09 獣人都市国家ラーデラⅢ
エタってないですよー
そして三か月放っておいたらまさかのブクマ倍増ですよ何でですかありがとうございます。
ブクマ:45件、pv:17,000、ユニアク:6,000
夢かな? 現世だったけ? 夢現から抜け出せないのかな?
さて、また後半ではっちゃけるとして。
とりあえず本編へご案内!
その城は、主の帰還と共に活気を取り戻した。
「んもぉ………私が居ないと駄目なのねぇ」
クスクスと笑うテルディーレに、周囲の者は頬を赤く染める。
「下がって良いわよぉ。でも、私が作ったお菓子は………もうあの人たちに出しちゃダメよ?」
にっこり笑って使用人を追い出すテルディーレ。
その場に残ったのはシンのみ。
「テル。どうするんだ?」
その場からすべての気配が消えたのを確認したシンが声を出す。
シンが言葉を話すのは基本的にテルディーレの前だけだ。
「そうよねー………いなかったんでしょ?」
「ああ。いなかった」
テルディーレは誰もいなくなった応接室でシンをソファーまで引っ張り、横に座らせると、その肩に頭を置く。
少し元気のなさそうなテルディーレの頭を撫でながら、シンは業務報告をする。
「俺の【鑑定】で見た限りだと、テルの【予見】を超えるような【能力】の持ち主はいなかった」
シンのその断言に、テルディーレはため息でもって返答する。
「シンも知ってるでしょうけど、聖獣たちによって私の手の者が消されてるみたいなのよ」
洗脳した相手の魂をピン止めして居場所が分かるようにしておいたのに、その魂がこの大地から消えていると言うテルディーレ。
「知っています。老の所の者も、偵察だけではなく接触を試みた場合消されていると、暗部で言われています」
話す二人の姿は甘さが感じられるが、二人が作り出した空気はピリピリとしたかなりの緊張感を保っている。
はっきり言ってしまおう。テルディーレとシンは前世の記憶を持ち越している獣人で、望んだわけではないが、ここで暮らすことを自ら選んで生きている。ここ以外に逃亡することはできなかった、というのが正しいのだろうが。
「聖獣が獣人を快く思っていないのは知っているけど」
「………」
「なんで、人間の、それも因子持ちをかばうのかしら」
人間には魔物と呼ばれ、獣人には聖獣と呼ばれる存在は、確かに各地に点在している。
そして、そのほとんどの聖獣たちは、言葉を解し、永劫の時を生きていたと言える知識を持っている。と同時に、獣人を裏切り者として認識している。
なぜそう言う風になっているか、というのは獣人側のどんな文献にも記されていないためテルディーレも頭を抱えているが、大抵の獣人は、聖獣様は何かお考えがあって近寄らないのだろうと思われているため、誰も気にもしない。
それが問題である、と認識している者があまりにも少ないことに、テルディーレは悔しくなる。
「それによ。魔物と罵られ討伐対象にもなるというのに、なぜ人間なんかを守るのかしら?」
獣人として生まれてきたテルディーレは、確かに前世の記憶を持ち越している上に新しい【能力】を協力者から得ていたが、幼いころは至って普通の兎人種の少女だった。
戦うための牙も爪も持っていない兎人種の少女が今実力主義を掲げる城の主をしているのは、その方向性は少々疑問に残るものの、ひとえに努力が成しえたことである。
「大抵の聖獣は前世持ちですから、そこが関係しているのかも」
「元人であることが多い、ってことかしら………でも、人間を守りながらも、人間を嫌っている聖獣があまりも多くない?」
今までテルディーレが直接会ったことのある聖獣は五体。
三体は人間を嫌い獣人を恨み、一体は双方とも好み、一体は双方とも嫌っていた。しかしそれでも、人間の側で生き、手ごろな試練を与える者としてその場から動くことのなかった聖獣たち。
他にも手下の者たちが接触を試みているが、ほとんどの場合その眷属に門前払いを食らってしまう。
門前払いで喰らわれてしまうこともあるが。
「それに………いえ、それは早計かしらね………」
「どうしました?」
「なんでもないわ………あり得ないし」
「そうですか」
テルディーレの心の中でとどめられた言葉をシンが追及することはない。
■□■□■
空が茜色に染まり、昼と夜の狭間が紫色に染まるそんな時間。
「………」
一人の、汚らしい恰好の少年が今にも倒れそうな青い顔でふらふらと森の中を歩いていた。
その背中には種族を現す大きな翼がある。
「ねえ、何してるの?」
「………」
その少年は上を見上げる。
木の上に、ワンピースを着た、空色の髪を持つ少女がいた。
「ねえ、何してるの?」
上から降りてきたその少女の耳には、大きな兎の耳が付いている。
木の上から落ちてきたその少女の、ワンピースの裾がめくれあがるが、少女はそんなのお構いなしに少年に近寄る。
「私が聞いてるんだけど?」
少女の身長は、少年よりも頭一つ分低い。
幼い、どう見てもそう分かるのに、利発なその姿、目にはどこか野心が窺える。
「早く答えなさいよ」
少年は殴られて育った。
下手に知識があるから、周りから奇異の目で見られ、身に、心に、傷を負わされた。
「黙ってると、私、貴方にどうしたらいいか分からないんだけど」
たれ目を精一杯吊り上げて怖い顔に見せて見せる少女の様子に少年は首を傾げる。
「ちゃんと目を開いて視なさいよ」
そう言われて、ビクッと体を震わせ、少年は数歩後ずさる。
少女から見たら、前髪に隠れて少年の目がどうなってるか分からないはずなのに、ためらいもなく少女はそう言った。
「………私を視てみなさいよ。少なくとも共感できるわ」
少女の物言いに少年は首を傾げる。
先ほどまで臆していた自分の心の動きがよくわからなくなって、少年は薄く目を開いた。
「!?」
途端に目に入ってくる光。
夕暮れだと言うのに、森の中はきらきらと輝いていた。
少年が普通だったのなら、普通の目がそこにあったのならそれらは見えなかったことだろう。
少年に見えていたのは森の息遣い。森が、光を葉で吸収し、根で地面から栄養をいただく。その流れが、少年の目に映っていた。普通の森とは違った苛烈な光。森全体が発しているその光から、森そのものが慈しみ育てられたと分かってしまった。
「きみ、は?」
「視えた?」
しかし、それが生易しいと思えるほどに驚くべき光景が目の前にあった。
光全てが感謝するかのように少女に頭を垂れているのだ。
いや、その表現だとおかしいかもしれない。しかし、そうとしか思えない、言えない光景が少年の眼に映った。
「【掌握】と【予見】?」
「やっぱり! スキルを知っているのね」
少女の顔を直接見ることは叶わず、結局少女の顔を正面から見ることができるようになったのは、自分の眼の制御がしっかりできてからのことだ。
音で周りの全てを感知できるため少女に後れを取ることなど何もなかったが、少年と少女が拾われるまで、少年は一人、少女の話し相手として過ごすのだった。
「私はあの場所から逃げ出したの。誰かが抜け出して、管理者たちが混乱してる隙に、あの息の詰まる場所から抜け出した。正規のルートを通らなかったから記憶もスキルも持ち越してるし、とりあえず少しづつ力をつけて行って」
―――あそこに閉じ込めた奴ら全員、地の底に堕としてやるの
「だから協力して。今日からあなたは私の右腕よ。生憎獣人族の中でも弱小種族に産まれちゃったけど、スキルの応用でどうにでもなるわ。あなたの目を、私のために使って頂戴」
少年と同じではないが、少年が生まれつき持っていた忌々しい記憶の数々を共有できる相手をやっと見つけたのだ。少年にとっては天啓のようだった。
「私はね、兎人族のテルディーレ。氏族じゃないから苗字はないわ」
「僕は、シニフェ・デマン・ルクイェーレ」
「氏族だったの……じゃあ、これからあなたは私の騎士。シンと名乗りなさい」
「………分かった」
それから数年後。
兎人族の集落が何者かによって滅ぼされ、少年と少女はメディガルディナの者に拾われる。
現在に至るまで、兎人族の集落の者が全滅したのか、誰も知ることはない。
集落に残った二人の心も、その場所に眠る祖先たちと共に埋められている。
誰にも掘り返されないほど、深く、昏い、そんな場所に埋めてきた。
□■□■□
現状、二人は困っていた。
農耕国家シシラギヤの人々は基本的に温厚だ。
しかし、温厚でいられない場所が二か所ある。
「本当にこの町に泊まるんですか………?」
「ん」
一つは、神聖帝国フロウェルの手前にある街、ルイーデ。
もう一つは、獣人都市ラーデラの手前にある町、サデファル。
「ここ、獣の安楽地って呼ばれてる町じゃないですかっ」
「だから?」
「危険ですよ! ここが何でそう呼ばれているか知らないわけないでしょう!?」
こそこそと話す二人は、フードを目深にかぶった旅衣装で、クロの背中に荷物を全て載せ、スペーラの馬に二人乗りしている。もちろんスペーラがシノを抱えているように見えるが、実際馬に指示を出しているのはシノだったりもする。
丁度町が見下ろせる、街道の横に設置された休憩場所で町を見下ろしながらこそこそと話す二人の様子を周囲の人はまるで見てはいけない者を見るかのように視線を合わせないように伺い見ている。
地味に歩きながら町へと歩を進ませるシノ。
「知ってる」
「だったらっ」
「でも、ここがなら平気」
「平気って……」
スペーラはさすがに気になって少しフードを浮かせるようにして周囲を見渡すと、バシバシと痛いほど向けられていた視線のほとんどが外れる。
「流石に不味いですっ」
なぜこんな状況になったか。
それは、たった一つ。
「おやー別嬪さんじゃないか!」
馬に乗っていると言うのに、肩を掴まれるスペーラ。
「あ、あの………」
隣に並んだ馬を見れば、がっしりとした人間族ではない肌の足が見える。
その太さからして大きい人なんだろうと思って上を見上げれば、スペーラより頭一つ分以上大きい獣人がそこに居る。
「名前、なんて言うんだい? あれだろ、祭りに参加する為に来たんだろう!」
「え、あ」
「おねーちゃん、痛がってる」
「おおっと、こりゃすまん! 俺はラーデラ出身なんだが流れ者でね。サデファルで行われる祭りには数年おきに参加してるんだ! 今年の優勝候補かと思って心象をよくしようかと思って声をかけたんだが、迷惑だったかな? あっはっはっは!」
バッと手を放して手を上にあげ、害を及ぼす気はないとアピールする男。
シノはジトっとその大男を睨みつける。
「だ、大丈夫。痛くなかったから、ね。心配しないで」
「ほんと?」
「本当、本当! 大丈夫だから、ね?」
「ん」
「妹さんかな? 別嬪さんは声まできれいなんだな!」
男に褒められてもうれしくないと心の中で涙を流しながら、スペーラは薄く笑う。
「ありがとうございます……きゃあっ」
不意に吹き抜ける風に、スペーラのフードがはぎ取られ、フードの中に隠してあった光を受けて輝く銀色の髪と白磁の肌が日の下にさらされる。
ちらちらと伺い見るような視線がそのスピィとして計算され尽くした美貌に目を吸い寄せられる。
「え、あっ、フードっ!」
一瞬日の光に目を細め、周囲の視線を集めてしまったことに頬を赤く染めたスピィは急いでフードをかぶりなおす。
たった一瞬。されどその一瞬で全ての視線を集めたスペーラのその姿になんだが見ている方が恥ずかしくなったのは言うまでもないだろう。
「いやー、体つきで別嬪さんだとは思ったが、なんともまぁ、すごいな」
大男は少し後ろに居たせいでその顔を直視することはなかったが、それでも風になびく銀髪が瞼の裏に焼き付いて離れない。
「こりゃ今年の祭りも期待できそうだ!」
サデファルで行われる祭りが行われるのは十日間。
祭りは基本的に町全体が市場になったような感じだ。あらゆる店頭であらゆる品物が売り買いされ、大抵のことが許さる無礼講。それがサデファルで行わる祭り。
その最終日には、サデファルが獣の安楽地と呼ばれるにふさわしい行事が行われる。
「シノさまぁ………」
「我慢」
「ううぅ………」
最終日に行われる華祭。
そこでは、美しい者が店頭に並ぶ。
たった一夜で大金を稼ぐために、美しい者はその日買われて稼ぐのだ。売られる権利を持つのは、花街で色を売っていない者のみ。普通に暮らしている者や、他の街からの流入者のみに認められる。
男でも女でも、美しく花を売っていない者なら売られる権利がある最終日。
「そんだけの美貌なら大丈夫だろうが、拐かされないように気をつけろよ!」
最終日に自分が買えるかもしれない、そんな思いは周りへのけん制にもなる。
しかもこの町、この期間だけ、美しさで宿の料金が割引になる。
自らを売りに来るものも多いので、美しい者は基本的に身分を提示せずに町に入れるのもこの期間だけだ。
「シノ様………僕を売ろうとか考えてないですよね?」
「………」
「明言してくださいよ!」
「きっと大丈夫」
「何がですか!?」
深くフードをかぶっていても分かるスペーラの体格。
普段だったらどこにでもいる栄養が身長にのみ行ってしまったような華奢な男になるが、胸に細工をし、腰元に布を追加したスペーラの様子は、隠したくても隠せないメリハリのついた体を懸命に隠そうとしているが、まるでそれを周りにアピールしているような状況を作り出している。
まるで媚びているようだと敵意を持って見ているのは、美しい者ばかりで、大抵の人はなかなか見られない生娘が来たんではないかとそのフードの下の美貌を一目見たいと欲を自らの中に抑え込む。
「僕………」
「私」
「私、身の危険をものすごく感じるんですけど」
「気にする必要ない。買ったらすぐ逃げる」
「指名手配にならないか、本当に怖いんですけど………」
身分を明かさずに中に入ってきた美しい者が町に入る時身分を確認されない代わり、町の中での安全を認める代わりに町の外での安全は認めていない。
祭りの開催日数日前から町の周囲では、多くの商人、特に奴隷商人が野営をしている。
身分を認められていない脱走者である美し者を捕まえるために。
「指名手配はない。捕まるだけ」
「それが嫌なんですよ!?」
「ばれない」
「で、ですかね……」
いくら化粧でその美貌を作っているとはいえ、その化粧を落としただけで全くの別人として捉えられると言われたスペーラは少し納得がいかないようだ。
シノはそろそろ真上に上がってくる太陽に目を細め、宿に入る。
シノの担当は買い出し。スペーラの担当は宿にお金を払って化粧を落とし、何食わぬ顔で出てくること。
「いらっしゃいませ――あ、最終日の方ですね。五割引きになってます!」
「はい、最終日までお願いします。……あ、それとあの子は親の所に帰るんですけど、一日だけ馬を厩舎に入れたいんです」
「分かりました。宿泊は十日分で厩舎は一日ですね。御嬢さん? 厩舎はいつまで使用するか決めてある?」
「……」
「できれば門が閉じられる前までには出ていくそうです」
「あ、はい。分かりました。でしたら料金の方はいいですよ。手前が日帰り用の厩舎になってます。その代わり飼葉とかないですけど」
「それでお願いします」
基本前払いなのでここでスペーラとシノは一旦お別れだ。
これからシノはクロを連れ歩いて食料の買い出しをした後、スペーラの馬を連れて町を出る。
「それじゃ」
「ここまで送ってくれて、本当にありがとう」
頭を下げ、女の子然としたスペーラを後ろに残して、シノは宿を出る。
シノの目に、太陽の中に黒い点が見えた気がした。見間違いかと思うほどわずかな時間だったが、まるでそれに呼応するように、シノの足首に付けられたアンクレットが鈍く熱を帯びた。
え? 書き方が変?
内容がおかしい?
ソンナコトナイデスヨー(棒)
あ、スペーラの顔は日本人顔です。のっぺりしてます。おじゃるまではいきませんがのっぺりしてます。
化粧で盛れるよ!
絶滅危惧種(?)のガングロみたいに!
さてさて。
今でも心の中ではこっちの更新が主軸です。
確かに「その犬」の方が更新多くなりそうですが、こっちを忘れたわけではないので悪しからず。
お付き合いくださってくれている方ありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いします!
(新年じゃないんだけどねw)




