリカリと手元の紙に書き込んだ彼は、剣を抜き取りかけ流しになっているお湯へとその剣を突っ込み丁寧に布で拭く。
「お前のやろうとしてたのってそれの疫病版だろ? しかも表ざたにしようなんて狂ってんじゃねーの?」
今現在狂ってるのはお前の方だろと言いたいが、喉は潰れ舌はない。
ここまでするなら耳も潰して精神的にも崩壊させてほしいと願わないでいられないが、生憎魔術塔には感情に大きく左右される魔術を扱う為、壁や床などに精神を安定させる魔術式が組み込まれ常時発動している為本当の意味で狂うこともできない。
「さて、今日の実験はここまで。俺は別の被験者の実験してくるから、お前は飯でも食わせてもらえよ」
じゃーな、と告げてさっていく友人だったモノを悲鳴をあげる目で見送りながら彼は考える。
なってみないと立場は分からないものだと。
確かにこれを表沙汰にしてしまえば、どんな糾弾を喰らうか分からない。スコルダスの研究機関の金銭面を支える学生からの費用が一気に減るだろう。
堕ちたから、だからこそわかった。
失って初めて、これが引き去れる理由が分かった気がする。
―――この研究が終わって舌を治してもらったら………
そんな希望を抱いてしまえるほど、彼の精神は安定していた。
寸前まで友人に剣で意味もなく刺されていた精神ではない。
そんな趣味は持っていなかったはずだが、もしかしたら目覚めてしまったのかもしれない。
安定した精神は、その思考こそが狂っていて異常だと言うことを認識させることはない。ただ、平常心であることを義務付けられた彼の精神は、日常のように思いを巡らせる。
―――誰の為の益だったかな?
もう彼は思い出せない。
平常心でいようと酷使された精神は、すでに大部分が崩壊し、人形のように決まった言葉だけを繰り返すようになるまであと少し、と言うところだろう。
精神を守るためも激情を封じられた者は狂う。
静かに着々と表に見えず狂っていく。
「今日の課題終わり! あ、あとであいつのとこに寄ろっと」
魔術研究塔は、研究塔の中で、万年人手不足と言われている塔だ。
何せ、数年で研究員として出来上がる代わりに、精神的な異常を起こして再起不能になるのが早いのである。表向きに伝えられている過労や過剰魔力使用による暴走と言う理由は、他の塔の真実を知らない研究員からは魔術塔の呪いと言い伝えられている。
彼らが狂った先にあるのが一体何なのか、それは狂った本人しか知らない真実である。
□■□■□
スペーラの苦しむ声を背中に受けながら、シノは階段を上って契約をした彼の元へと行く。
一応扉を叩けば、すぐに開き中に招き入れられるシノ。
「で、本当にいいんだな」
「………いいから来た」
シノは肩から掛けていたカバンの蓋を外すと、中からいくつか物を出して彼の前に広げる。
「選んで。他はおう相だん」
「おう。分かってるさ」
一応彼の護衛として立っている者が部屋に四人と、小姓が一人いるが、机の上に並べられたそれらを見て訳が分からず首を傾げる。
その殆どが瓶。中身が見えるように透明な瓶だが、中に入っているのは粉であったり液体であったり固形物であったりと様々だ。色も無色透明なものから向こうが透けて見える薄い色であったり、見ただけで臭そうな色のものも存在する。
こんなものの為に主はこんな幼女と契約をしたのかとシノを彼らは訝しげに見るが、見られているシノは平然と相対している彼が選ぶ様を見届けようとしている。その無表情な様にさらに訝しげな視線を集めるのだが。
「これかこれだな………」
「分かった。他は?」
「うーん………」
迷う主に、耐えきれなくなった従者は声をかける。
「すみません。本当にこれらは安全なモノなのですか? その安全性をあなたが保証できるのですか?」
シノに向けられた視線はもっともだ。
もともとシノが来る前に、簡易の契約を結んだからいいものが手に入ると喜んでいた主に水を差すことができず相槌を打っていただけの従者である彼にそれを言う権利はないのだが、やはりシノの幼さを見て水を差さざる得なくなってしまった、というところなのだろう。
それを聞いて、シノは首を傾け従者の主である彼は従者に扮した彼を殺気のこもった目で睨みつける。そこに先まで商品を選んでいた楽しそうな表情は一切見受けられない。
「お前、俺の注文にケチつけんの? お前如きが」
「ひっ」
「これは対等な関係上で結ばれた契約なんだよ。お前の言葉は俺が対等な関係で契約を結んでいた俺を貶すことになることに変わりないんだが、ここまで言わせないとお前は分からないほど馬鹿だったか?」
底冷えするその声に、尻餅をつき、注がれる視線圧されるように後ろへと後ずさる。
表に出てくることなんてほとんどなく、裏で指揮している姿が目の裏に焼き付いている彼らにとって、これは当然すぎる結果で、動こうとさえしなかった。圧されていて考える暇もなく自己防衛に入った、と言うのが正しいのかもしれないが。
「選ばないなら、片づける」
だから、そう抜き身のナイフを彼と従者の視線の間に突き刺したシノの行動に対する危険行動に反応できなかった。
「おう、それはすまん。もう少し選ばせてくれ」
それに、急に雰囲気を変えた彼の様子にも気圧された。
普段の彼は、気に入らない者は徹底的に潰す。護衛などつけているが、それは本来彼に対する護衛ではなく、彼と相対する者の安全を守るためも護衛である。従者でさえ、彼の変わりやすい機嫌を保つ為のモノでしかない。
だと言うのに、シノに対する彼の対応は、あり得ないほどしっかりとしたものだった。年齢も性別も関係なく実力と結果のみが人生を左右する裏に置いて、自らと対等と彼が認め朗らかに話をするのは片手で数えられる程度の人数しかいない。
彼が認める理由は様々だが、少なくとも実力と結果があり、それなりの素養と理解力、付き合っていく上での益がないと認めない。そこにさらに付加価値が付き彼が認めるのだが、こんな幼い子供がそう言うモノを持っているとは思えないのだ。
「これはいくらだ?」
「同量で、銀貨80枚」
「安いな」
安くない。
決して拳程度の大きさの瓶の中身が銀貨80枚は安くない。
いったい中身は何なのだと喉を鳴らす護衛の面々。
透明な瓶の中に見えるのは細く赤黒く、黒や白の点が付いているよく分からないもの。まるで木の枝だ。
「し食する?」
「お、いいのか」
「沢山ある」
頷くシノに、彼は蓋を開けてその中のものの匂いを嗅ぐ。
少ししてふわっと香ってきた香りに、護衛たちは唾を飲み込んだ。
ものすごく酒が欲しい。飯が食べたい。
そんな思想に絡め取られる。
「ふっ。お前らも食ってみるか? 極上の味だぜ」
「いっぱいあるから安い」
シノはカバンから酒を取り出し、彼は自らのコップをだし、護衛たちに食べて飲みたければ自分のをもってこいと言い、小さい宴会が始まる。
彼らはその味を知って、金額に頷き、シノに畏怖を抱く。
「それじゃ、コレも頼むぜ」
「わかった」
素面で楽しそうな彼と交渉するシノは、最期まで表情を変えることなく物を積み上げていく。
積み上げていくモノと積みあがっていく金に、護衛たちは酒を飲み逃避する。
あり得ないと。あり得てはいけないと。
「この町に居ればいいじゃないか。一生囲ってやるぜ」
「要らない」
この町に彼に逆らえる存在なんて、彼が情を出す人間なんていなかったから、彼らはシノが部屋を出ていく時には入ってきた時とは違い、畏怖と尊敬が交じった、自らの主に向ける視線になっていることに、彼に指摘されているまで気が付かなかった。
これで四章終了じゃーい!
ま、各国に関してはこれから話が出てくるかどうかさえ決定していない為なんとも言えないので記憶の片隅にでも置いておいてもらえれば。
スコルダス編が終了して閑話………閑話、マジ何書こう………
五章はシノSIDEのお話です。
やっといろいろ個人名が………個人名がががが
さて、また次回、お会いしましょう!
あ、またブクマが二件増えてました。ありがとうございます(๑˃̵ᴗ˂̵)و




