16 神聖帝国フロウェルⅠ
最近LINEだとかTwitterだとかに慣れてしまって、ものすごくE-mailが使いづらい。
ま、我がスマホにE-mailアドレスなんて存在しないがな!
前書きが短いって?
はは。それは書く時間がなくてギリギリの投稿だからですよ。眠いです。
と、言う訳で、本編はじまりはじまり~
男は腹が減っていた。
「おい、大丈夫か?」
道に倒れ伏す男に話しかける者は多かったが、限界まで腹が空いた男にその声は届かなかった。
もし奴隷身分だったのなら話しかける者もいなかっただろう。しかし、その男の身に着けている服はかなり高価なモノであったし、うつぶせに倒れているその状態からでも見える手元や足首、首元などに付けられている装身具は、スリを常習的に行う悪童でさえ手を出すのをためらうほどのものだったのだから、逆に恩を売ろうと話しかける者の方が多かった。
「………はら、へった」
そんな善意の心配も、欲に目のくらんだ心配も全て聞き流して、男は地面に顔をつけ混濁させた目を周囲に彷徨わせていた。
耳に入らなければなんてことはない雑音。
しかも男が探しているのは食料で、人間ではない。
「………いい、におい?」
そんな中、男の鼻をくすぐる匂いがあたりに立ち込める。
その匂いをもっと嗅ぎたいと意識を浮上させると耳に入る人々の声。
「また挑戦者が?」
「ああ。今回は細っこい兄さんとちっこい妹さんらしいぜ」
「無理だろ」
「冷やかしに行くか?」
「女将はこえーから結果だけしれれば俺はいーや」
「食べきれんのかな?」
「毎度見るけど、旨そうだよな~」
男はそれを聞いてずりずりと匂いの元へと這っていく。
「うわっ動き出した!」
「気持ちワル………」
「どこ目指してんだろ?」
男の後ろには、男の跡を追う列が出来上がる。
「ここ、だ」
最後の力を振り絞って、まるで生まれたての四足獣のようにぷるぷると震えながら立ちあがる男。
そう言えば聞こえはいいかもしれないが、立ち上がった様は、まるで死霊系の魔物が地面からのそりと、妙なキレを持って立ち上がるあの様に似ている。
「おい、これ、なんだ?」
「え? 兄さんあんた顔色悪いけど大丈夫かい?」
いい匂いを発する原因である食事処に屯っていた連中の一人に話しかけた男だが、聞きたいことに対する返答が返ってこないことにイラつき、その彼の両肩を掴み、目線を合わせてすごむ。
僅かに落ち窪んだ目だが、その瞳は得物を見つけた獣のように輝き、逃がさないと両肩に置いた手に力が籠められる。恐らく無意識だろうその行為に、肩を掴まれた者は身を震わせる。
「これ、なんだ?」
「あ、集まりのことか? この店の十八番が始まったから見に来ただけだよ!」
「十八番?」
「ああ。制限時間以内に出された料理を食い尽くって、兄さん、あんた挑戦者じゃないだろう!」
人ごみをかき分けて男はその中心に倒れこむ。
「なんだい? 飛び入り参加は認めていないよ」
「俺にも食わせてくれ」
ギラギラとした目を料理に向け、男は女将にそう言い放つ。
「良いじゃないか女将! どうせ無理難題だったんだからさ」
「もう一人追加していいって女将も言ってたじゃないか」
「あんたら………」
「それにその方が面白いじゃないか!」
「おい胴元! 賭けなおすぞ、嬢ちゃんたちが成功する方に全額だ!」
「………はぁ」
女将は野次馬が楽しそうに賭けを始めたところまで見届け、ぎりぎり残った理性で出された料理に食いつかまいとしているその男に話しかける。
「これが何なのか知ってるのかい?」
「ああ。食っていいか?」
「だったら時間内に食べきれなかった金が発生することも知ってるかい?」
「ああ。食っていいよな?」
「………参加してるそこのに聞いて許可が出たら特例を認めてもいいよ」
「ああ。食うぜ?」
「あ、うん。どうぞ。お金はあるんで大丈夫です」
「いただきます」
男は女将の座っている方にある椅子を引っ剥いだして腰かけると、先に座っていた優男からカトラリーを取り上げ、片っ端から皿の中身を腹に詰め込み始めた。
「うぷ………」
それを身近で見てしまった優男は口元に手を当て、視線を男に合わせないように壁へと逸らせる。
さっきまで山盛りに乗っていた料理がなくなり、舐められたかのように綺麗になった皿が机の上に重なっていく。
明らかに男の体内に入る以上の容量を超えているが、それでも料理を口へと掻き込む男。周囲の者たちもそれを見守る。むしろ見守るしかできることができなかったのだ。
「食いおわりぃ! 馳走になった!!」
「あ、時間内………制限時間以内に完遂したとし、挑戦者の完遂を私たち店の者は祝いましょう………」
そんな宣言から一泊置き、わぁあっと歓声が広がっていく。
いい宣伝になったが、これはこれでどうなんだろうと思う女将以外、まるで熱に浮かされている子供の用に初めて出た挑戦成功者をほめたたえる野次馬。
「ふぅ………旨かった」
感無量と虚空に視線を向ける男の、微妙に入りにくい世界に優男は強靭な意志でもって割り込む。
「あの、僕、スペーラと言います。完遂おめでとうございます」
「おう! 俺はアッセルビート。アッセルでもアットでも、好きに呼んでくれ。むしろ俺、腹が減って行き倒れる寸前だったんだ。いい機会を恵んでくれてありがとよ」
スペーラの手を握り勢いよく上下に振るアッセル。
がくがくと揺さぶられるスペーラはふらふらする頭を抑え、胃からせり上げてくるものを懸命に飲み込む。
「んで、そっちの嬢ちゃんのお名前は?」
「………シノ」
「そっか! よろしく頼む!!」
にこにこと笑いながら手を差し出すが、シノはそれを握らない。
さすがに幼女の手を強引に握るような行動はしなかったが、残念そうに行き場のない手を引っ込めたアッセルは、話しのしやすいスペーラへと向きなおる。
「俺、今日この町に入ったんだが、いい宿とか紹介してくれないか? 食べきったお礼に、さ」
「まぁ………そのくらいなら?」
ちらっとシノを見るスペーラ。
受けたシノは、飲み物に手を伸ばしながら、僅かに頷く。
「………いいよ。宿を案内しよう」
「お? 頼む!」
貧相で服に着られている様子だったが、食事を食べて膨らんだ腹を抑える様子はむしろ服が合っていない、服を着ていると言う普通の印象に戻っている。
ボサボサ頭に土汚れが付いた、町人が着るような服ではなくどちらかと言うと治療院に居る人が着ている服は、男に似合っている。食べすぎで付きだた腹がなければ、の話だが。
「へぇ、ここが宿か!」
シノたちが泊まっているのは、この町のスラム街にほど近い格安だが、料理人の腕が良く、宿の主人が媚びていない、そんないい意味で値段につり合わない宿である。
スラム街に近いこともあって、それなりに自衛能力がないと泊まれないと言うのが難点だが、格安な料金設定と泊まれないと味わえない料理には代えられない。
「宿のくせに護衛とかいないんだな。こんだけスラム街に近いなら普通いるだろうに」
「だったら帰れ。別の宿を紹介してやる」
「あんた誰?」
「あ、こちら、宿のご主人です」
仏頂面で、追い返そうと手を振る宿の主人。
スペーラの紹介で目を点にしたアッセルだったが、泊まろうとした宿の主人に対する粗相をしてしまったのに気が付き顔を青くし慌てる。
シノやスペーラはもともと訳ありで、訳ありが止まるような宿しか探していなかったので知らなかったのだが、普通シシラギヤの宿に泊めてもらうには、宿に泊まっている人の紹介か、それなりの身分証や冒険者ギルドや商会の紹介証がなければ宿に泊めてもらうことができない。
宿主の心象が悪ければ、紹介証があっても止めてくれない場合があるくらいだ。
「す、すいません」
「うちの宿は護衛を置かない。スラム街の連中も客だがらな。分かったら帰れ」
「い、いや。普通に興味を持っただけなんで、宿とか護衛が居てもおかしくない………あ、ここ、訳あり専用?」
「………そうだが」
「あ、じゃあ尚更泊めて欲しいかも。明日払うけど、今手持ちがなくて………装飾品を預けるから」
手首に付いていた装飾品の一つを外し、アッセルは宿の主人の手に押し付ける。
嫌そうな顔でそれを受け取った宿の主人は、顎で宿を示し、言われたアッセルは宿の中へと入っていく。
「お前らはいいのか? あいつがもし金を払わなかったら、お前らが払うことになるんだぞ」
「あ、大丈夫です………あ、はい。僕に聞いてるんじゃないんですね」
「………大丈夫。問題、ない」
「お嬢ちゃんがそう言うなら信用しよう」
答えたスペーラを一睨みした宿の主人は、シノの答えに頷き、突っ立っているシノを軽々と抱き上げると宿の中へと入っていく。
正確に難がある人に好かれるのはシノの特徴なのかもしれない。この頃そう確信したスペーラはため息をつきながら宿の中へと入っていった。
■□■□■
その大きな会議室の上座に座るのは、多くの装飾品が縫い付けられている豪奢だがそれなりに動き回れそうな服を着込んだ初老の男。
その両脇には、同じようだが動き回るには少し向かないだろうドレスを着た女性と、簡素で質素な印象を受ける布を着込んだ男性が居る。簡素な服の男性は椅子が用意されているのに立っている。
彼の他に立っているのは、それなりに長い机に座っている者たちが連れ込んでいる補佐官などである。
「最近報告が滞っているが、その訳を話せ」
「はい。街道が封鎖されていたり、途中の町が忽然と姿を消している、というのが主な原因に当たるようです」
豪奢な服を着ている男、陛下がいるのは、すり鉢状になった会議室の、一番上の段。
本当に会議をしている人々が座っているのは、一番下の段に設えられた円卓の周囲だ。
「町が姿を消しているとか、そんな噂、信用に値しますかね?」
「貴殿が知らぬのも仕方ない。なんせ聖都で務めを果たしておられるのだろうからな」
「………ああ。私の仕事場は聖都だが? 地方から寄せられる報告に耳を傾けられる貴殿がうらやましいですよ」
「………」
会議と言う名の牽制は発展して言い合いとなる。
それに待ったをかけるのは、陛下の代わりに言葉を発する宰相。
いくら貴族仲がよろしくないと分かっていても、いちいち仲裁しなければ会議ですら進まない国のあり方にため息しかでない宰相である。なにか、絶対的な敵を用意しなければ、この会議が上手く進むことはないだろうと確信できるだけあって、ため息しか出ないのだ。
「政務に関係ない話は歓談の場でどうぞ。………宜しいか?」
「分かっておりますとも、宰相殿」
「ええ、分かっていますよ、宰相殿」
なんて言いながら視線に火花を迸らせる両者に、いい加減にしろと笑顔で微笑んだのは、宰相の友人であり、ある意味では家族よりも信用している財務を一手に管理している男。
「軍部も、人事部も、会議を滞らせていい話が得られるのですか?」
予算、大幅に切りつめてもいい? という脅しである。
会議で話されるのは、基本的に各部門での提示報告と、宰相、つまりは陛下による質疑応答と陛下への質疑応答が主である。
財務部門から出す議題は、予算に関すること。
そして、それが話されるのは、様々な要因とこれから先を見据えて、会議の一番最後なのである。
会議の途中でにらまれると、数ヶ月先の予算が大幅に削られたりもする。おそらくこの会議で一番怖がられているのは、財務部の男だろう。
直に彼に対して者を言えぬ軍部と人事部は、彼の後ろに居る補佐官を睨みつけると大人しく会議に参加する。毎度にらまれる補佐官は会議のあと毎回上司に泣きつくが、それが通ったことはない。
「突然町が消える、というのは噂として挙がっているが、それ以上の詳細に関しては軍部の方で精査し、次の議題にして欲しい。宜しいか?」
「はい、確かに」
「それに関して、教会から何かありませんか?」
教会、という言葉で、全員の目線が陛下の横に居る男性へと向けられる。
集まった目線に男性は動じず、何の感情もこもっていない瞳で円卓を見下ろすと、一礼しながら言葉を紡ぐ。
「いえ。私共には伝えられておりません。帰り次第、神にお伺いが立てられるかどうか、巫女に話を通します」
「宜しく頼みます」
各国の中で唯一、政務に教会が絡むのがこのフロゥエルと言う国である。
国のほとんどが国民であると共に教徒であり、祭事や、時には予算まで、教会は口をだす。
「では、本日の議会は終了する。各々、仕事に励むように」
宰相はそれを憂いている。
自らが献身的な教徒でないからそこ思うのかもしれないが、どんどん教会が利かせる幅が大きくなる現状に、陛下ではなく教皇の方が上に立ってしまうのではないかと思うのだ。
それで国の運営が上手く行くなら宰相も何の不満もなかった。しかし、最初にお布施をしたときに見た、なんとも言えない贅沢ぶりと、国家のあり方そのものを疑うような教鞭を聞いて、教会に対する考え方が変わってしまった。
「財務殿」
「何ですかな、宰相殿」
「以前から提案されていたあの件について話したいのだが」
「構いません。そうですね、三日後なんてどうでしょうか。丁度いいことに、私の妻が宰相殿の奥方と個人的な茶会を開くようでして、それに便乗して我が家へ来られては」
聞き耳を立てていた連中は揃って残念そうに目線を落す。
もしこれからこの会議室の横にある応接間で話されるならば聞き耳を立てようと考えていたことは明白だ。しかし、彼らが密会をするのは厳重な警備を敷いた家でのこと。さらに言えば、奥方の茶会のついで。
どこから情報が漏れるかもしれないと憂うがゆえに、女性のお茶会が開かれるその場で機密を話す行為はあり得ない。
「ああ、伺わせてもらおう」
宰相の一言が決定打となって、だれの興味も引かない密会の予定が立てられた。
久々に指がノリに乗っている………。
そして毎度のこと登場人物の名前がなく話が進む。
名前を考えるのが面倒くさいから登場人物の役職名でよんでるなんてそんなことないんだかね!(突然のツン)
コピペしたはずなのに、予想外な攻撃|(変な段落がいくつも加わる)に会って動揺中。
では、また次回にお会いしましょう!




