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魔王選定  作者: 華宵 朔灼
第四章 状況整理
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18 神聖帝国フロウェルⅢ

戦闘シーンとか、あの波紋法を使う一族の感じに臨場感を出せればいいんですがね。「あ、ありのまま今起こったことを話すぜ!」これは三期のネタか。

朝鳶の鳴き声と羽音で起きることが多い最近なんですが、昨日窓を閉め忘れたんですよ。

朝起きたら壁に虫がたーーーーーっくさん付いてて固まりました。

もしかして外の壁にこの虫らが張り付いているから鳶さん起こしに来てくれんの?とか思いながら殺虫剤をまき散らしました。


さて、本編の開始です。

 フロウェル以外では治療院と呼ばれている教会の裏に隣接されている孤児院へ入る子供の事情は様々だ。

 一番多いのは捨て子。教会の前に捨てられ、親元が分からない子たち。

 次に多いのは、親が育てられないと教会に相談し、親元を離れる子。金銭的な問題で子供一人養うことができない場合、いくらかのお布施を教会に毎年収めることで代わりに育ててもらう、という制度。ただし子供に親だと伝えるのは厳禁とされ、教会の行事に参加することで我が子の成長を見守ることができる。


 「へー教会ではこんなことしてたんですかー」


 もう一つ。

 フロウェルでのみ行われていることがある。

 教会が設置されていない村などを訪れ、簡易治療院として治療院でのと同じ仕事をこなしながら子供の買い付けを行うのだ。建前としては、先がない子供たちの将来への投資だと言うが、これで買われるのは見目麗しい子供だけだ。

 将来小間使いにしたりと、巡礼として回った者たちが扱いやすい教会奴隷を仕入れる手段として、長年使われている。


 「死人に口なし」

 「分かってますってーでもほら、公式には死亡しててもこうして俺生きてますしー? 滑らないように気を付けますよ」


 無表情の女性の前に居るのは、なんとも明るい様子の青年。

 向き合う二人は完全に逆だ。


 「滑った先は針山」

 「はいはい。んで、俺の任務ですけどある意味旅人になれってことですかー?」


 机の上に広がった書類や本などを手に取って見つめ、また戻して別のものを取る青年。

 各国の歴史書から、現在の高官たちの名前、その土地の習慣、食べられる野草や簡単に相手を殺せる毒草の一覧まで、机の上にある物の種類は多岐に及んでいる。

 その中で一番青年が興味を持ったのは、持ち出し禁止と印が押されている教会の研究機関の研究目録であったが、それがあるのは机の上ではなく棚にあるので、青年が手に取って中を見ることはなかった。


 「他国の異常の調査」

 「ぐるぐる廻れってことですねー………あ、冒険者登録とか、各地の教会で恵んでもらうのはいいですかね」


 その問いにゆっくりと首を振る女性。

 笑顔の青年は、ヒクッと頬を引きつらせる。


 「………俺、死亡したから手持ちとか全くないんですけど? 協会関連の登録も抹消しましたし、金稼がないと俺生きてけないですよ」

 「なんとかして」

 「何とかしてくれるんじゃないか一瞬期待した俺が馬鹿でしたわー。犯罪に手を染めることに関してはばれなければいいんですよねー」

 「ばれれば処刑」

 「ですよねー………ま、旅の準備でもしてきますわ」


 そう言って、青年は部屋を出て行こうと扉に手をかける。

 かけたのだが、それ以上青年は動かない。


 「なんですかー?」

 「裏切りは殺害対象」

 「分かってますよ。ほら、服が切れちゃうんで、手元の暗器ひっこめてください」

 「………遺品、回収」

 「へ? のわっ」


 背中への重圧がなくなったこで振り返った青年は、目の前で一閃される暗器がわずかに見え、仰け反った。


 「え? あ! 俺の髪っ」

 「遺品。気にするな」

 「えー………せっかく伸ばしてたのに………」


 せっかく紐で結んで腰元まで伸ばしてあった青年の長かった髪は、肩口でバッサリと切られてしまった。

 未練がましく青年は上司の女性の手元に収まっている自分の紙をみるが、諦めが付いたのかため息ひとつでその場を離れることにする。


 「んじゃ、いろいろと用事済ませて、今夜中にでも出発しますねー」


 またいつか会いましょう、とひらひら手を振りながら去って行った青年の後ろ姿を見送った女性は、その髪を三つの封筒に分けて入れる。

 一つは、青年の学生時代の親友だったらしいフロウェルの宰相宛ての封筒。一つは教会の研究員宛ての封筒。一つは猊下宛ての封筒。

 それを持って部屋を出たところで、まだ新人らしい正義に瞳を輝かせる青年に、女性は迎えられた。


 「あ、あの! 僕、この教会に正式に配属されました者です! よろしくお願いします!!」


 その様子を何の感情もなく見つめていた女性は一度目を閉じると、まるで雰囲気を一変して微笑む。


 「ようこそ聖地へ。これから教会で様々なことを学ぶでしょう。それを自らの経験にできるように、精一杯努力するのですよ」

 「はい!」


 おっとりとほほ笑み、なめらかにしゃべり、柔和な雰囲気を醸し出す女性は、はっきり言って別人だった。

 目の前で全く顔が同じ人間と入れ替わったのだと言われても納得してしまいそうな、そんな擬態を女性は使いこなしていた。


 「あ、あの。それで、猊下にもあいさつに行こうと思ったんですけど………部屋への行き方が分からなくて。できれば案内してもらうことなど可能ですか?」

 「いいですよ。私もこれから猊下に会う用事があったのです。そのついでに、猊下の元まで送りましょう」


 持っている封筒はなんだとか、なんで教会の内部がこんな迷路のようになっているのかなど青年は閉まらぬ口を動かし続けたが、女性は静かに聞き、その全てを曖昧に流していた。

 やっとたどり着いた大きな扉を二度叩き、合間を開けてまた二度叩いて、女性は入室の許可を室内に問いかける。


 「入りたまえ」

 「失礼します」

 「し、失礼しますっ!」


 中に居た猊下は、入ってきた青年を見て優しそうな微笑みを向け、青年が挨拶をして一通り話し終わるのを聞き届け、去るまで笑顔を保っていた。


 「そう言えば、扉を叩く回数って決まりがあるんですか?」

 「普通は二回ですよ。しかし、上の方に留まるようになると、その人がどんな立場なのかを一瞬で分かるように決まった回数を教えられるのです」

 「へー」

 「さて、新人君もまだ今日やるべきことがあるだろう。それを済ませなさい」

 「はい! では、失礼します」


 ぺこっと頭を下げて退出した青年。

 それを見送った後の猊下の額には青筋が浮かんでいた。


 「あれは誰の推薦で中央教会に入ってきたのか調べなさい」

 「はい………その後は」

 「いつも通りだ。あれは、要らない」

 「分かりました。こちら、新人の髪です」

 「暗部のか………あれと似てるなんてことはないだろうな」

 「いえ、引き際を心得ている優秀な人材です」

 「そうか。これは預かろう」

 「はい、では失礼します。御心はここに」


 猊下は満足そうに頷くと、椅子に深く腰掛けた。

 数日後、教会の近くの噴水が真っ赤に染めあがる。

 その中には、中央教会に配属されたばかりの青年がぷかぷかと浮かんでいたらしい。


 □■□■□


 その場所は、清廉と言う言葉がとても似あう場所だ。

 祭壇には唯一神を称える文様が浮かび、巨大な本の石像が置いてある。

 天窓からは燦々と光が降り注ぎ、その下にあるはめ込みの窓にはめ込まれた色とりどりのガラスが、信者たちが座ることになるのだろう椅子を光り輝かせている。


 「神官様、町の子供たちの保護は終了しました」

 「そうですか………では、いずれ来るかもしれない怪物についての説明を始めるよう、各ギルド長に伝えなさい」

 「はい。行ってまいります」


 教会の本部は確かに聖都にあるが、教会そのものがあるのは本山で、その行動方針を決めているのは総会と呼ばれる連中だ。教会本部の一番上にいる猊下は、確かに教会の顔だが、その実は総会でも下に位置する存在だ。

 さらに言えば、神官とは総会に名を連ねる中位程度の権力者だ。


 「さて、私としては、早々に神を降ろしたいのですが」

 「それは困りますね。本山の下の町だからとは言え、完全に統制がとれているわけではありませんから、うかつな発言をすると、その身が危うくなりますよ」

 「これはこれは。ご忠告、痛み入ります」


 同じような服を着た、もう一人の神官が祭壇で祈りをささげている神官の元へと歩み寄る。

 祈りを捧げている神官の髪は、天窓から降り注ぐ光に反射してさらに輝き、それに歩み寄る神官は清廉さを色にしたように輝いている。

 信者が教会を訪れると、この二人を見て天使だと言う。

 実際に見られることのない伝承でのみ語り継がれている天使だが、その姿は人間のようで、背中からは純白の光を放ち輝く翼があり、目を合わせることができない美貌をもち、紡がれる言葉は楽器を鳴らしているかのように荘厳なのだとか。


 「今、本部で神卸し(・・)の巫女が育成されている頃ですよ」

 「人のみで神を降ろそうとする所業、なんとも嘆かわしい」

 「それも未来の為ですよ」


 神に祈りをささげていた神官を一人置いて、遅れてきたもう一人は外へと出ていく。


 「まったく、人間は傲慢ですね。卸そうなんて」


 一際強く差し込んだ光の下で立ち上がる神官の背には、その光に負けないくらい輝く純白の羽があった。


 □■□■□


 スペーラは一人、アッセルに付き合って仕事をこなしていた。

 何でも家庭の事情で冒険者として登録もできず、姿から察するに教会関係者なはずなのに教会に頼ることもできないらしい。そのため、善意の協力者としてスペーラが受けたギルドの仕事を手伝ってもらい、半額を渡す、ということになった。

 どこまでも付いてきそうなアッセルに嫌気がさしたシノがスペーラを生贄に差し出した、というのが真実だが。


 「んで、スペーラさん、俺、武器ないけど」

 「………次はギルドで適当なものを貸してもらいましょうか」

 「ギルドでの武器貸出って、ひとり一つだろ? 二つ名が付くようになったら主専攻武器と副専攻武器が借りられるらしいけど」


 スペーラがギルドで受けて来た依頼は、どんなランクでも挑戦可能な魔物の間引きの依頼。

 本来ギルドに登録していない者がギルドの依頼をこなすのは禁止されている。野良パーティーを作って後で依頼で得た料金を折半する、なんてことも行われているが本来は禁止。

 今回に関しては仕方ないと、ばれないようにスペーラは立ち回るつもりでいるが。


 「随分詳しいじゃないですか。きっと一人でも生きていけますよ」

 「待って! 商業ギルドに持って行くのとじゃ買い取り価格が大幅に変わるんだ! 頼むよー付いて行かせてくれよー」


 男の足に男がすがりついて鳴き声をだすあたり、町中だったら騎士にしょっ引かれただろう。

 すでに森の中で魔物を探して歩き回っていたので、そうならないのが残念だとスペーラは深い溜息をつく。最近ため息ばかりついている気がして、さらにため息が出そうになるのを飲み込んで、腰元に付けている剣をアッセルに投げ渡す。


 「ん?」

 「それ、使えばいいですよ」

 「え。でもスペーラさん、武器は?」

 「この拳がありますから」

 「俺の方が強そうだけど………」


 白くて細い、男と名乗るには少々拙いスペーラの体格は、男として見るには細いがそれでも鍛えられているアッセルと比べると何とも頼りなく見えてしまう。

 どう見ても魔術師系で、物理的な武器の使用をするような体格ではない。


 「もともと拳強化週間でしたし」

 「は?」

 「いえ、なんでも。そろそろ一匹目が来るようですよ」


 荒事になれていないような体格ながらもきっちりと荒事用の構えを取ったスペーラに遅れるように、アッセルは剣を鞘から抜き放ち構える。


 「ちょ、この剣何!? 魔剣だったの!?!?」

 「あ、そうですよ」


 スペーラは簡単に答えるが、魔剣は早々手に入らない。

 魔術的な要素を付与、使用できる剣は魔法剣と言い、既に廃れてしまって長い古代武器で稀に迷宮や打ち捨てられた神殿などにあるがそれだけだ。魔剣は、上位魔物の素材を使って作られた魔法剣の下位互換のような武器で、その威力などは劣るものの普通の剣よりも魔力を簡単に乗せることができる分切れ味が普通の物とは大きく異なる。


 「にしてもすんごい量吸い取られるんだけど!?」

 「あーでもそれ、骨剣って言って、そこまで鋭いわけではない屑品なんです」

 「はい? え、それ壊れるんじゃ」

 「壊れないように使い続けるのが魔術上達の基本だそうです。師匠が言ってました」


 ちなみにこの骨剣、以前シノがカゾスで倒した雪豹の骨であったりする。どうしても保有魔力を増やしたいとヴァナグに願い出たスペーラの為にと打ってもらった特注品である。

 その特性は、普通の数倍の速さで消失していく魔力だろうか。

 良い武器などではない。武器としては最悪の性能である。


 「君の師匠は根性論を推す人なのかな!?」

 「どうですかね。多くの女性に囲まれていましたよ」

 「なん………だと………」


 迫ってきた魔物は容赦なくスペーラ達に牙をむく。

 怪我をしながらも魔力をまとわせた拳でその魔物の腹を一突きし絶命させるスペーラ。負けていられないとアッセルも踏み出すが、いつもより急速になくなって行く魔力に上手く体が動かせず何度か空振りをして仕留める。


 「一撃で仕留めないと上手く行かないですよ」

 「しっとるわ! でも無理だろコレじゃ」


 シノだったら額に一突きで魔物たちの死体を量産すると思います、何てまだ知り合ったばかりのアッセルに言えるわけがない。


 「まぁ、慣れだと思います」

 「確かになっ!」


 大振りで仕留める様子に、慣れるのはまだまだ先になるのではないかと考えるスペーラ。

 スペーラの中での基準はヴァナグ。

 多くのマメロに引けを取らず戦ったヴァナグや、盗賊の首魁と切り結んだシノを見ているせいで、スペーラの中での剣術というくくりはかなり狭まっている。無駄に実力者に囲まれた弊害、と言ってもいいかもしれない。

 だからこそ、アッセルの剣が普通よりも澄んでいるのも、ただ単に剣を教わって、それなりの修行をしているのだろう、としか思わなかった。

 アッセルの方も、何かしらの事情を組んでそこら辺を黙ってくれているのだろうと、通じていないが通じているそんな雰囲気が森の中に漂っている。


 「な、なぁ。あるヤツのランクを知りたいんだが」

 「すみません、冒険者個人の情報の開示はしておりません。本人に聞いてください」

 「そ、そうだよな」


 同じように仕事を受けていた冒険者数名から、スペーラはランク詐称者としてこの町に滞在している冒険者たちに覚えられた。

 拳で戦う様も、鈍い光を放つ剣で戦う様も、そのどちらとも鬼気迫る実力者のものであった、と。


 「素材、売りに来た」

 「あ、はい。シノさんですね。裏へどうぞ」


 そんなことを言われてもギルドとしては、さらに幼く仕方なく詐称している子供が居るのだから気にも留まらなかったが。

 シノがクロと共に採ってくるのは植物魔物。

 まだランクを上げられないシノは大手を振って魔物討伐はできない。

 だからこそ、討伐推奨と、大した金にもならない植物魔物の討伐をするしかシノができる仕事はないのだ。


 「えっと、ロマフェが異常に多い気がするんですが………」

 「いっぱいいた」

 「えーと」

 「沢山いた」


 そうではなくて、と心の中で突っ込んだ職員は、とりあえず頷いて買い取り額を出していく。

 こうしてこの町での生活は割と順調に過ごせていた。

 一月もすれば町に馴染む。

 町に馴染めば顔を覚えられる。

 またシノとスペーラは町を出る。


 「行先が反対方向なら仕方ないな。またいつか会おうぜ!」

 「おう。気をつけろよ」

 「シノちゃんも、スペーラに迷惑かけないようにな」

 「ん」


 シノの頭をぐしゃぐしゃと言う効果音が出そうなくらい笑顔で撫でているアッセルの横では、スペーラがなんとも言えないと苦笑いをしている。

 結局最終日まで、スペーラが奴隷だと言うことはばれなかった。なぜか友人のようになってしまい、毎度連れ出され、そこ言葉づかいもかなり粗雑なモノになっていた。

 そして、シノの実力に最後までアッセルは気が付かなかった。


 「それじゃーなー!」

 「またなー!!」

 「………」


 暑苦しく手を振っているアッセルを置いてシノたちは町を出た。

 その翌日、その町の至る所にシノを探しているという張り紙が出されるのだった。

戦闘シーンをごっそり削る。

伏線ってどうやって張るんですかね?

「あの時の話はここにつながるのか!」なんて言うのが伏線なら、ある程度撒いたかな?


フロゥエル編はここまで。次はスコルダス編です。

連日投稿はここまでかな? また時間が作れれば連日投稿に戻します。

また次回お会いしましょう!

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