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魔王選定  作者: 華宵 朔灼
第四章 状況整理
77/113

06 農耕国家シシラギヤⅢ

 連番形式にすると、明らかにアクセスが減る不思議。

 まぁ、面白くないなら仕方ないか―と思いながら(´・ω・`)なってる自分w

 毎週来てくれる(のか不明だけど)二百人の方々! どうもありがとうございます!!


 七十五話、はじまります

 女性は、青年が泊まる宿に泊まった。

 最初のうちは何か親方に聞いて、仕事ついでに同情しに来たのではないかと思っていたのだが、細工師である親方の仕事で街の外に出る仕事は数日も宿に連泊しなくてもすぐに終わるような出来事であると知っている青年は首を傾げた。


 「あの………」


 毎日のように彼女に押しかけられて朝と晩に食堂に行くようになってもう一週間。それまで自分から話しかけたことがなかったが、流石に聞かなくてはと、青年は初めて自分から言葉を発した。


 「あ、はいっ! 何でしょうか?」


 それに対する女性の反応は、一瞬明るく輝いたと思うと、妙に真剣に青年の顔を見るのだから、青年はたじろいでしまう。


 「えっと………この町には仕事でって聞きましたけど」

 「あ、はい………」

 「いつまでこの町に居るんですか?」


 その時の女性の表情の変化は、青年が覚えている中で最もふり幅の大きい物だった。

 初給料を見せびらかしに村に帰った後で、彼女を工房で見かけた顔そっくりだと、青年はそう思った。


 「えっと………」


 何とか復帰した女性は、目線を左右にさまよわせて答えを探るが、うまく言葉にできないのか俯いてしまう。


 「あ、いや。別に機密とかだったらいいんですよ。僕も親方の仕事のすべてを知っているわけではないですし。それに親方は家族のことを大事にする人なんで、帰りが遅くなると要らぬ心配かけるんじゃないかなーって思っただけですから」


 先に部屋に帰ります、と捲し立てて部屋のベッドに倒れこむ。

 ああ、自分は一体ここで何がしたいんだと考えても答えは出てこない。なんであんなことを聞いてしまったのかも分からない。別に娘さんに何かして欲しい訳でもないのに。

 そう考える青年の思考はぐるぐると巡りながら、深く重く沈んでいく。

 そして当然翌日、女性の特攻で起こされた青年は、食堂へと足を運んだ。


 「ああ言われて、私も昨日の夜考えたんです」


 青年は食べる手を止めた。

 すでに料理は健常者の食べるそれと同じものになっていて、吐く回数も目に見えて減ってきているからそれなりに凛々しい、以前と同じとはいかないが、それと同等の顔つきになってきている青年である。

 そうはいっても目はまだ淀んでいるが。


 「私、明日工房に帰ります」

 「はい」


 これで親方も安心するだろうと頷いた青年は、食事を再開するが女性が食事を始めないことで首を傾げる。


 「食べないんですか?」

 「あ、いえ。食べます」


 声をかけたら猛然と食べだすその姿に少しだけ安心して、青年はきれいに朝食を平らげた。


 □■□■□


 女将の家族は全員無事だった。

 丁度客が居なくて、子供の小さい方が山菜の取り方を教えてほしいと乞うて来て、だったら久々に宿を閉めて山へ遊びに行こうと決心した、偶然に偶然か重なり山に居た時、あまりにも巨大で、あまりにも圧倒的な魔物が町を蹂躙したのだ。

 山で山菜を取っていた最中と言うこともあって、いきなり吹いてきた砂塵に慌てながらも洞窟に避難し、そこで煮炊きをしながら、稀に訪れる避難者を受け入れながらひと月ほど過ごしていたのだ。

 本当に偶然。しかしその偶然が、彼女の一家を救っていた。


 「はぁ………」


 ほぼ砂に埋もれてしまった町を掘り起すのにひと月、町の運営が再開されるのにふた月、野菜や肉などの食料品が高騰し、山へ自ら狩りへと行く毎日。

 そしてやっと表面的には普段通りの運営ができるようになってきた宿に、続々と客が訪れた。


 ―――すまない、空いてるか?


 客のほとんどが、まるで何かに絶望したかのような表情を浮かべ、せっかく作った料理もほとんどの者が食べに来なかった。

 しかも、夜宿の点検と見回りをしていると、部屋から聞こえてしまうのだ。まるで泣くのをこらえているかのような嗚咽が。


 ―――ほんと、客入りがよくて良かったわね!


 近所にあった他の宿屋のほとんどはつぶれて、その家族も大抵は行方不明だったり死亡していたりと、一家全員無事と言うのが女将の所だけだったために、いつもの楽しい井戸端会議は殺伐としたものになってしまっていた。

 しかし、そこで得た情報もある。


 ―――近くの村、全部ナニカに潰されたって


 噂だろうと一蹴してもおかしくないその内容。

 しかし女将は見ていた。砂塵に映し出された巨大な影を。

 そしてそれを聞いて思いついて、一つの結論に至る。


 ―――もしかして、客は村の生き残り?


 そう思った女将の行動は早かった。

 どんなに重病人でも食べられるようにことことと煮詰めた食事を用意し、しかし触感もある程度は楽しめるようにしなければと薬屋を訪ね、絶対に煮崩れしない薬草を分けてもらい、食べてもらえるように試行錯誤した。

 すると、固形物を少し口に居れて吐き出すように食事を終えていた客の数人が食べられるようになった。

 それが嬉しくて、家族全員でどうしたら食べてもらえるか、元気になってもらえるかを研究し始めた。


 ―――宿、空いてます?


 しかし、そうやって訪れ泊まる者は増えても、結局のところ食べようと言う意思がない客があまりにも多く、あまり改善したようには思えなかった。

 当然朝は必ず起こすようにして、全く出てこない客には生存確認の為に部屋を覗くことにした。

 そんな、もうどうしようもないのかもしれない、このまま彼らが望むように、同じ運命を辿らせてあげた方がいいのかもしれないと思った時、彼女が現れた。


 ―――彼、いるでしょう?


 高圧的な態度と、人を少し見下した視線が、明らかにいいところのお嬢様と言った感じで、女将は少しイラッと来たが、そこは仕事。そのお嬢様が一人の男性を探してこの町まで来て、人の目を気にせずに突っ走る姿に共感を覚えてしまい、その青年の名前と台帳に書いてある名前と部屋番号を突き止められ、突撃されてしまって、もしかしたらこの宿は終わりかもしれないと涙した女将だったが、その彼女が来たことで全く部屋から出てこなかった青年が食事をするようになったのは幸運だったのかも知れない。


 ―――美味しい………


 最初のうちは食堂に訪れて食べる、という行為をしていた青年の部屋で吐く音は何とも聞きがたく、全く下階に降りてこなくなったのも心配だったが、どう見ても栄養失調で痩せた青年の零したその声は、立ち直った客から聞いていた村の状況も相まって緩んでいた涙腺を刺激した。

 家族、特に男どもに笑われたが、春画を目の前で破き泣かせて黙らせ、料理は更なる研究が必要なのかもしれないと闘志に燃えた。

 夜の見回りで青年の部屋からは吐く音が聞こえないことに安堵したが、もしかして久々に食べたことで体に異常が起きたのではないかと心配した女将だったが、別段そんなことはなく、翌日無事に下階に降りてきた青年に再び安堵させられたものだ。


 ―――朝ですよ! 起きてごはん食べましょ!!


 しかし、あのお嬢様には恐れ入った。

 毎朝のように青年の元を訪れ、昼頃は宿を出て暗い顔をして帰ってくるが、夕飯を誘いに青年の元に行くときはそれをおくびにも出さずに笑顔を振りまいている。

 それが恋なのだと、女将が納得するのは割と早かった。

 なんせいくつ歳を重ねても乙女は乙女だ。その思考や行動には共感できた。

 しかしそうなると気になるのは昼過ぎの表情。

 女将は、娘に番をまかせると、そのお嬢様の後をつけた。


 ―――やっぱり、いませんか………


 彼女が向かっていたのは役所だった。

 翌日も、翌々日も、彼女は役所に行って同じ質問をして宿へと帰って行った。

 いい加減変わらない質疑応答に、女将は役所で彼女の次に彼女が自分の宿に泊まっていることを明かした上で、その村が今どのような状態なのかを聞いたのだが、その答えはなんとも悲惨なものだった。


 ―――村は潰されました


 潰されたと聞いて、村としての機構が上手くいかなくなってしまうほどの被害を被ったのかと思った女将は、ならば統合するのかと役人に話しかけ、役人は何を女将が勘違いしているのか分かったと、物理的に村が潰されて、その死体はまるで壁のしみのような状態になっていたと告げられ唖然とする。

 客も話してはいたが、あまりに悲惨なものを話したくなかったし、話したとして信じてもらえないだろうし、あまり不快な思いをさせたくないと思い随分と大まかな話しか女将は聞いていなかったのだ。

 女将は、あのお嬢様が、たった独りになってしまった青年の為に、知り合いを探していたのだと言う事実にまた涙腺が緩んできたが、逆に、そうではないだろうとお嬢様を叱りつけたくなってしまった。


 ―――私、明日工房に帰ります


 彼女が来て一週間と少し。

 何か決心をしたのか、お嬢様は青年にそう告げるが、青年は何もわかっていなさそうなのに今身を引いたら、絶対後悔するのではないかと女将は不安になってしまう。

 しかしだからと言って何かできることがあるわけでもない。所詮彼らはお客様で自分はこの宿を経営する主の妻。明確な線引きがされている以上、あまりに過度な接触はできない。


 「はぁ………」


 だからこそのため息。

 ただ体がムズムズするこの感覚は、ただの世話焼きの癖なのだ。治せない病のようなものなのだ。

 結果がどうなろうと見守ってやらなければと、嘆息した女将の後ろでは、次は何をするつもりなのだと、女将の家族がそれぞれ大事なものを握りしめて震えていた。


 □■□■□


 夕食にも誘われて、なんとなくこれが明日からなくなるのだと思うと残念だと思ってしまう自分に苦笑する青年。

 笑ってから思う。

 もう家族は笑えないのに、と。


 「夕飯ですよ! 行きましょう!!」

 「はい」


 親方の娘さんに従うのは当然。なんたってあの怖い親方が大事に大事に育ててきた娘さんなのだから。


 「………してもらえませんか?」

 「はい?」


 食事も終わりに近づいてきた頃、ぼそぼそと告げられた声は青年に届かない。


 「私と一緒に………」

 「工房への護衛ですか?」

 「はい! ………はい?」

 「分かりました」


 少しもわかっていない青年は、分かったつもりで肯定し、準備をすると言って部屋へ戻っていく。

 だいぶ人と話すことも楽になっていた青年は、工房を辞めるためにどうせ一度は親方に頭を下げなければならないと肯定したのだ。


 「言いたいことはちゃんと面と向かって真っすぐ言わないと伝わらないよ。男ってのは、集中すると絶対に振り向いてなんかくれなくなるんだから」


 黙っていられなくなった女将が片づけと共に話しかけ、帰るまでに何とか話してチャンスをものにしな! と発破をかける。

 女性も生気の戻った目で、コクンと一度頷き、部屋へと戻る。

 翌日の昼に定期便で帰って行った二人の若者を女将は見送り、まだこの宿に居る引きこもり共をどうするか、ため息を付くのだった。


 ■□■□■


 馬小屋を整えて母屋の部屋に戻ったシノとスペーラは、温かい食事に迎えられる。

 いつもシノの味付けで美味しい料理を食べていたとしても、安心して料理が食べられる環境ではなかった為、安心できる場所での料理と言うのはなんとも心安らぐものがあった。


 「そうそう、うちの村、とっても広いのよ。ここは一番外れにあるから、中央に行くときは馬に乗っていった方がいいと思うわ」


 拓かれた道と、まれに見かける家と、だだっ広い柵に囲まれた草原。

 畜産を担当していると言うだけあって、この夫婦の家そのものはそれなりだが、十分快適に過ごせそうであった。

 しかも外れにあると言うことで人目にふれることもない。

 ここまで来るのに、シノの外見と年齢はずいぶんの人に気にされるものだったので、人と会わなくてもいいというのに、少しだけ胸をなで下ろしたシノである。


 ―――もういいや


 そんな時聞こえた声。

 声と言うよりもまるで反響するかのように頭に残り続けるその声に、シノは首を傾げる。

 そして、誰も何とも思っていないことを確認すると、トイレに行くと言ってシノは一人、家を抜け出した。


 「クロ」


 呼べば馬小屋を飛び越えてやってくる相棒に跨り、反響するその声が聞こえてくる方向に普通の馬の速度で走らせる。

 だんだんと道幅が広くなり、ぽつぽつと家が見えてきて、そしてシノは、山ひとつ向こうから迫ってくる大きな雲を見る。


 「何、あれ?」


 外は暗い今の時間。

 家族団らんを過ごしているだろう今の時間では、きっと誰も出てくることはないだろう。


 「行こう」


 クロは、はい! とでも言いたげにすでに煉瓦で舗装された道を大きく蹴って、数倍の速度で駆けだすクロ。

 向かう先は、地図で確認した通りだと隣の村となる。


 「………」


 シノはクロの鬣にしっかりと片手でつかみ、もう片方の手で肩掛けカバンから瓶を一本抜き取ると蓋を外して銜え、剣に触れる。

 タクからもらったその剣は先まで綺麗に磨かれており、一つの刃こぼれもない。

 風と一体となったクロの姿は、一筋の黒い閃光となって駆ける。


 ―――全て、どうでもいい


 すべてを壊さんとするその腕に、山を越えたシノとクロは真っ直ぐ突っ込んでいく。

 すでに数件対処していたシノにとって、この化け物を退治するのはいたって簡単なものだった。


 「これも………」


 言うまでもなくシノは『黒』だ。

 そして、『黒』の目を持ってその化け物を見れば、化け物が三色のどれかに染まるのだ。ほぼ、必ず。


 ―――壊れちゃえ


 『黒』であるシノに向かって『白』の化け物はやってくる。

 まるで吸い寄せられているかのように、その化け物は対極の色の元に向かってくるのだ。

 その全容をすべて体感したわけではないが、そうであることは既に分かっていた。


 「………クロ」


 意を得たとばかりにクロはその化け物が放つ濃霧の中に突っ込んでいく。

 何かが通り過ぎたと気が付いた、化け物から逃げ惑う人々や立ち向かおうとしていた人々は、濃霧が晴れて破壊された村を見るまで、結局何が起こったのか、知ることはない。


 「………」


 シノはやりたくなかった。

 しかしやらなければ、立ち向かわなければ、自分の周りの人が傷つくかもしれない。

 山の中で、クロから落ちるように地面に倒れこんだシノを、クロは馬でありながら懸命に介抱しようと鼻づらを寄せる。

 最初のうちはかなり動転して周囲の自然を破壊したクロだが、もう幾度目かになれば慣れる。心配であることに変わりはないが、それでも自身が側でじっと待つ方がシノの回復が早いことを知っているため、むやみやたらに周囲を攻撃することはなくなった。


 ―――俺は勇者に選ばれた?


 シノの脳内(なか)で白だった少年の生きた証(きおく)が渦巻く。

 まだ温かさを残す土の上に身を投げ出し、シノはその重みを受け止める。ナニカに引き裂かれて、強引にくっつけられたようなその奇妙な感覚に意識を持って行かれそうになりながらも懸命に耐える。

 シノが仮宿に戻れたのは夜中を過ぎてからだった。

 本当は話中で結ばれて欲しかったあの青年と娘さん。

 しかーし! そこまで持っていく文章力がなかったのだよ!

 引っ込み思案と愛家族の唐変木っていう設定だったからこうなってしまった………ラノベみたいにうまくいかないものだねー


 次のシナリオ制作のフックが『七福神』×『ダゴン教団』。いやーネットサーフィンいってま

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