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魔王選定  作者: 華宵 朔灼
第四章 状況整理
88/113

17 神聖帝国フロウェルⅡ

なんだかどんどん増えている~♪増えている~♪

ブクマが増えるのこーわいなー♪こーわいなー………

(BGM:と○りゃんせ)

評価してくれた方がまた一人増えて舞い上がっていたら友人蠅叩き宜しく叩きのめされました。


さて、今回は前回と比べると少し長いかも?

この各国編は明らかに視点移動が多いんですよね……

まぁ、ここまで読んで下さっている人に言う言葉ではないですね。

本編へどうぞー!

 フロウェルの貴族と云う者たちは総じて人との交流(社交)を大切にしている反面、人との距離が遠い。

 高位の爵位を貰ってる者こそ、その距離は遠くなる。

 同程度の爵位の者同士で組むことが多いのは、情報と交流する利益を考慮しての、利害関係でしかない。

 信用は金で買えるモノでしかないのだ。


 「来ました」

 「いらっしゃい」


 使用人のほとんどが奴隷。

 そんな家に住んでいるのが財務部の長である。

 にこやかな表情と打って変わって、家では奴隷相手に憂さ晴らしをしているのではないかと言う噂が貴族の間で実しや


かにささやかれている。本人が否定しないのが拍車をかけているのだが、フロウェルの貴族らしくてその噂気に入ってる


んだ、とは本人が漏らした本心である。


 「じゃああなた。私は庭で奥様と居るので、帰る時には必ず呼んで下さいね」

 「うん、必ず呼ぶから。いってらっしゃい、楽しんでくるんだよ」


 外出用のドレスをはためかせて、家に居るよりもウキウキしている様子がありありとわかる妻を温かい目で見送りなが


ら、宰相はこの家の主に目当ての部屋、財務部の長の執務室へと案内してもらう。


 「奥方との仲が良好で何より」

 「そりゃな。今じゃ、結婚して良かったって思ってるよ」


 結婚は縁作りと、次代教育の手段でしかない。貴族として生まれると、いつの間にかそう理解してしまう。

 家の名を背負うのは当主で、そこに輿入れする者は当主の手となり足となるが、その心は元いた場所に流れてしまう。


結婚に対する幻想なんてものは、幼い頃に令嬢が心に抱くものであり、社交に出るようになれば現実を嫌でも知ることに


なる。


 「いやー、ホント。うちの奥さんとお前のは仲良すぎて困る位だな」

 「まあ、な。………そのお蔭で公然と密会ができるのは利点だがな」


 仲が良すぎて困る。

 それは夫同士、妻同士に言える言葉である。

 以前、彼らの夫婦仲はそこまでよくなかった。

 しかし、家族となったからにはお互い話さなければ通じない。義務として会話をしていたのだが、隠したい情報を避け


て話すと、必然的に学生時代からの親友であるお互いの話になってしまっていたのだ。

 それを毎度聞かされる妻たちは、閉鎖的な貴族社会だからこそ考えてしまった。


 ―――私との結婚が不満で、別の女の話をして、私の方から別れ話を切り出させようとしてる?


 もともと計算高いと有名な二人だった為、そんな結論に達するのもそう遅くはなかった。

 妻に求めるのは、横に居てつり合う華であり続け、問題を起こさないことだけ。分かっていても、政略結婚の駒でしか


ないと理解していても、夫が横恋慕している相手がどうしても許せなかった。


 ―――私に、その相手、紹介してくださらない?


 それぞれ言われた時は違ったけれども、別に政敵の家族ではないから会わせても問題ないだろうと二人は話し合い、夫


婦揃ってあった瞬間、ご令嬢らしい笑顔を顔に張り付けた妻二人はお互いに言い合った。


 ―――あなたが私の夫の不義の相手かしら?


 結局それを聞いた夫が爆笑して、お互いの家を行きかうまで仲良くなったのだから良かったが、政略結婚だとしてもそ


こに愛は育まれているのだと確信できたのだから、それは十分な益であっただろう。


 「そう言えば、あいつからの連絡は?」

 「この前死んだって教会から連絡来たけど、お前んとこ来てないのか」

 「来てないねー。宰相職だからだろ? 財務は基本的に教会と関係ないし」


 いつもより何倍も砕けた物言いで言い合う二人は、執務室の窓から下を見下ろす。

 そこにははしたなくひざ上まで裾をたくし上げた二人のもう若いとは言えない妻たちが庭に創られた小川で水遊びに興


じている。わずかに不快そうに眉をひそめているのは、宰相家より連れてきた使用人だろう。


 「ま、公式的には死んだことになってるってことはいい具合に潜り込めたんだろう」

 「それは確かだが………逆に言うといつ連絡が途絶えてもおかしくないってことだろ」


 窓から身を話した二人は長椅子に向かい合うように座る。

 深く腰掛けて、持ってきた執務用の書類を持ち運ぶために作られたカバンの蓋を開けてなかから数枚の書類を取り出す



 「これ、あいつが死んだって言う証明書。ご丁寧に髪の毛が入ってた」

 「平民には破格の対応だな」


 羊皮紙に書かれているのは、死亡証明と言うべきものだろう。いつどこで、なぜ死んだのか。教会に入った者が死ぬ場


合、外部にその死が伝えられることはまずない。教会関係者になったからには、産んでくれた親ではなく、この世に生を


受けさせてくださった神の子の元に入り、今までの関係を全て払拭するのが義務付けられている。

 何かしらの事件に巻き込まれて死亡しても、長い闘病の末に病魔に侵されて死亡しても、その報せが家族の元に届くこ


とはない。

 もちろん例外はある。もともと貴族であったりそれなりの地位についている者だと、前者ならば家族の元に報せが行き


葬儀を出すかどうかを聞いてくるし、後者ならばそれぞれの教会に神の元へと召されたのだとお触れが回ることになる。


 「髪の毛は本物か?」

 「流石にそこまでは分からないから、フィデリントの方に検査を依頼してある。あそこの魔道具の中に記憶を引き出す


ものがあったからな」

 「フィデリントなら信用おけるな………うちとそこまで仲がいいわけでもないし」

 「それが解消してくれたらって思うんだけどなー」

 「無理だろうな。もともと教会と反発してできた国だし」


 体の一部や、その人が身に着けている物から記憶を抽出する魔道具がフィデリントにはある。

 向こうの軍部にあるものなので、普通は頼めないし、抽出される記憶も、一番印象に残った一場面が設置した紙に浮か


び上がるというだけなので、そこまで精密な結果が得られるわけでもない。


 「で? 今どこだって?」

 「最近やっと国境付近まで来たって言ってた。まったく、国と提携してないから冒険者ギルドは使いやすいよな」


 学園都市スコルダスに行っていたこの二人。

 それと今は教会に所属していて公式には死亡したことになっているもう一人は、スコルダスで友人となり、国を憂う仲


間だ。


 「とりあえず教会が何で子供を買い取ってるのか分からない分、あいつの働きに期待するしかないだろうな」


 現在教会の暗部に居るだろう友人を思ってため息をつく。

 最近子供たちの様子がおかしいと言うのは、噂でよく話されている。

 ここ(フロウェル)から一番遠い国、ディルエバーズで実施されている情緒不安定な子供を処刑する、というのも聞


いているし、隣国であるフィデリントの半森人、ファベリズが子供たちを保護していると言うのも聞いている。

 中枢にいるからこそ聞こえる話だが、それらがここまで噂として伝わるのはおかしい。

 フロウェルでも同じようなことが起きているのだと、考える方が自然だろう。


 「ま、待つしかないな」

 「………そうそう、話は変わるんだが」

 「ん?」

 「この前君の奥方から子供が欲しいんだけど、どうやったら気を引けますかって文が届いてさ」

 「ぶっ」


 優雅に茶を飲んでいた宰相が思い出したかのように言った言葉に、口の中にあったものを吹き出す財務部長


 「とりあえず、妻が夜着ている服を売ってる店への紹介状を渡したんだけど………どうだった?」

 「おーまーえーかー!!」

 「楽しい夜、過ごせたかい?」

 「余計なお世話だ!」


 いつものすまし顔からは見られない真っ赤な顔に、宰相は頷く。

 一応間違った対応ではなかったのだと。


 「って言うか、お前、奥方にいつもあんな服着せてんのか」

 「いや、妻が勝手に買ってくるんだ」


 宰相が奥方に相談して紹介状を渡したのは、普通の結構きわどい下着が売っているお店。全て仕立てで作る貴族にして


はあるまじき新品が吊るしで売られている店だが、そこの店員が優秀なのか、綺麗な布を渡せばそれで仕立ててくれたり


もするのだ。

 宰相の奥方が重宝している店であり、その店に少なからず投資しているからこそできる離れ業だが。


 「えっ」

 「え?」

 「俺、男として初めて、襲われるってこういうことなんだって理解したけど………あんなこと、お前毎回やってんの?



 しかし双方に食い違いが見られる。


 「は?」

 「うん?」

 「貴重な体験、おめでとう?」

 「ありがとう、じゃなくて。なんであんな店紹介するかな!」


 ごく一般的な、割といい布でいいデザインの者を卸してくれる新進気鋭な下着屋としか思っていない宰相は、財務部長


を憐憫を称えた眼で見つめる。

 たかが下着で顔を真っ赤にして奥方との行為に及べず、奥方に先導してもらったのかと。


 「普通の下着屋だろ」

 「あれが普通かよ!?」


 意見の食い違いが発生するのは当然だ。

 紹介状を用意したのは確かに宰相だが、そこに一言加えて届けさせたのは奥方なのだ。


 ―――彼女、夫との仲に悩んでいるみたい。もう目に入るのも辛い一撃頼むわよ


 そんな言葉が紹介状に添えられていたら。

 しかもやってきたのがお淑やかそうな本物の貴族令嬢で、夫との閨について悩んでいると顔を赤くしながら相談される


下着屋が、少々過激な方面の下着を紹介するのは当然だったのかもしれない。

 その下着屋を経営している夫婦の弟が経営しているお店が、虐げることを売りにする店を経営していて、ちょうど来て


いた彼がそれを教えてしまったのも、何か運命のようなものがあったのだろう。


 「普通だと思うけどなぁ………いつもあそこの下着つけてるし」

 「え!?」

 「ん? 男性用の下着も売ってるぞ」

 「………ものすごく俺、お前の友人を辞めたくなった」

 「はぁ?」


 本気で普通の下着を買い求めている宰相夫妻と、過激な方面に行ってしまった財務部長夫妻。

 財務部長が開け放ったらなかなか閉めることのできない扉を開けるか否かは、彼の奥方のその細腕にかかっている。


 ■□■□■


 その部屋の主は、なんとも恰幅が良かった。


 「孤児院はどのくらい整備されている」

 「今の所各街と町には設置されていますが、村までは届かないので巡礼と称して子供の購入をしています」

 「うむ」


 部屋がある場所は高いのだと、窓から見下ろせる町の様子で分かる。

 部屋を出た先の窓からは王宮が見えるのだから、貴族街であることも確かだ。


 「本当にこんなに子供を囲う必要があるんでしょうか?」

 「ある。これ以上は規定に触れるため何も言えぬ。お前は神から与えられた仕事をよく熟せ」

 「はい。御心はここに」


 恰幅のいい男は、ある程度の報告を得ると、その者を退出させる。

 部屋に残ったのは、二つの杯と、書類の束だけ。

 部屋の窓から町を笑顔で見下ろしながら。まるで誰かがいきなり入ってきたら町の行く末を憂いている聖職者に見える


ように計算された笑顔で窓の外に広がる聖都の様子を眺めながら立っている男は、小さな声で呟くように言った。


 「居るか?」


 それに対する返事はなかったが、二度、戸を叩くような音が確かに届いた。


 「首尾は」


 今度の音は一度。


 「陛下は」


 今度は三度。


 「ならば………新人は?」


 一度叩いた音の後で、特徴的なリズムで四度叩かれる。

 それらの交信に納得したように頷いたこの部屋の主は、そのまま窓を離れて椅子へと深く腰掛ける。


 「後の報告、楽しみにしている」


 一度、叩かれた。


 「すみません、猊下、居られますでしょうか?」

 「ああ。入りたまえ」

 「失礼いたします」


 今度部屋に入ってきたのは、簡素な服に身を包んだ、まだ年若いが目に生気がない青年。


 「今度の会議はどうだった」

 「はい。特に変わりはありませんでした」

 「そうか」

 「しかし、宰相殿と財務部長殿が、少々子供の購入に気が付いている節が見受けられました」

 「ふむ………あれらは国を第一に考えている分、大丈夫だ。もしも脅してくるようなら国を質としてしまえばどうとで


もなる」


 猊下は、その話を聞きながら口を滑らせる。

 普通ならそんなことしないだろう。危険思想の持ち主だとされ、いくら教会関係者だとしても騎士団に捕まりかねない


 しかし、それを覆す要因が生気のない目をしている青年の帯に刻まれている。教会関係者、しかも上層部の者しか分か


らないその模様は、教会が購入した奴隷であることを示している。

 商品としての一定の条件があったディルエバースとは違って、フロウェルでは奴隷は人間として認められていない。奴


隷は人間ではないので教義を受けることはできないし、そうでなくても奴隷には人間と同じような待遇は認められていな


い。


 「他には、軍部で噂の詮索と、子供失踪に関する報告書の提示が求められました」

 「噂とは、町が消えるだとかの話か?」

 「はい」

 「なら気にする必要はない」

 「はい、わかりました。報告は以上です」

 「通常の業務に戻りなさい」

 「はい。御心はここに」


 そう言って退出する青年。

 それと立ち代わるように一人の女性が入ってくる。


 「猊下ぁー。お久しぶりぃ」

 「また娼婦みたいな恰好をして、恥ずかしくはないのかね」


 眉をひそめてみるが、その恰好に変化はない。

 ひらひらとした服を身にまとい、張りのある胸を尻を強調した服装。

 腰あたりまで見えてしまいそうな切れ込みのおかげで動き易そうではあるが、動いたらめくれてあらぬ場所が見えてし


まいそうなそんな服。もう服と言うより布をまとっているのではないかと思うほどの恰好である。 


 「情報を集めるにはこの格好の方が良いのよぉー。お金も情報も体一つで稼げるんだからいいじゃない」


 くるりとその場で舞えば、見えてはならぬとしている者が見えた気がして、ひとつため息を落とす猊下。


 「教会の者だとばれてくれるなよ」

 「分かってるわぁー。孤児院出身の私だもの、教会につぶれてもらっては困るわぁ………弟妹たちがまだいるものぉ」


 そして、彼女がその布服を止めている帯にも、確かに奴隷であることを示す模様が描かれている。

 従事する代わりに教会の孤児院で預かっている、いまだ増え続ける弟妹たちの人生を買う。フロウェルでは至極真っ当


な交渉術の一つ。奴隷身分を奴隷となることで買う。

 そんなことしなくても、フロウェルの孤児たちは一定の年齢を超え教会に残ることを選択した時点で奴隷の烙印を押さ


れるのだが、そんなこと、彼女が知るわけもない。


 「それと、新しい仕事だ」

 「はぁーい! どこへ行けばいいのぉ?」

 「行くのではなくてだな、礼儀を仕込むから、軍部長を籠絡してくれ」

 「難易度が間違ってるわぁ………先輩にお願いした方が成功すると思うのだけど………」


 彼女のような者は割と沢山いる。

 そのうちの一人が、同じような立場の者が先輩となり、新しく来た者に教えていく。ある意味では師匠と言ってもおか


しくない者が一人一人に存在するのだ。


 「いや、歳の問題がある。お前は成人してもうすぐ体も成長しきるだろう。その時の為、だ」

 「分かったわぁ………籠絡するために行儀見習いをするとは思わなかったけどぉ」


 どこに行けばいい? と言う彼女に、猊下は我が家の養子として預かることにするから孤児院で遊んでいなさいと部屋


を追い出す。

 体を売ってその益を手に入れているが、まだ彼女は成人したばかりだ。

 成人する前から発育がよかった彼女が引き抜かれるのは当然の事で、色を売ることになってもやっている者は多いため


、なんの忌避感もない。

 奴隷の落胤が押されているのを見分けられるのは教会の上層部だけで、彼らが色を売ることに関しては世の男性が教会


の女性を犯すと言う背徳感を求める限りなくならないだろう。


 「さて、そろそろ姫巫女を見に行かねばならないかな」


 だんだんと傾いてきた日を見つめて、猊下は教会の階段を下へ下へと降りていく。

 一番下に着いたとき、手に持っている灯りが周囲をほんのりと明るく染める。


 「こんばんは。元気にしているかな?」

 「むー! むむむっむむ!!」

 「何を言っているか分からないのだが、まぁいい」


 猊下が見下ろす先に居るのは、数人の怯えを孕んだ少女の瞳と、目の前にいる口を布でふさがれた見目麗しい少女。

 部屋の端には動かなくなった少女たちもいるのだが、そんなものは目に入らない。


 「猊下、今日は」

 「長い挨拶は要らない。首尾はどうだ」

 「順調であります………しかし、このような素材、使ってしまってもよろしいのですか?」

 「よい、許す。神もそれをお望みだ」

 「むー! むむむー!!」


 叫んでいる少女の前で猊下と研究者風の男は会話を交わす。

 他にも数人機材と向き合っている研究者風の者がいるが、猊下が来たと言うのに誰も見向きもせず、ただ研究対象に熱


い視線を向けている。

 稀に響く悲鳴や、鼻をつくような悪臭、怯えを恐怖を孕んだ空気も全て、彼らには見えていない。あるのは研究対象と


研究結果だけ。


 「もうすぐ勇者召喚を我等は実行する。正しい聖女の製作、頼むぞ」

 「はい。御心はここに」


 聖職者としての礼をした研究者風の男は、自らの担当している場所へと向かって、笑顔で研究を始める。

 もう何も目に入っていない。


 「早く成功してくれないかな。そうすれば、勇者召喚を打診できるんだが………」


 猊下が階段を上りながら呟いた言葉は、狭い通路に反響するが、幸か不幸かその声を拾う者はだれもいなかった。


 □■□■□


 全てが停止した世界で、一人の青年と二人の女性が不安そうにあたりを見渡していた。


 「どうなってんだよ、これっ!?」

 「わ、わからないわよ!」

 「と、とにかく移動しないとっ」


 正常に混乱している三人の目の前に、光の柱が立つ。


 『君らに、選択肢をやろう』


 その柱から聞こえる声は、老いた男性の声。

 逆らえないような圧倒的なその声に、三人は喉を引きつらせる。


 『このまま事故に巻き込まれて死ぬか、別の場所で困難に立ち向かいながらも充実した人生を築くか、選べ』


 死ぬか生きるかでしかない。

 体をうまく動かせないこの場所で、三人が感じているのは死。

 目の前で動かないトラック。赤信号。こちらを指差している人々。

 その全てが恐ろしい。


 『さぁ、答えねば、死を選んだとするが』


 早くしろとせかすその声に一番に返答したのは、青年だった。


 「俺は行く! 死ぬのはまっぴらだ!!」


 その声に後押しされたのか、二人の女性もすこし怯えながらも青年に続く。


 『聞き遂げたり。箱庭にようこそ』


 瞬間、目の前を包む暖かな光。

 なんの感情も浮かばないそんな光がその場に満ちると、止まっていた風景が動き出す。

 ぐしゃっと二つの塊がトラックに轢かれ、スリップしたタクシーが電柱にぶつかり、そのサイドミラーが信号待ちをしていた青年に突き刺さる。

 なんてない非常識な日常の一幕が下ろされた瞬間。多くの人を巻き込んだ大規模な事故に発展したそこには複数の死体が出来上がっていた。

 悲鳴が充満する中、誰もが記憶していなかった。

 なんでこんな痛ましい事故が起きてしまったのか、を。

あれれー? なんだか見たことある情景だぞぉ~?

(某頭脳は大人で体は永遠の小一)

あの推理方法は年齢を誤魔化しているからこそできるものだと最近さらに確信してしまった。

そう言えば羊の○ョーンが映画化とか。←脈略行方不明


また次回、お会いしましょー!

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