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魔王選定  作者: 華宵 朔灼
第三章 少年編・生きる
71/113

21 区切りの歳

 BGM聞きながら書いてると、そのBGMの雰囲気に引っ張られる。

 世界蛇(ヨルム●ガンド)のOST流してたら、戦で引き裂かれた兄妹が、貴族とその使用人として再会する話が出来上がってた。

 無駄に戦闘シーン多くてものすごいびっくりしたけど、半分意識が飛んでたらしく時系列がめちゃくちゃだった………


 六十九話、はじまります

 十歳。

 それは、この世界で生きる者にとって、区切りの年である。

 十歳を迎えたちゃんとした身分のある少年少女は必ず里長の元へと向かい、自らの魔力量と、魔力の質を調べ、一人前になるべく、親元を少しだけ離れて奉公という形を取って修行する。

 ひと月三十日、二十ヶ月が一年、大まかに四つの季節に区切られ、明るい陽気の花の季節、日差しが暑い水の季節、山が色づく葉の季節、凍えるほど寒い雪の季節。それぞれでまた小さい季節の分類はあるのだが、たいていはこの四つの季節に分かれて子供たちは里長のところへと呼ばれ、自らのタグを二枚に増やす。

 

 「さて、皆十歳おめでとう。これで君たちも大人になる第一歩を踏み出すことになったわけだ」


 集まった子供たちは十人前後。

 皆新しく始める職場での生活に夢を膨らませこの場に居る。


 「これから君たちが保有している魔力を計る。名前を呼ばれたら衝立の後ろに来なさい。そこで希望する奉公先も聞くから、ちゃんと答えられるようにしておくこと」


 当然ガラムでは、冒険者ギルドの奥にあるちょっとした集会場でそれを行う。

 保有魔力の測定は全ての里に義務付けられていて、高い値をはじき出した者は、魔術師になるべく数年首都で魔術について学ぶことになる。

 保有している魔力量が多くても、魔力操作が上手くできずに魔術師になることを断念する者も多いのだが。


 「どこに奉公するか決めた?」

 「俺はねー、あの商店に奉公するんだ!」

 「私は野菜売りのおじさんのとこ!」


 十歳という年齢になって求められるのは、ちゃんとした金勘定と、自分の感情を抑えて仕事をすることができる、ということぐらいだ。

 だから大抵の願いは聞き届けられるし、聞き遂げられない願いとは、あまりにも身分を考えていない大それた願いぐらいだ。農民が貴族になりたいとか、商人の子で腕がない癖に騎士になりたいだとか、そういうことは一切認められない。


 「なー本当にお前十歳?」

 「は? 十歳だよ。ちょっと身長が伸びすぎちゃっただけだし」


 そんな中、タクは小さい同い年の子供たちに囲まれて、どう見ても保父さんとしか言えない状況に頭を抱えていた。


 「ターキュギレム・ガランデナーグ、来なさい」

 「はい」


 一番最後に呼ばれたのはタク。

 身分の順番で呼ばれるため、タクと同じ季節に生まれたとされる孤児院の子供がいないことで、一番最後は狩人の息子であるタクである。


 「そこの水晶の上に手を乗せなさい」

 「はい」


 タクは、すこしドキドキしながら水晶に手を乗せる。

 二年前も水晶に手を乗せて新人冒険者になったのだが、その時水晶はそれなりに強く輝き、緑色の光と青色の光が混じり合うようにして消えて行った。


 「ふむ………それなりにあるようだな」


 今回も同じように輝くのだが、それなり、という言葉を聞いて少し落ち込むタク。それなり、しかないのかと落ち込んだタクの耳に、後ろで感嘆する町長の補佐の声は聞こえない。


 「魔術紙で大体の魔力量と魔術適正を計っとくかい?」

 「いえ、いいです」


 それなり、という単語に当てられたタクは、紙を使ってさらに低い値が出たらたまったもんじゃないと勢いよく首を振る。

 もったいないと町長がため息を吐くが、それを面倒くさい奴だと思われたのではないかと内心ビクビクのタクである。


 「さて、君の奉公先は決まっているのかね?」

 「はい。っと言うより、冒険者になりたいと思ってます」


 タクの言葉に、目を丸くする町長。


 「町を出るのかい?」

 「はい。本当は旅商人に奉公して国を巡ろうと考えてたんですけど、別に奉公しなくても大丈夫かな、と」


 肩をすくめて見せるタクは、どう見ても成人以上にしか見えない。

 すでに身長はかなり伸び、大人と並んでも遜色ない身長と体付きを得ている。


 「確かに体格は問題ないが………」

 「剣は親父に鍛えてもらいましたし、文字は理髪屋のエイファさんたちから教えてもらって、大抵の本は読めますよ」


 聞かれる前に、とタクは続ける。


 「ランクがDになったら、お金をギルドに預けることができるようになるんですよね。なんで、Dになるまではこの町で活動して、Dになったら町を出たいと思ってます」


 そこまで考えているなら心配する必要はないだろう、と更新の手続きをするようにタクに言って、タクと共に衝立から出る。


 「それでは、町の料理人の腕によりをかけた十歳記念の料理を食べに行こうか」


 皆、わーい! と喜んで町長の後ろを付いていく。

 町の料理人とは、有志ではなく、ちゃんと給料も払った上で町が頼みに行ってるから、普通の家ではなかなか食べることができないかなり豪勢な料理になっている、のだが。

 その料理長がシーブである為、タクにとっては知っている味で、試食もしているから、どんな料理が並べられているか、その料理がどんな味で、どんな風に飾られているのか、ということまで知っている。

 それでも数多くの料理が大きな机の上にきれいに並べられている様はなんとも壮観、と言った感じで満足はできるのだが。


 「どーだ、俺の料理は」

 「一人で作ったんじゃないでしょーに」


 子供たちが見たこともない料理に目をキラキラさせて頬張っているのを尻目に適当に気に入った料理を咀嚼していると、シーブがタクを見つけて寄ってくる。


 「まあまあ。旨いことには変わりないだろ?」

 「そうですね」


 並ぶ料理はこの土地に伝わる郷土料理から、首都に行けば食べられるかもしれないフロウェルやフィデリントの料理なども並べられている。

 その中で一番目を集めているのは、もちろんシノとシーブの努力の結晶である、前の記憶にある料理なのだが。特に甘味は余ったら食べられるギルド関係者がギラギラとした目で狙っている。


 「そういや、本当に冒険者になるのか? 旅商人って言ってたのに」

 「そうですね。冒険者になろうと思います。やっと親父から一本取れるようになったんで、少しは腕が立つはずですから」


 ランクA目前で辞めた親方から一本取ることができるというだけでも普通ではないのだかなぁ、と思うシーブだが、自分の発言で上昇志向が消えても責任が取れないため何も言わない。


 「出発するときは必ず連絡しろよ!」

 「はい」


 シーブは料理長としてまだやることがあったらしく、町長に呼ばれて裏へと消える。


 「お金を貯めないとな………」


 ティレーに誘われ旅商人になろうと思っていた理由は、知りたいことを教えてもらうという条件と、この世界を見て回りたいという思いが合致したから了承していたのだが、残念ながら知りたいことはシノの母、リリーの手記によってほとんどわかってしまっているので、今更旅商人にならなければならない理由がなくなってしまったのだ。


 「新たな門出を祝って!」


 そんな祝辞を背に、タクはギルドから姿を消した。


 □■□■□

 

 尻尾を左右に揺らしながら、その獣人は木の上から町を観察していた。


 「もう二年たったかにゃー」


 その顔は嬉しそうににやけており、尻尾の振り方も左右から、丸まったり伸ばされたりとせわしない。


 「テルディーレ様は喜んでくれるかにゃー?」


 するっと、物音を立てずに山へと下りたティレーは、浮かれて囲まれていたと言うことに気づくのが送れた。


 「誰にゃ?」

 『薄汚い獣人風情が、(わらわ)の森で勝手気ままに行動しおって』


 後ろを振り返ったティレーが見たのは、自分を取り囲む獣の沢山の光る双眸。


 「怖いにゃー。許可何てとる必要にゃいでしょー」


 その光る双眸の後ろに控える、大きな、灰色狼に笑顔を振りまく。


 「森はみんなのものなんだからー」


 くるくると、眼光も威圧もものともしないティレーだが、周囲の獣たちはそれをただ眺めるだけで、特に何の反応も示さないことに不信感を覚える。

 草食から肉食から雑食まで、さまざまな獣がその場でティレーをただただ見ているのだ。しかもよくよく目を凝らしてみれば後ろの方で魔物も同じようにティレーを見つめている。


 「………僕が目障りなのかにゃー?」

 『目障り極まりない。とっとと国へ去れ、人間に与した愚かな獣よ』


 灰色狼が唸り声と共に、思念と化した声を直接ティレーの頭の中に叩き込む。思念だと込められた感情がもろに伝わるので、ティレーは体毛を逆立てて唸る。


 「僕には、任務があるから、去ることは、できないにゃ」


 それでも、愛しのテルディーレによくやったと頭を撫でてもらうためだけに受けたこの任務、途中で投げ出すことなどできないのがティレーだ。


 『そうか。(おのこ)に近づくならば、お前も死ぬがいい』

 「所詮魔物! 僕の邪魔はさせるものか!」


 ティレーは、刺さる目線をものともせず一歩踏み出す。

 むしろ戦闘と言うことに関して人間よりも数段階上の性能を持つ体を持つ獣人としては当たり前の戦闘本能に酔って、その喉笛を噛みきろうと体に力をいれる。

 しかし、力強く踏み出した足はその場から一歩も進まない。

 敵から目を話すのが愚かな行為だとしても、ここから動けないのでは意味がない。ティレーは予想外の事態に対処しようとして下を見るが、そのに自分の足はなかった。


 「にゃ?」


 瞬間ふわりとティレーを襲った浮遊感。

 ズンッと衝撃と共に体の落下は止まるが、体から何かが抜けて行く感覚がして、その位置から動けず、その目に胸を貫く蔦のような何かが見える。

 動かし難い首を懸命に動かして目の前に目を向けると、そこに、絶対的な山の王者がいる。


 『私に向かってくる時点で馬鹿という評価しか与えられないな』


 その瞳は、ティレーを映しているようで、映していない。

 山の主である灰色狼の目に映っているのは、山で好き勝手していたただのゴミでしかないのだ。


 『つまらん』


 既に生気をなくしたティレーの亡骸は、蔦が自らの栄養にしようと地面へと引き摺り込んでいる。数時間もすれば、骨まできれいに跡形もなく片付くであろう。


 『長、呼ばれましたか?』

 『近くに』

 『はい』


 大きい灰色狼の元に、姿形は同じで更に小さくし、灰色の毛皮を青みがかった銀色の毛をした、銀色狼とでも言えるような獣が寄る。

 近くに着た銀色は、灰色狼を見上げると、小首をかしげる。

 かなり大きな灰色狼と比べると小さく見えるが、その銀色も馬車程度の大きさである。


 『お前は、男について行け』


 灰色狼は、銀色の、灰色狼と同じ金色の目を覗き込んで伝える。


 『道を踏み外そうものなら、その首を噛み千切れ』


 灰色狼は、銀色の鼻先に自分の鼻先を合わせて目を閉じると、灰色の体から淡く光るものが浮かび、少しずつ銀色の体に吸収されていく。

 発光が終わった後で姿には姿形に変わりはなかったが、銀色の存在感が圧倒的に増していた。


 『はい』


 銀色は承諾の証に、ふさふさの尻尾で地面をたたく。

 ふわっと舞い上がった色とりどりの木の葉が地面に舞い戻るころには、灰色狼の姿も、銀色の姿もなかった。

 ただ、地面には赤黒いかなりの量の出血の後と、それを囲うようにある様々な獣の足跡が残っている。

 ガラムの北の山。

 雪の魔物に蹂躙されたはずの山は、山の主が居る限り枯れることはないだろう。山の主である灰色狼が、馬鹿で考えなしの人間に討伐などされなければ。


 ■□■□■


 ギルドで適当な討伐依頼を受けてきたタクは、得物を取りに南の森に帰ったのだが、馬を使おうと考えて歩いていた時、その気配に気が付いた。


 「………誰だ?」


 風が梢を打ち鳴らし、木の葉が舞い散る南の森。

 木の葉が散り始めたこの時期だからこそ見通しが良く、近くに誰かが居れば見落とすことはなかったはずである。


 『約束、守りに来た』


 馬を入れるためだけに家の横に増設した厩舎の影から一人の少年が出てきた。髪の上からピンとした耳が出て、静かに垂れている尻尾は髪と同じ銀色に輝いている。


 「………獣人?」


 約束という言葉に心当たりがなかったタクが、その言葉を発した瞬間、その少年から圧倒的な殺気がタクを襲う。

 その余波で家の近くに立っている木からは多くの鳥が身に危険を感じ飛び立ち、家の中に居た狩人はその場で己の武器を手に取り、いつでも行動を開始できるように音を立てず警戒する。


 『………』

 「ごめん、約束ってのが分からないから、できたら説明して欲しいんだけど」


 親方と訓練していたタクにとっては、それなりの殺気だが、別段堪えて言葉が話せなくなるなどという弊害はない。


 『長から、手紙』


 銀色の少年はどこからか封筒を取り出し、タクへと渡す。


 「巻き三つ折り………」


 香りの好いお香がその紙に染み込んでいて、文面は、これまた懐かしい流麗な日本語で書かれている。


 「達筆すぎて読めない………」

 『………』


 結局よくわからないと、少年を見返したタクは、その少年に手を引かれてしゃがまされる。


 「え? ちょ、何?」


 シノよりも無表情のその視線が何を言いたいのかは、タクにも分からない。ただ、ここで逆らったら絶対に噛みつかれると思ったタクは、なされるがまま少年に身を任す。


 「口開ければいいの? んぅ!?」


 喋らない少年は、タクの下唇を押して口を開かせ、口の中に白い石のようなものをねじ込む。

 咳き込んで吐き出そうとしたタクだが、少年の華奢な体から出ているとは思えない力に抑え込まれ、指を噛むわけにもいかず、その石を嚥下する。


 「げほっ………えっと、何飲ませた?」


 吐き出そうとしても、まるで体に溶け込んでしまったかのように石が通った違和感は消えている。


 『魔石、僕の』 

 「はい?」

 『読める、手紙』


 ずいっと差し出された手紙は確かに読めた。


 「灰色狼………あー雪の魔物の時の。確かに眷属がどーたら………君の名前は(カエデ)って言うのか。えっと、俺の眷属にって書いてあるけど、いいの?」


 こくっと一つ頷いた楓。


 『それを長が望むなら』


 タクはため息をつく。


 「とりあえず、念話は緊急手段。その恰好で旅についてくるなら、人の言葉をしゃべること」

 「………わか、た」


 喋りなれていないというのがありありと分かってしまったため、これは金を稼ぎながら言葉を教えなければともう一度ため息をつく。

 手紙に書かれていた内容は三つ。

 一つ目はいつ出合ったか忘れているのではないか、ということで、自分はあの時の灰色狼で、北の山を守護している魔物だと言うこと。

 二つ目は、眷属である楓の扱いと、用法用途に関しては問わないが、一個人と接してくれると大変ありがたい、と言うこと。

 三つ目が、お迎えの旅商人は多分これないと思うから、普通に冒険者になる方が無難でいいと思うわ、と言う結構親身な意見だった。


 「えっと、今から依頼で狩りに行くんだけど、一緒に行く?」


 こくっと頷いた楓は、ふとタクを見上げる。


 「ん? 何?」

 「のる?」

 「えっと、そうだな、今日は念話でいいや。何言いたいか全くわからん」

 『乗ると良い、背中』

 「おぶされって? 冗談はよ、せ………うそー」


 楓の姿が一瞬発光したかと思うと、次にその場にいたのは馬よりの一回り大きい銀色の狼の姿。

 馬が恐怖で立ちながら失神してしまったのを横目ですまんと謝りながら、タクは楓の背中に乗って南の森の奥へと進んでいく。

 受けられるのはEランクの採取依頼ばかりだが、魔物を討伐して素材を持ち帰ればお金になる。


 「クロより早いな!」


 半年後、花の季節。

 タクは銀色の髪をした獣人の姿形をした少年とガラムを旅立つ。

 現代文は得意だけど、語学になると苦手な自分は結局灰色狼の長さんが書いた文章を書き起こすのを諦めた。

 無理。


 三章はここで終わりの予定だが、四章の予定が一切決まっていないという現状。まったく、どうしようか。

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