09 新しい出会い
たまーに感想とか書いてくれる人が居たりして、そのたびにテンションあがってキーボードを打つ手が進むんだけど、なんでかな?
勝手に再起動を始めるPC君。
なんど書き途中の文章がPC君の気まぐれで消されたか………
五十六話、始まります!
きっと慌てている、そう思って、襟を立てた防寒具の中で小さく笑う。
「ざまぁ」
カールは、縛られるのが嫌いだった。
誰かのレールの上に載っているという感覚が嫌いだった。
本家の娘というだけで成功した気になっているクリュエルが嫌いだったし、優しい声をかけてくる本家の父親の兄夫婦が嫌いだった。もちろん肥え太った父親を見るのも嫌だったし、気持ち悪いぐらいかまってくる母親が嫌いだった。
嫌いな連中が話す嫌な場所は、なんともすっきりしたものだ。
流石に奴隷に手を出すことはできなかったが、父親が暴力を振るっている少女を玉のように蹴り飛ばしたときの快感は、なんとも言えないものがあった。
「さて、あまり長居はできないな、コレ」
仕方ないと息をつく。
吹雪というものの知識はあったが、それがどういう物なのか体感してみたいと思ったのに周りが止めるから仕方ない。こうするしかなかったのだ。
そう自分を納得させ、吹雪の中高揚する気持ちの赴くままに歩き回る。
―――…………
聞こえたのは、獣のような鳴き声。
「恩でも売れるかな」
牧羊犬でも逃げ出したのかと、カールは声の方へと歩きだす。
□■□■□
体の痛みに目を覚ましたアキが見た色は白だった。
何もない、そんな白。
「いだぁい………」
体は動かし辛いし、できるなら動きたくない。
尻を突出し、顔を横に向けて倒れているアキは、聞こえた獣の唸り声で完全に意識を覚醒させる。
勢いよく後ろを振り向きそれを見たことで、アキの意識から体が痛かったことなど吹き飛んだ。
そこにいたのは本能的に嫌悪する獣だった。
体のあちこちから煙を吹き出し、満身創痍と言った獣だが、なんとかアキを狙おうとして、ぎりぎりアキがトゥーラエの加護に入ってしまっているから食べれないが、それでも食べたくて身を乗り出し、身を引きを繰り返している化け物。
「う、うわぁああぁあぁぁぁ」
冷静だったら、絶対に襲ってこないから逃げようと思っただろうが、アキの頭には「食われる」という考えしか浮かばなかった。
腰につけた短剣はまだそこにあったので、短剣をだして、その化け物の鼻先につきつけようとへっぴり腰のままなんども空を切る。
「うわぁああぁあぁぁぁ」
何度か空を切っていると、少しだけ鼻先にかすったのか、獣は雄叫びを上げてアキ一人その場に残して走り去る。
「大丈夫?」
へたり込んだアキに駆け寄る者が一人。
「だ、だれ………」
「カール・エドワル。商人の息子。凄いね、あんな化け物をそんな剣で退けた」
「か、カール。おれはアキ、アキ・」
「おい、アキ? アキ!?」
アキは寒さに耐えられず気を失う。
さっきまで元気よく剣を振り回していた子供が目の前で倒れるというのは、カールにとっても衝撃的なものだった。
一瞬冷静さを失ったカールだったが、すぐに避難場所に連れて行こうと思い立ち、アキを背負う。
「こんな綺麗な顔してんなら、貴族の坊ちゃんだろ。いい拾い物したなー」
帰ったカールはいつも通り猫を被り、アキの治療を指せる。
どうやってアキの親に恩を売ろうかと考えるカールの顔は、商人の家、エドワルの血筋であることがにじみ出ていた。
□■□■□
何度も来る化け物を潰し、切り裂き、貫いた。
親方は、合成獣の狙いが何か分からずすこし混乱していた。
以前倒した雪の魔物は、息子のタクが一歳の時。
仲間と妻を失ったその戦いのとき魔物は、明らかに腹が減っている、と言った風情で、攻撃するだけでなく食い散らかしていたのだ。
だというのに、この化け物は吹雪と共に移動して、敵意を雑魚に擦り付けて自分は悠々と何か別の目的があるかのように進んでいくだけ。
「シーブ」
「親方! なんだ! そっちに助けにはいけねーぞ!!」
「いらん。こいつら、変だ」
「分かってる! 近くを通り過ぎたことだって、変だとしか言いようがない!」
キモチワルイ音はすでに4人を通り過ぎ、山を下っていったのだ。
考える知能があるというよりも、何か目的があって、その通りに動いているのではないかと思えるその動き。
「町に、合成獣が入りました」
「!?」
勢いよく町の方面を振り返った面々が見たのは、吹雪の中でもはっきりと分かる白煙と、壁が壊されたのだと分かる轟音だった。
「メティ! この吹雪、いつ止むんだよ!!」
「確かに長い」
もうぶっ続けで戦い続けて、体力は底を尽きかけているし、途切れることのない敵の出現に精神的にも疲れ切っていた。
そこに止まない吹雪が拍車をかける。
親方の見立てだと、二刻程度で吹雪は止むはずだった。狩人は遠くに出かける分、天気の読みは誰よりも鋭くなる。だというのに、その予想を裏切って、すでにそれ以上吹雪が吹き続けている。
「もしかしたらだが! この状況を作り出してるのがあのバケモノなんじゃないか!?」
魔物が吹雪を吹かせているのだとしたら、効果範囲となっている場所から離れられればこの止むことのない敵の出現が抑えられるのかもしれない。
「あいつが向かってきた方向へ行けば、何かわかるんじゃないか!」
「メティ!」
「引っ張られて見ることはできなわ! ここはシーブの意見を確かめてみるべきだと思う!!」
「よっしゃ! 山登るぞ!!」
向かってくる敵を踏みつけて、とうとうたどり着いた山頂には、吹雪が吹いていなかった。
「予感てっきちゅー………」
吹雪を突っ切った瞬間に追ってこなくなった敵共も気配もすでになく、シーブは力なく降り積もった雪に膝をつく。
「今までいたか? こんな魔物」
「私は聞いたことないわよ。気候を操れるなんて………」
思い思いに休憩しながら、四人はこれからの行動を考える。
この吹雪をあの魔物が支配していると考えると、遠くから仕留めることはできないし、近くに行ってもあの手数じゃそう簡単に仕留められないだろう。
「いっそ、町捨てるか」
エヴァンスのその考えに頷くわけには行かなくても頷きたくなってしまう面々。
この町をあの化け物が蹂躙し終えて満足いくまで、トゥーラエの守る南の森の洞窟などに住まわせてもらえば、生きてはいける。
「だれもそれは満足しないだろー」
三人は既に住民が南の森に避難していると思っている。
なんせ、いまここに敵を同じとするはずの騎士団も、冒険者も居ないのだ。ここにいないとすれば町で人々を守っているはず。
それ以外の行動をしているなんて、ここにいる四人は考えもしない。
□■□■□
吹雪が吹き始めた町では、多くの人々が小金を稼ごうと、目先の欲に踊らされていた。
見つけた者に報奨金。
領主の命令は、何よりも優先される為、金に惑わされた人々は町中を走り回っていた。
「坊ちゃーん!」
「隠れてるなら出てきてくださーい!」
逃げていく人を尻目に、彼らは金髪の領主の息子を探す。
最初はただの降雪だったがどんどん強くなる吹雪に、ある者は耐えられなくなって家や宿へと逃げ込む。
「団長! 見つかりませんよ」
「探せ! 領主の息子だぞ!!」
「しかし、雪の魔物が………」
「雪の魔物が来ても南の森に行けばなんの問題もないだろう!」
騎士団は町中を探すが、誰も領主の息子の影を捉えられない。
騎士団が四苦八苦している中、治療院には、多くの人々が集まっていた。
治療院の中は人でごったがいしており、窓から外の吹雪を見ては、人々は不安そうに眼を揺らす。吹雪の中駆け回る十分な装備をした人々が駆け回っているのを見て、なんとも言えない顔をする人々。動けない者だったり、そう簡単にどこかへいけない者たちがここに逃げ込んできているのだ。
「ねぇ、アルテ。大丈夫かな………」
「大丈夫さ。魔物に対して治療院の結界は絶対だから」
「………本当に?」
「大丈夫だって! ですよね、神父様」
孤児院の子供たちは、そう言う簡単に動けない人々と共に治療院の中に避難している。
「そうだね。アルテの言う通り、治療院を覆う結界は、魔物が放つ瘴気を通さないから、魔物がここに来ることはないんだよ」
「そうなんですか! じゃあ安心だ!」
子供は上手く動けない人々の周りでいつもの笑顔で向かって行く。
孤児とはいえ、こんな状況でいつものように笑っている無邪気な子供のの姿というのは、すさんだ心に少しの安らぎを与える。少しの安らぎによって覚える感情は違うが、確実に場は和む。
「神父様、治療院の中なら大丈夫なんですよね?」
「ああ。皆を見て、必ず中に居るようにしてくれよ」
「分かってるさ、神父様」
ニコニコと笑いながら、アルテと神父様はそこで分かれる。
神父の利点だけを述べた物言いにちょっと不信に思いながらも、アルテは中に居れば安全はきっと保障されるのだと神父様に確認をとれたことで満足する。
「アルテ君、どこかな?」
「こっちだよー! エイファさん!」
シーブと共に治療院にシノを見舞いに数日だが来ていた為、孤児たちとエイファは面識がある。
「いたいた、アルテ君」
「どうも、エイファさん。エイファさんはなんでここに? シーブさんと一緒に避難されたんじゃ………」
料理人と理髪師、普通の人だったなら二人とも南の森に避難しているだろう。
「いやいや、うちの旦那は最前線よ?」
「え!?」
「タク君のお父さんと一緒に」
「ええ!?」
アルテは全くタクから聞いていなかった。
なかなか会う機会も作れないから会えないのは仕方ないが、このことは伝えてほしかったと、アルテの胸の中でちょっとした不信感が積もる。
「タク君、お父さんの代わりに南の森で避難者の補助を指揮するんだって。本当に頑張り屋さんよね」
「………そうですね」
不信感はすぐに消えた。
しかし同時に、南の森の狩人の扱いが基本的にひどいから心配になる。
タクは無事だろうか、とか。町民に無茶ぶりされてるんじゃないか、とか。危ないことしてないだろうか、とか。
「私ね、昔治療院で治癒術師を目指していたことがあってね。何かの手助けができるかと思って来たのよ」
「ああ、そうだったんだ。じゃあ、神父様のところに案内します」
「そうね、そうさせてもらうわ」
アルテは神父のところへとエイファを案内する。
■□■□■
吹雪の中、扉をたたく大きな音がする。
「どちら様でしょう」
「俺だ! カールだ!! 開けてくれっ………っと」
「カール様! お早く中に!!」
勢いよく開いた扉に転びそうになり、何とか持ちこたえるカール。
カールの背に何か背負われているのを見て、執事はあからさまに眉根をひそめる。
「カール様、拾い物をなされるのはいいですが、価値のない物でありますと、旦那様がお怒りになられますよ」
「はは、大丈夫さ。絶対に価値があるから」
執事の小言を聞き流して、簡単に体についた雪を払うと、背負ったそれを執事に渡す。
「奥に風呂が張ってあったろ。俺も後で入るけど、とりあえずコレあっためといて」
「コレって………人じゃないですか!」
渡されたものについた雪を払ってみれば、金色の髪と土気色の肌が除く。
まだ呼吸はしているが、寒さでそれもいつまで続くか分からない状態であることはだれの目にも明らかだ。そんな際物を渡された執事は動揺していた。
「そーだよ? 雪の中で剣振り回してた。早くあっためないと死んじゃうから、あっためてきなよ。………それとも、俺の命令じゃ従えない?」
コートを脱ぎ、近くに寄ってきたメイドの一人にコートを渡し、温かく湿った布で顔を拭きながら続けるカール。
「し、しかし、奥にはエドワル様方のみという話で………」
「ふーん、なら君を父上に報告しないとね」
「え?」
執事は、まだこの家に勤務して日が浅かった。
大抵直接主人に関わることは上位の執事たちがやっていた為、玄関を管理する、という大役を任され舞い上がって、初めて主人の一人息子のカールと直接会話したのだ。
「この俺を外にほっぽりだして報告も捜索も打診しなかった忠義者がここにいます、ってさ」
「わ、分かりました」
「早くしてね、俺もあったまりたいから」
「は、はい」
父親が父親なら、息子も息子である。
父親に怒られずに、何とか利益を説明し貴族だと思われる少年を起こすカール。
「もしもーし、起きてくれるー?」
「うん………はっ! 魔物は!!」
「君が対峙したじゃないですか。僕はカール。君の名前を聞かせてくれますか?」
「おれはアキ」
名前を名乗っただけだったが、カールは心の底で小躍りしていた。
領主の息子の名前がアキであることなど、町民にとっては周知の事実。
恩を売れるだろう相手が領主なのだから、これ以上いいことはない。
「あんな場所で一人は寂しかったでしょう。ここは安全です。ゆっくりしていってくださいね」
優しい声で、笑顔を作って、安心させるようにカールは告げる。
「うん………ひっく」
「泣いても大丈夫です。………この部屋から僕は出ましょうか?」
「いて! ここにいてくれ! ひとりは、こわいんだ」
「分かりました」
カールは抱きついてきたアキの背をとんとんと優しくたたきながら、これからの算段を笑顔で練っていた。
すうっとアキが寝たところで、カールは笑顔で凝った顔と体をほぐしながら両親の元へと向かう。
「どうだった」
「最大級の恩が売れます。あの少年は、領主の一人息子のアキです」
下種な笑い顔の父子が向かい合った。
性悪カール君と、自称勇者アキ君が出合いました!
そして、登場人物多いから話が終わらないよ?
おかしいな。二話ぐらいで雪の魔物に関する話は切り上げようと思ってたのに………。
名前が出てない名前ある方々はいったいどうしてらっしゃるんでしょうね?(白目)←まだ終われない雪の魔物回フラグ




