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魔王選定  作者: 華宵 朔灼
第四章 状況整理
74/113

03 商業都市国家ディルエバーズⅢ

 CoCやり過ぎて寝過ごした。

 更新が二日も遅れてごめんなさい。

 難易度Easyで作ったのに、終わる頃には難易度Extremeに変わっている不思議。どっちも難易度Eだけど…… な ぜ な ん だ (゜□゜;)

 リアル会話技能を取り入れてるから悪いのか………


 さて。七十二話、はじまります

 ガラムの朝は遅い。

 陥落してしまった他の町と比べると、格段に早く復興していたガラムは、被害も少なく、割と順調に回復し、ガラムの農耕畜産でできた商品は飛ぶように売れていき、なんとも住みやすい時間が流れていた。


 「そっか、ここは雪が積もるのか」

 「テトラんとこは積もらなかったの?」

 「ああ。ロルネラは海から吹く風のせいなのか、あったかい風が一年中吹いてきて、降っても積もることはなかったな」


 アルテとテトラは、いつ雪が降ってきてもいいように庭の野菜の上に買い取った藁を被せる。

 ガラムに居ついて数ヶ月。

 テトラは髪を上げてその瞳をさらしている。最初のうちはさすがによそ者を見るような変な目線で見られていたが、アルテと一緒に行動することで孤児院や教会の者たちとなじみ、エイファの理髪屋に遊びに行くことで、町人から無条件に怖がられるということはなくなった。l

 もともと面倒見の良い性格で、親が子供の行動を制限するような町でもないため、すぐに子供たちと仲良くなったテトラは警備隊には所属しないものの、それ相応の抑止力として町を闊歩することになった。


 「あ、これ終ったらタクんとこ行く?」

 「行く行く! 親方さんにもう一回挑みたいし」

 「あははは」


 タクの親父である親方に初めて会ったテトラは、その魂の強さに驚いた。確かにこれならタクのような輝きを持つ者の親と言ってもおかしくないと思う程に。

 実際親方が相当強く、居間でも冒険者ランクAに引けを取らない強さを維持していると聞いた瞬間本人に弟子入りしたいと頭を下げたのだ。

 意訳になるが、そんな大きい弟子は要らないと言った親方に、テトラはならば俺が勝つまで何度でも挑みに来ますと笑顔で言いのけ、親方の強面を歪ませるという一件があったりする。


 「あれ? 今日も来たんだ」


 身長が伸びるのが早いせいか、体の痛みが増したタクは、親方に絶対安静を言い渡され、家から遠くへ行くことを許されていない。


 「タク、親方さんに言われてるだろう? 休んどけよ………」

 「テトラの言う通りだって! 籠りの準備は必要だけど、わざわざ薪づくりをタクがやんなくてもいいじゃんか」


 遠出を禁止されたタク。

 もちろん親方はタクの行動にため息をつくものの、基本的に制限はしないので、タクが本気になったら持ってる馬でただ遠乗りするだけだったら許してくれるかもしれない。

 もし狩りに行ったら馬を潰すとは言われているため、そうなる危険がある遠乗りはタクもしないだろうが。


 「今年も孤児院では回復薬作るのか?」

 「ああ、うん。今年はアルテと僧兵様が居るから自前の材料で作ってみようかって話になってる」


 教会は目上の者、特に身分が上の者に対しては様をつけろという教育がなされているので、アルテは何の疑問もなしに見習いではない僧兵を様付するのだが、当の本人と、その見習いのテトラは困惑気味だ。

 僧院では、戦う意思のある者を遠慮なく迎え入れ、自給自足を念頭に全員が家族であるかのように接するため、普段から様付などしない。

 困惑してもこれから長い間この町の孤児院にお邪魔することになるのだから、嫌でもなれることになるのだろうが。


 「タク、薪割りはやるから、枝払いだけにしてくれ………」

 「それは悪いよ………」

 「いや、体を壊したら大変だろ? アルテもなんか言ってくれよ」

 「そうだなー………タク、お前、一応まだ九なんだから、もう少し年上の俺らを頼ってくれ」


 遊びに来たと言ったのに、結局仕事の手伝いに来たものじゃないか、とタクが愚痴をこぼし、それに二人がひとしきり笑った後に作業が再開された。


 「そう言や聞いた?」

 「何を?」


 タクが枝を小剣で落とし、アルテが一本になった丸太を鋸で適当な長さに切り落とし、テトラが斧で八等分に割っていく。

 孤児院でも薪づくりは子供の仕事だったし、僧院でも薪づくりは見習い以下の戦闘慣れをするために、斧の扱い方を学ぶ機会として取り入れられていたことで、三人の行動に迷いはない。

 無駄話をしていてもその手の動きが止まらないくらいには慣れているし、


 「お触れだよお触れ。孤児院にもこの前来てさー」

 「ああ、タクのとこには来てないんじゃないか?」

 「そっかー」

 「だからなんなんだよ? そのお触れ? ってやつ」


 アルテは、わざわざ孤児院にも騎士様がいらっしゃって、全ての民に水晶玉を触らせろというお触れを提示してから、成人前に見えるような者に全員触らせたという話をする。

 来たか? という問いに、タクはそんなの来ていないとしか答えられない。実際ずっと家にいると言うのに、タクとテトラ以外が訪ねてくることもないのだ。


 「それなんだけどさ」

 「うん?」

 「あ、テトラ言うなよ!」


 まだアルテが切り落とせていないのをいいことに、斧の柄の部分に顎を載せたテトラは、ニヤッと笑ってタクに言う。


 「アルテさ、未成年の、しかも十歳以下の場所に並んでも違和感を与えなかったんだぜ」


 アルテが切り落とした丸太を、真っ赤な顔のままテトラに投げつけるが、テトラは顔色を一切変えずその丸太を受け取ると、至って普通に薪割りを再開する。


 「アルテ………」

 「なんだよ………」

 「ご愁傷様………」

 「うがー!!」


 今度笑うのはタクとテトラ。

 反論したそうに言葉を探すアルテだが、年齢通りの身長と少し幼げな印象を出すテトラと、自分より背が高いのに年下で、むしろそれをありがたいとさえ思っているタクに反論できる言葉がなくて口を何度がパクパクとした後、真っ赤になって口を閉じる。

 その姿にさらに笑いを大きくするタクとテトラ。

 二度目に投げた丸太は、盛大にテトラに当たった。


 □■□■□


 家にいきなり王城への召喚状が来たことを、エドワル当主は困惑していた。

 いくら国を代表する商家とは言え、同じように有名な二家とは違いエドワルは貴族相手ではなく平民相手の商売を手広く行っている家だ。そりゃ細々と縁のある貴族に商品を流してその縁を継続させるなどと言うことはしているが、後ろ暗い行為などその程度で、大々的にそれを行っているがなんの目も当てられていない他の二家が呼ばれず、なぜ呼ばれるのか分からないと、頭を悩ませていた。

 王城に足を踏み入れるのは当主交代の時以来だが、行く先が応接間など本来貴族しか足を踏み入れない場所に行けるのだと高揚する気持ちはないわけではなかったが、進むうちに疑問が増えて言って、どんどん顔が青くなっていく。


 「もしお取り潰しとかだったら………」


 目の前で自らを案内している騎士が居ると言うのに、まだ若いエドワル当主はそう呟くのを止められなかった。

 騎士の足が止まったのを見て、目的地に着いたと知り、粗相がないか、服装は正しいか、自らを見つめなおす。


 「エドワル当主、キュリエズ・エドワルをお連れしました」

 「入れ」


 動かないキュリエズに、騎士は目配せをして、中へと入れる。


 「商家エドワル、本家当主キュリエズ・エドワル、参上しました」


 騎士はそれを見届け、宰相に命令された通り、部屋から出ていく。

 扉の厚さはかなりのものであるため、扉の前でもしもの時に備えて立っていても何も聞こえないだろう。

 最高の礼をしたまま動かない宰相からしたらまだ青年と呼べなくもないキュリエズを見て苦笑しながら、宰相も立ち上がり、向いに座るように促す。


 「いえ、私は一介の商人でしかありません。貴族の方と席を同じくすること、ましてや眼前に座ることなど許されている立場ではございません」


 キュリエズは何とか言葉を絞りだし、頭を下げたまま、地面に座り続ける。いくら商人と貴族の立場がほぼ同等に扱われるこの国とは言え、商人と上級の貴族の間には越えられない壁が存在しているのだ。

 本来は商人であるキュリエズが自らの意志で発言することさえ不敬にあたるほど、宰相の実家は高位であり、宰相と言う立場は更にそれ以上の価値があるのだ。

 もしかしたら首を刎ねられるのかもしれないと、キュリエズはぐっと目をつぶり、家族を思い出す。


 「ここに私と君以外の人はいない」


 逆に宰相からのキュリエズに対する好感度はぐんと上がっていた。宰相が知る商人とは、がめつく、失脚を狙う貴族の手となり足となる者たち、という印象が強かったのだ。

 簡単に顔を上げず頭を下げた状態から動かずに、不敬なことをしたくないと言うキュリエズに好感を抱かないわけがなかった。


 「今回は君に直接聞きたいことがあって登城してもらった。エドワルというのは貴族相手にはあまり商売をしていないと聞いて、今回このような手法を取らせてもらったのだ。もし勘違いさせてしまっていたらすまない」


 もし宰相がお忍びでもエドワルの家に行っていれば、それを目ざとく見つけた他の貴族が宰相に取り入る為に商家としてのエドワルにかなりの負担をかけるのではないかと思った宰相なりの気遣いだったのだ。

 結局のところ、今度はどんなお達しがされたのかと他の商家からかなり多くの圧力が加わることになるだろうが、商売相手が違うので、何とかなるだろうと宰相は判断した。


 「顔を上げ、向かいに座ってほしい。今回は商談ではなく、私が個人的に君と話をしたいだけなのだ」


 ゆっくりとキュリエズは青い顔を上げ、少々ビクビクしながらも、高級なソファーに腰かけた。


 「さて、今回聞きたいのは、三つある」

 「はい」


 ある程度の説明を交わした後、宰相はそう切り出した。


 「まず一つ目。君の娘のことだ」

 「はい………娘が、何か?」

 「彼女は『夢』を見たと言っていなかったかい?」

 「『夢』、ですか?」


 今現在、お忍びで訪れていたフィデリントに連れられて家を去ったクリュエルだが、キュリエズは彼女がどこへ行ったかを把握しているわけではない。

 しかし、『夢』についてはちゃんと聞いていた。そんな変な夢を見ると言うのはやはり異常なのではないかと治療院にも、薬屋にも相談に行っていたのだから、宰相は簡単に情報を集めることができたのだ。


 「見た、と言っていましたが」

 「ならば、『夢』を見る前と見た後で違いはなかったか?」


 キュリエズは、少し考えた後、娘のクリュエルは以前よりも自分で考えるようになりました、と答える。

 当時十歳だったクリュエルは、その夢を見たひと月ほど後、盛大に十歳の誕生日会を行い、数日後訪れたサバガマナと言うフィデリントの魔導師について行ってしまったのだ。


 「『夢』の影響だったか?」

 「そうですね。娘は『白』だったと言って、『黒』と『灰』を保護しなければと、家を出ていくとき息巻いていました」


 宰相は、このキュリエズの発言で『灰』と言う存在を知る。


 「では二つ目、今現在働いている者の教育は、前当主が?」

 「はい。叔父が教育を担当いたしておりました。本家で教育した者を分家などに送っています」


 もちろん外部から雇っている者もいますが、と告げるキュリエズ。頷く宰相は、必要なこと以外を聞いていない。


 「最期に三つ目。今分家と本家の仲がよろしくないと言うことを聞いた。家の中でいざこざが起きること自体は別にどうでもいいのだが、それが国に影響するといささか問題にしなければならないが?」


 半分本当で半分嘘だ。


 「問題が起こることはありません」

 「なぜそう言い切れる?」


 キュリエズは始終青い顔だったが、少しだけ口の端を吊り上げ、笑う。


 「宰相様の御気になさっているのは、うちの使用人の戦力でしょう。ガラムの使用人がこと戦闘に置いて優秀であったからこそ、国に弓を引くとお考えになられたのではありませんか?」


 質問を質問で返すのは不敬だが、商人が国を乗っ取ろうとするのではないかと考えているのだろうと思ったキュリエズはそう宰相に返す。


 「真に残念なことではあるのですが、ガラムに行かせている使用人のほとんどは我が本家にその身を捧げております。家の中のいざこざが起こった場合、分家の存在はなくなるでしょう」


 いくら素直でも商人が商人であることに変わりはないのだな、と宰相は試した非礼を詫び、これで質問は終わりだと切り上げる。


 「では。失礼いたしました」


 キュリエズが帰った後、宰相はソファーに深く座り直し、さらに情報が増えていく子供たちの一覧に目を通す。

 首都で『夢』を見たと確認が取れたのは二人。ギーズの倅とエドワルの娘。倅が『黒』で娘が『白』。彼らはこの街で生まれ、ギーズの倅は魔物となり、娘はフィデリントの高名な魔導師と共にある。


 「色が何か関係しているのだろうか………」


 宰相は、持っている表を睨みつけながら、考える。

 しかし、情報が足りず、何を考えればいいのかさえ分からなくなる。


 「ふぅ………」


 騎士が持ってきてくれた濡らした布を目に当て、少し休憩をはさむことにした宰相。沈みきるまで彼が考えていたことは、どうやって王に十分な休息を与えたらいいか、ということであった。


 ■□■□■


 朝日が昇る。

 洞窟の外で一頭の獣を仕留めたシノは、火を起こしているだろうスペーラの元にその獣を引きずりながら戻る。

 人の気配がした為、十分に血抜きができず、シノの機嫌が少々悪いが、近くて話していた内容に、少しシノの足は早まっていた。


 「お帰りなさい………機嫌、悪いですね?」

 「ただいま」


 まだ少しぐらいは血抜きができるだろうかと、シノは洞窟の奥で獣を吊るし、内臓を全て取り出し、外へと捨てる。


 「えっと………火は起こしましたよ」

 「ん………鞣すのやる?」

 「教えてくれるのなら」


 どうせ数日はこの洞窟で過ごして、十分に食料を貯めてから国越えをするつもりなのだ。十分に時間はある。


 「スペーラ」

 「はい。なんですか、シノ様」

 「三日後、越える」

 「分かりました」


 スペーラは水を汲みに洞窟から去り、シノは獣の皮を丁寧に剥いでいく。すこし血管が見えることに眉を寄せたシノだったが、いつも通りの無表情に戻り皮をきれいに剥いだあと、脳を取った首や手足を外へと捨てに行く。

 既に作ってあったスープの横で、三日間食べる分の肉に香草を塗りこめ、葉でつつんでそこらへんに積み重ねて放置する。花の季節を少し過ぎた頃の今、出てくる虫は少し多いが、虫よけの草汁を洞窟の入り口から外まで撒いているのと、初日に煙で虫を殺したため、肉に寄ってくるような虫はいない。


 ―――『夢』を見た子供が返ってこないんだと


 その『夢』とは、やはり自分も見たものなのだろうかと、肉を焼きながらシノは考え、少し焦げてしまったがスペーラが気が付かなかったことに、スペーラの舌はあまり感度がよくないのかもしれないと考えるのであった。


 「シノ様、本当にここを降りるんですか………」


 そして三日後、スペーラとシノは、クロともう一頭の馬の手綱を引きながら、断崖絶壁に来ていた。

 今シノが進もうとしているのは、この中で一番大きい黒がぎりぎり通れるほどの道幅しか確保されていない。

 もし下に人が居ても、その姿がまったく見えないほどには高いその場所で、シノはスペーラに一つ頷くと、すたすたと進んでいく。クロも、シノの後に悠然とついて行くのを見て、スペーラは少し自信を無くすが、下を見ないようにとゆっくり進んでいく。

 途中で何度も足を滑らせて落ちそうになり、そのたびに馬の手綱に助けられ、後ろの馬から同情の視線が送られているような気になりながらも、スペーラは一歩一歩確実にその断崖を降りていく。

 途中にあった洞窟で休憩し、土を踏みしめたのは三日後であった。


 「ふぅ………」


 明らかにシノの用意した料理や調理済みの食材が多く感じたスペーラだったが、こんな場所を数日費やして降りるということを想定してのことだったのかと、スペーラはその先見と、言っておいて欲しかったという不満とを一つのため息に込めて吐き出す。


 「スペーラ、すぐそこに村ある」

 「あ、はい。なんでそんな元気があるんですか………」


 颯爽とクロに跨ったシノは、スペーラが馬に乗ったのを確認して走り出す。その後ろ姿を追いながら、やっぱりシノとクロは明らかに規格外な存在なのだとスペーラは認識を新たにした。

 こうしてシノとスペーラは、商業都市国家ディルエバーズから、農耕国家シシラギヤに入ったのだ。

 ディルエバーズからシシラギヤに入ったシノ。

 次も、シノ→少し過去に戻って国の話→シノ、のように話は構成されていくはずですのでー? よろしくお願いします。

 さてさて、この先旅はどうなるのやら。

 次の話はシシラギヤのお話ですよー


 ディルエバーズはここまでの物語で分かったように、国内に居る『夢』を見た子供たちを殺す為に首都に集めます。

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