08 止めたくないから動く、ただそれだけ
友人に単語と主人公の性別と年齢を言ってもらって小説の設定を考えるっていうの、よくやってる(現在進行形)なんだが、設定資料ばかりたまっていって結局文章にできてない。
少なくともかなりの長編にできるのが三つぐらい手元にあるよ………
いつかかけたらいいなー
五十五話、はじまりますよー
雪の魔物の正体は合成獣。
しかし、もはや獣ともいえないその体躯に、本能的に恐怖する。
「―――っ、前八!」
「ああ!」
メティオノーラの声で、正気を取り戻した三人は、再度吹いてきた吹雪にその姿が隠れたのを見て息をつく。
その姿を見るだけで何かがごっそりと削られたかのような不快感が残る。
「どうする?」
「様子見、だったはずだけど………無理そう、だね」
襲ってくる魔物の仔を倒していると、吹雪に人の影が映る。
「援軍、か?」
「いや、それにしては人数が少ない………」
「違う………」
「どうしたメティ?」
「それは、人間じゃない!!」
叫んだメティオノーラの声に反応したように吹雪を突き破って近くに飛び込んで来たのは、騎士だった。
しかし顎がなくなっており、片目はつぶれ、片腕についているのは足だ。
「あの大剣は騎士団長のものだと思うぞ………意匠のこり方が普通とは違う」
つなぎ合わされた体。
騎士の鎧と、潰された団長の形見の大剣。
「町に、吹雪がつきました」
なぜ分かる、とはだれも言わない。
「これで、町まであいつの行動可能範囲か………無事に避難してくれてるといいんだが」
それぞれが重い浮かべる相手は違っても、思うことは同じ。
「………」
「メティ?」
「おかしい………こっちを見ていない?」
メティオノーラはどこか遠くを見ていた目を細める。
「狙いは、最初から………」
ゴウッ、と親方の振り下ろしたハルバートが頭から騎士もどきを砕く。
既に四人の周囲には、多くの屍が積み重なって雪を黒く染めている。
「こいつら、全部腐ってやがる………」
「合成獣が取り込んで、不完全ながら形を整えて吐き出したとでも言うのか」
「だろうな」
「あり得ないだろ! 魔物にそこまでの知能はない!! あっちゃいけない!」
薙ぎ払い、切り裂き、穿ち、読む。
そんな四人は、何かを引きずるような音を聞いた。
キモチワルイ音。
その音はゆっくりと彼らに近づいていく。
□■□■□
山が吹雪に覆われるか否かの時、一人の猫人と、一人の少年は、山の下にいた。
そんなに町から離れていない、だかどんな大声を発しても絶対に町には届かない、そんな場所。
「この山に雪のまものがくるんだな!」
「そうにゃー」
ゆっくりと、音を立てぬように、ティレーはコートの横についた裂け目から中に手を差し入れ、一振りの短剣を取り出す。
「『白』はこれからなにするにゃー?」
「これからー? 雪のまものをたおす!」
山を見上げたその碧色の目には希望が、少し離れて金色の頭を眺める桃色の目には嘲りが、どんどんと色濃くなっていく。
「違うにゃー、魔物を倒してどうなりたいのかにゃー?」
「まものを倒したら次のまものをさがしにいこうかなー」
「旅をするのかにゃー?」
「うん! 旅したい!!」
ティレーはしまおうとした短剣を、再び強く握りこむ。
「あ、でも、そのまえにやらなきゃいけないことがあるよ」
「それはなんなのかにゃー」
「あの『くろ』いやつらをころさなきゃ」
「………」
ピクッとティレーの耳が動く。
「あと『はい』もいちゃいけない」
「………」
ゆっくりと、短剣をもつティレーの腕が上がっていく。
「『まおう』なんていちゃいけない」
「………」
ティレーの尻尾は垂れているが揺れていない。
ティレーだけ時が止まったかのように動きを止める。
「『ゆうしゃ』のおれが」
「………」
「ただしいんだから!」
息を吐くと共に振り下ろした短剣は、無防備なアキのうなじに吸い込まれようとしていたが、まるでアキを助けるかのように突風が吹き、アキとティレーは木端のように飛ばされる。
そしてやってくる吹雪。
「うわっゆき!? ティレー! ティレー!!」
アキの簡素なマントでは当然吹雪を防ぐことなどできず、ただただ風にあおられるままに雪の地面を転がるアキ。
「うわっぷ! ティレー! 助けろよ!! あぐっ」
しかしアキの言葉に応える者はいない。
アキの体は何かに叩き付けられ、真っ白い雪にアキの意識は飲まれていく。その首もとの紐でつながっていたマントが雪の振り続ける大空へと舞い上がった。
■□■□■
タクは、今度は自分の足で、狩人の家々を回って人々の無事と、狩人の労いをした。
特に功を相したのが伝言で、最初はいぶかしげで、どこか借りてきた猫のようだった男たちも、妻や子供が無事と知ると、ほっとした顔になり、どこかとがっていた雰囲気が霧散した。
しこりはそう簡単に消えないだろうが、非常時においてはこの程度の変化でもありがたい。
「食料は足りてるか?」
「ああ、三日ぐらいなら全員食わせても十分足りるはずだ」
「ならよかった。早めにスープを作って食わせてやってくれ。料理人がいたらそいつに作らせた方がいい。俺らよりも格段にうまく作るだろうし、なにより信頼されてるはずだ」
「分かった」
狩人たちの料理は、決しておいしい物ではない。
味よりも量と質を求めているため、調理器具なんてのも、最低限のものしか揃っていないのが現状だ。
「香辛料はこれ使え。シノが残していったものだ、少なくともシーブが愛用してる味だから町の人は知ってるはずだ」
「ありがとな」
シーブの料理には、シノの痕跡がたくさん残っている。
シノが居なくなってから、まるで大きく広めるようにシーブは香辛料を広め始めた。最近じゃ町で食べるものの多くにシノ考案の香辛料が使われているくらいだ。
「タク」
「なんだ?」
「お前んとこだぞ、一番食料がないの」
「………そうだな」
普通は地下蔵に食料を貯めておく。
その地下蔵に人を収容できるということは、地下蔵にほぼ何も入っていないということを示すのだ。なのに、親方の家は、女子供を一手に引き受けているため、人も多く消費しなければならない食料は多いのだ。
「大丈夫なのか?」
「平気さ。なんとかできる」
「そうか」
「じゃあ、俺行くから。何かあったらすぐに伝えてくれ」
「分かった。頼む」
扉を開けて、吹雪の中に身を投じる。
なんとかできるといったものの、その言葉には、多分、という言葉がつくだろう。
多分凍え死ななければなんとかできる。
吹雪はどんどん強くなってきており、容赦なくタクの体を叩き付け、これでもかと体温を削っていく。
「狩人のタクだ。戻った、開けてくれ」
扉を開けると、出て行った時と同じ光景が広がっていた。
ただし、奥で血まみれだった男が子供たちとはしゃいでるその姿だけは違うが。
「ただいま」
「おかえりなさい」
あまりにも明るすぎる様子に驚き、つられて頬が緩みそうになるが、なんとか引き締める。
「なにか変ったことは?」
「なーんもないぜ。子供たちが遊んでくれるようになったことだけはっ、進展だなぁっと!」
「仮面男をつかまえろー!」
「つかまえろー!!」
楽しそうでなによりである。
「伝言は………」
「伝えてきました。彼がいた小屋の中に入ることはできなかったので外ですこし話してきましたが、伝わったかどうかはわかりません………」
素直に頭を下げると、女性たちが慌てる。
「そういえば、なんでこんなに避難してきた人が少ないんですか?」
「それは………」
戸惑った女性を、別の女性が止める。
「私が話そう」
その女性は自分がまだ駆け出しの冒険者で、近くの村から冒険者になりに来ていたことを明かした後、町で何があったのかを話し始める。
「私たちは中央広場で町中の警備をするために動いていたんだけど、急に緊急依頼が上書きされたの。領主の息子が居なくなったから探せって依頼に」
タクは眉間にしわを寄せる。
領主の息子と言えばアキしかいないだろう。
「この町の出来事だったから、先に避難するって人たちの補助をしながらテントまで来たんだけど、この仮設テントの側には誰もいなかった。荷物をテントの下に置いてしばらくしたら吹雪いて、今、ここにいる」
「そうですか」
つまり、町の中には多くの住民がまだ徘徊しているのだろう、ということだ。
吹雪に紛れてやってくる雪の魔物の脅威を軽視しているのか、金もうけを優先したからとかはどうでもいいが、助けるか助けないか、それが重要なのだ。
「そこまで、背負うこたぁねと思うぞ?」
そういったのは、冒険者の女性だ。
「お前、今町の中に入って避難させようとか考えてたんじゃないだろうな?」
「………」
「やめとけやめとけ。町の中にはそれなりに腕のたつ集団が居るんだ。そいつらに任せておけば大丈夫さ」
タクにとって、あの町は、シノが大切にされていた町だ。
暴力をだれかから振るわれていたシノが、平穏に暮らせていた町だ。
領主がどんなにダメなやつで、その息子がいなくなればいいと本気で思うような能無しだとしても、この町でシノが感じた思いは本物だ。それに、新しい友人が、初めての友人がいる町だ。
「そういえば孤児たちは?」
「どうした?」
「孤児たちを知らないか? 貧民街にある孤児院で暮らしている奴ら」
「ああ、多分治療院にいるんじゃないか? あそこは特殊な結界を張ることができるから、もし魔物に町を蹂躙されてもある程度は生き延びることができるだろ」
「………そうか」
安全な場所があるなら剣を振り回してるなんて無茶はしていないだろう。
それは安心できる。
タクは自分を納得させるように頷き、なんとか子供たちを説得して狩人と共に玄関の扉の前で話し込む。
「この家にある水も食料も足りない。いまからとってくるから、何とか時間を引き延ばしてくれ」
水が足りないことがわかれば不安が出るだろう。
不安に駆られた人が増えれば増えるほど、何をするか分からないのだ。
「はぁ!? おま、この吹雪の中何するってんだ!」
「井戸の氷を砕いて、ちょっと避難場所になってる酪農場まで足を延ばすだけさ」
「死ぬぞ」
今、室内にいると言うのに、タクは手を外に出そうとしない。
狩人はポケットに突っ込まれたままのタクの手を見る。
さっとポケットから引きずり出そうとした行動はタクに避けられ不発に終わったが、手がどうなっているかなんて、狩人にはよくわかってしまう。
「………死なないさ。この家の人の命を俺が預かる限り」
「………」
「とにかく留守を頼むな。」
そういって外へと出るタク。
ここら辺は深く掘らないと水が出てこないので、地下蔵をつくったりできたのだが、深く深く掘った井戸が一つだけある。狩人たちの筋力トレーニングにも使われるその井戸についている瓶は、かなり大きく、水が入ると少なくともタクと同じぐらいの重さになる。
「ぐぅ………」
一段階持ち上げるごとに、その重さが両腕にかかってくる。
いつもなら滑車に取り付けて引くのだが、吹雪のおかげで見事に滑車の台は壊れていて、今タクは井戸のへりに足をかけて、落ちないようにバランスを取りながら水を引き上げる。
家の外、暖炉の上に設置してあるタンクの蓋をあけ、そこに水を足し、いっぱいになったところで、そのちょっと休憩とばかりに腰を下ろす。
とても熱い。
吹雪いていなかったら、コートを脱いで雪の上に転がりたい。髪に積もった雪は解け、首筋を冷やす。すべり止めの付いていなかった手袋はすでにどこかへ飛んでいき、今手は赤く張れ、ところどころ裂けて血がにじんでいる。だが痛みは感じない。
「もう一息」
タクは立ち上がり尻についた雪を払うと、一刻ほど離れている酪農場へと移動する。
何度も転び、雪に埋まっていた石や木の枝が手や足を傷つけた。
何度も、なぜこんなことをしているのだろうかと自問自答するが、答えは出ない。やりたいという気持ちがなくならない、というのが答えになるだろうか。
「ここ、かな」
雪に埋もれて、柵などがなくなっていたが、温かい匂いが何となく感じられて、タクは酪農場についたことを悟る。
ギリギリ南の森に位置する酪農場は、貴族と商人の避難場所となっていた。中ではきっと金持ちの宴会状態になっているのだろう。
「頼む、開けてくれ! タクという!! 食い物を分けて欲しいんだ!」
「帰れ帰れ! ここは今エドワル様のものだ。こんな非常事態に貧民を助けている暇はないのだよ!!」
もっともだ。
「でしたら伝言を! この農場の持ち主に、アダラを一頭、タクという者が持って行ったと言ってくれればいいです! お願いします!!」
「はぁ? 何を言っている! おい!!」
タクは、人がいると思われる建物の横にある、家畜小屋に入る。
そこに人はいなかったが、通常であれば放されているはずの多くの動物が詰め込まれていた。
タクという人が来たことで、ここから出せとでも言っているのだろうか、騒ぎ立てるが、タクはそれを気にせず奥へと進む。
マメロの手前にアダラは居た。
死んだ場所によって肉の色が変わるという特性をもつ、栄養価がかなり高い食用豚の一種。
「ごめんな、生きるためなんだ、死んでくれ」
その肥え太ったアダラの一頭に狙いを澄まし、その場にあった物で投げ縄を作成し、捕まえた後、外へと連れて行く。
最初は吹雪におびえていたアダラだが、途中であきらめたかのようにおとなしく引かれるがままにタクにひかれながら付いていく。
タクは数か所で同じことを繰り返し、開けてくれた場所では少しの野菜をもらい、開けてくれなかった場所では近くにある野菜をかっぱらい、持って行ったことを伝えてほしいと言った。
「さぁ、お前の言葉はわかんないけど、あと一刻ほど頑張ってくれ」
うんともスンとも言わず付いてくるアダラに微笑み、タクは家へと帰る。
行きよりも深くなっている雪に少し不安に思いながらも、何とか自分の足跡を見つけながら、足の短いアダラが歩けるように均しながら進む。
途中で解体した後の肉を包むためにヴィーラの葉を数枚剥ぎ取り、野菜の入っている籠へと突っ込む。
一面の銀世界の中に家が見えたのは、自分の足跡を見失ってからも歩き続けてしばらくした時だった。
「今からお前を解体する。ありがとな、ここまで歩いてくるだけでも辛かったろ」
タクは、懸命に手を動かして縄をアダラの後ろ脚に括り付け、一気に気に吊り、その首に刃を入れる。アダラは声を出さずに一度ビクッと震えるだけで絶命する。
生体の中に入っていた血は外よりも温かいらしく、血の匂いと共に白煙が広がる。タクはその血で少し手を温め、手にナイフを握りしめると、アダラの腹を引き裂き、内臓をすべて摘出する。
すでに足元は解けた雪とアダラの地で真っ赤に染まってしまっている。
「もう少し」
タクがいくら年齢不相応の肉体を持っていても、大人には敵わない。
タクがいくら頑張っても、のこぎりで切るような動物の首は落とせないし、骨を切り裂くことはできない。
しかし、タクには、シノとともに発見した魔力を這わせるという方法を知っている。それで切れ味を上げ、肉をはぎ取っていたのだが、手がかじかんでうまく動かすことすらできない。
「豚は首の後ろが肩で、その下が肩ロースでロース、そのくらい取れれば………」
前世の知識が役に立っていた。
天然の冷凍庫と化した場所で捌いていたため、ナイフも手も、動かなくなるのは早かった。
しかし皮に大量に脂肪を残しながら、スピードを重視して切り出したため、何とかナイフが刺さった状態で動かなくなるまでには必要な分は切り終えられた。
「肩と、肩ロース、かな………」
肉は雪原のように真っ白で、本当に食べれる肉なのか不安になったが、さっきまで後ろを歩いていたのは、手に欠けたのは確かにアダラだったことを思い出しながら、タクは雪を手や靴やコートについた血に擦り付け、だいたい落とす。
「タクだ! 開けて………え?」
扉をもう一度叩こうと思っていた所で中かに引っ張りこまれ、タクは足をもつれさせ、タクを引っ張り込んだ狩人に抱きとめられる。
「心配しただろうが!」
「………ははは、ただいま」
あまりにも熱いその温かさにタクは微笑み、離れてから頭についた雪を落とすと、籠を持って台所へと入る。
■□■□■
成人間近といった子供が扉を叩いてから、少したった。
「ねえ、さっきの子供、扉の前に倒れてたら父上の評判、落ちるんじゃない?」
「カール様!」
執事服を着た男は、年下の気に食わない上司の言葉を思い出す。
―――絶対に誰も避難場所から出させるな。出した瞬間に首が飛ぶと思え。
そんなことはあり得ない。
吹雪がどれだけの脅威なのか、それは誰もが知っていること。だから、この温かい場所から誰も出るはずがない、そう思っていた。
「ねえ、開けて確かめた方がいいと思うよ? 仕事辞めたくなければ」
「!? 分かりました」
男は扉を開けて吹き込んでくる吹雪の中目を凝らす。
当然周囲に人影なんてなかったし、少しばかり玄関前の雪が踏みしめられていたがそれだけ。
男はほっとして扉を閉めた。
「誰もいなかったですよ。きっと諦めてどこかへ行ったのですよ………あれ? カール様?」
周囲を見るが、さっきまで近くにいた主人の息子の姿はどこにもない。
「まさかっ」
扉を開けた時に横をすり抜けられたとしか考えられない。
男は小心者だった。
自らの意見を持たない者こそ、最大のクレーマーになるように、男は自らの失敗から目をそらし、見なかったことにした。
普通にカール君登場。
カールもいい感じに基地外設定。
タクは鎖が付けられずに憑依してしまったため、どこか現実味がないというのが異常な行動力の元になっています。
簡単に言うと、狂信者状態?
信じたモノのために突っ走っちゃう危ない状態。
ってか、ティレーちゃん、マジあんた何してくれてんのさ




