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魔王選定  作者: 華宵 朔灼
第三章 少年編・生きる
55/113

06 山の災厄

 Script少女のべるちゃん、書き始めたんだけど、紙芝居はCoCであきらめておけばよかったと後悔中。

 はまったら抜け出せない深みがそこにある………

 そこがいいんだが。


 五十三話、始まるよー

 雪の魔物。

 その全体像は誰も知らない。

 北の山の魔物は獣の姿をしているが、一定の被害を出したら勝手に山に戻ってくれるので討伐することはないのだが、まれに現れる魔獣以外の生き物は、少し厄介で、討伐しないと何度でも町にやってきて人を貪り食う。

 今回の魔物の正体もわかっていなかったが、その残虐性は山の魔獣ではないと結論付けるには十分な要素だったらしい。


 「緊急依頼だ」


 そう告げた町長(ギルド長)の顔は能面のようだった。

 まずここに集まってくれた人々に礼を言い、村長は領主の騎士団が懸命に闘ってくれたということを長々と、身分に関してはなんとも思っていないが命が散らされたことについては残念そうに言い、魔物についての説明をしていく。


 「まず今回の魔物はもてあそぶ傾向にある」


 人々が集まっているのは中央広場に設置させた特設会場。

 物見やぐらを作って拡声器で周りに声を届けているだけなのだが、町長の言葉を聞き漏らすまいと人々は顔を向け耳を傾ける。


 「騎士団の方々の殺られ方を見ると、強い者を嗅ぎ分けて殺し、弱き者をいたぶりながら殺す、という動き方をするようです。弱い者には目もくれず強い者との戦いを楽しむようだ」


 この言葉に唸る民衆。

 弱い者が生き残れる可能性が上がったが、同時に察知能力がかなり優れているのだということと、ちゃんとした思考能力を持っているということがその戦い方から嫌でもわかってしまう。

 もし前回を遊んでいるとしたならば、次は弱い者を殺しまくり、強いものをいたぶるのを愉しむのかもしれない。

 思考する魔物ほど厄介なものはない。


 「今回は、冒険者と有志の者が前衛となり、騎士団の方々は町民を逃がすことを担当してもらいます異議があるものは?」


 誰も声を上げない。

 それはそうだろう。

 町民の安全、正確には町を守る貴族が守られ逃がされるのが先に来るのだ。一番頼りになるはずの他領の騎士たちがそちらに割かれるのは一般町民において、異を唱えることなどできないのだから。


 「待ちたまえ」

 「我等の避難に騎士団の派遣は要らん。我等はどうなろうと、この町に骨を埋めるつもりだからな」


 そんな中乱入した二対の言葉。

 一人は文官風の男、もう一人は武官風の男。

 彼らの目はしっかりと町長を見据えており、誰もがその眼に「舐めるなよ」といいうギラついた意思を感じ取った。その眼を向けられた町長はヒクッとのどを引きつらせる。


 「この町に来た時点で我等の生きる場所はこの町ガラムだ! 貴族とて、守られるだけの存在ではないのだよ」

 「し、しかし。領主様は………」

 「既に領主にもお伺いを立てている。町長、あなたが心配することはない」

 「は、はい………」


 町長の言葉は乱入者の登場によって弱くなってしまっている。

 しかしその顔には、多くの町民を守れるかもしれないという希望が見え隠れしている。


 「皆、聞いての通りだ。陣形を少々変更する。騎士団、冒険者パーティーのリーダーはこの後ギルドへと来てくれ。詳しく説明する」


 手に覚えがあるものたちがそれに頷く。


 「民よ、これから来る災害はこの町を容赦なく襲うだろう」


 再び静まり返る民衆。


 「着の身着のままで逃げることになるだろう」


 どこからかすすり泣くような声が聞こえる。


 「我々は立ち止まらず、明日に向かって歩き続ける。………この町出身の大賢者、ガルドがそう言い残したように」


 そういって町長は物見台から降りる。

 一瞬シーンと静まり返っていた人々は急がず慌てず動き出す。

 騎士団の訓練や存在を間近で見たことのない町民が多く、その彼らがやられたといわれてもそれがどれほどの脅威なのかはわからないが、逃げ出すことを上が進めるのならばそれに従うのが町民だ。

 そんな中、暗い色マントを被った少年が口に笑みを浮かべて走り去る。向かうは北。貴族街の自分の家である。


 □■□■□


 大会議室は、それなりの喧騒に包まれていた。

 一部では悲壮感に打ちひしがれていたが、そのそも冒険者はこういう荒事に肉盾として立たされることも多く、命が失われることにいちいち嘆いていたら身が持たないからこそ明るくふるまうすべを身に着けるのだが、まだ若い面々が多い経験を積んでいない騎士団の面々には、同僚が失われたという事実は重く、明るくふるまえる状態ではなかった。


 「おい、もう少し静かにしろ」


 若い騎士が、父のように慕っていた年かさの騎士を失って沈んでいる中、冒険者たちの和気藹々とした雰囲気は辛かった。


 「はぁ?」


 辛いからといって、冒険者を格下に見なければこんな衝突は生まれなかったのかもしれないが、中心となるべきものが居ない中で身分の差と、失ったものに対する当たり方が違う中では、起こるべくして起こった衝突と言えよう。


 「いつまでもウジウジウジウジ。この町の騎士団はそんな軟弱者ばっかりだったのかい? それじゃあ雪の魔物もそんな脅威ではないのかもねぇ」


 笑い会う冒険者。

 彼らにとって、消えた命に笑って来世を楽しんでほしいと思うが故、残ったものが生き残れるように、そう貶しあって、言い合って故人を思い出すのである。

 しかしそれを知らない者にとっては、個人をバカにされたような言葉でしかない。


 「隊長は立派に戦われたんだ! お前ら冒険者がそんな風に言っていいお方ではない。我等を奴の手から逃すため、その命を張って助けてくださったのだっ!」

 「おい、もういいだろ」

 「放せっ。薄汚い冒険者がっ、隊長のことを嗤った罪、償わせてやるっ」


 圧倒的な差を見せつけられて惨敗したその若い騎士には、すでに絶望しか見えておらず、命を重く考えることなどできなくなっていた。


 「薄汚いだってぇ? あんたら騎士が守れない民を陰で守ってるのは誰か知ってんのかよ、あぁ?」

 「よせって」

 「あの坊ちゃんに現実を分からせないといけないだろ」


 一触即発。

 そんな雰囲気をぶち壊すのはやっぱりこの人で。


 「おいおい、やめてくれよー。これから俺ら一丸となって戦わなきゃならないんだぜ? こんなとこで大きな怪我でもしたらどうすんだよ」


 飄々とその間に入っていったのは、普通の町民のくたびれた布の服を着て、無精ひげを生やしたおっさん。武器は腰に差した何の飾り気もない直剣だけである。


 「なんだよ、おっさん。私はこの若造に現実ってもんを………」

 「まぁまぁ」

 「どけよおっさん! 俺はその冒険者に一発入れなくちゃっ!」

 「まぁまぁ」


 おっさん、つまりシーブは双方が飛び出さないように止める。


 「つかおっさん、何枠?」

 「そんな恰好だと騎士ではないよな」

 「冒険者だったら義足はあり得ない」


 周囲から寄せられる憶測の視線に、シーブは苦笑しながら答える。


 「まあ、志願枠かな? 一応戦闘要員だよ」


 絶句する双方を放っておいて、決められた席を見つけてそこに着席する。

 その席の周囲に座っているのは、執事服を着て時間を気にしながらイライラとした様子を隠さない若い男、家政婦服を着て凛とした雰囲気を保ったまま背筋正しく座る若い女、山賊なのではないかと疑うほどに怖い顔をして、どっしりと座っている巨漢、そしてまだ明らかに若いことが分かる精悍な顔つきをした青年。


 「すまん、まだ始まってない?」

 「シーブさん、お帰りなさい。まだ始まってませんよ。そのせいでそっちの人がずっとイライラしてるみたいで」

 「おいおい、タク君怖がらせてどうするんだよエヴァンス」


 呆れた顔してこんなときも執事服であるエヴァンスに話しかけるシーブ。


 「知るか。おいメティ、まだなのかよ説明会」

 「まだです。こんだけ騒いでる馬鹿がいるくらいなんですから」

 「それもそうか………シーブ任せた」

 「任された、ってなんで俺っ!?」

 「俺らの中で一番弱いから」

 「反論できないからむかつくな」


 メティオノーラが丁寧に否定したことで、お株はシーブへと戻ってくる。

 そして全力でシーブに相手してもらっていつも簡単にあしらわれるタクにとって、三人の中でシーブが一番弱いという発言に軽く驚く。

 シーブはそんなタクに笑いかけ、一人黙っているのに存在感は誰よりもすごい親方に耳打ちをする。


 「イロモノかよ………」

 「なんなんだあれ」

 「―――っ!!」


 耳打ちされた親方が、さっきまで騒いでいた人たちの方を、憐みのこもった視線で見た。もちろんそこにあるのは嘲笑ではない。悼む気持ちがお互いにすれ違ったことに対する憐みの視線だ。

 しかし受ける側はどうだろう。最近では、歳をとった渋みが滲み出して、視線だけで人を殺せるんではないかと言われている親方の視線を受けた彼らは身をすくみ上らせ、割り当てられた席へとつく。


 「皆、集まっているだろうか」


 まるでタイミングを見計らっていたかのように町長と秘書と、広場で騎士団の派遣を拒否した子爵らが中へと入ってきた。


 「まずは、情報を持ち帰る時点で命を失った勇気ある者たちに祈りをささげよう。黙祷」


 全員が目をつむり、失われた命に祈りをささげる。


 「さて、今回の作戦の話へと移ろう」


 町長が作戦の概要を説明する。

 簡単に言ってしまえば、それなりにできるものを前面に置き、できる者を中盤に、劣るものたちを町の守護と町民の護衛に充てるというもの。


 「CからDランクの冒険者の方は前面に出てください。騎士団とBランク以上の冒険者は中盤に、それ以外は町の守護へと回ってください」

 「志願枠はどうすればいい?」

 「志願は自らの実力に合うだろう場所のリまとめ役に自己申告してください」

 「へーい」


 シーブはちょっと拍子抜けとでも言うように席に座る。


 「まとめ役は、前面がCランク冒険者ノルド氏」

 「おう。よろしくな」


 立ったのは、親方ほどではないがそれほどに巨漢な男。魔物討伐を専門にしていそうな感じで、その鎧も武器も、魔物の素材を加工した一品だ。


 「中盤は、騎士団のエンドク様」

 「私がエンドクだ。よろしく頼む」


 立ち上がって優雅に一礼する。その優雅さは、流石もと貴族といった雰囲気である。隣の領より駆けつけてくれた援軍である彼は戦時も第一線で活躍していた猛者である。


 「町の守護に関しては、私が対応します。それぞれで作戦を練ってください」


 たったそれだけだった。


 「さて、どうするよ」

 「シーブ、だっだね」


 どうするか話しかけるために身を乗り出したシーブに後ろから声がかかる。


 「えっと、エンドク様、だったか?」

 「そうだ。お前はこちらだろう?」


 にこやかに続けるエンドク。


 「大戦で常勝無敗といえば、お前が築いた『黄昏の翼』傭兵団だったな。懐かしいよ。片足を失ってもその強さは変わっていないだろう? 団長シー・ヴェルドよ」


 うっすらと目を細めるエンドクと対照的に、いつもの飄々とした雰囲気が感じられないシーブの様子に、タクは背筋が凍るような冷たさを感じた。


 「味方に裏切られて片足を失って、傭兵団を解散させたと噂で聞いたが、こんな所で生きていたとは」


 嘲るような台詞とは違って、エンドクは旧友にあったかのような友好的な表情をしているのに疑問に思うタク。

 しかし、シーブが同じように、雰囲気を一瞬の後に、凍りつくようなものから、明るい飄々としたものに変化させたものを見て「ああ、こういうことなのか」と納得する。


 「ああ、傭兵団を辞めて、今じゃ商人お抱えの料理人だよ。人生とは分からないものだね」

 「へえ、今は料理人をしているのか。なら中盤の配給でも頼もうかな?」

 「その申し出はありがたいが、俺らは前面に行く。じゃあな」


 そういって全員一緒に前面のめとめ役であるノルドの元へと向かう。

 気になって後ろを振り返ったタクは、まるで親の仇でも見るかのようにシーブの背を睨み付けるエンドクを見てしまい、再度背筋が凍る。


 「タク」

 「親父………」

 「気にするな」

 「………うん」


 夢に出そうだ、と思いながら、タクは父親に背を押されながら、シーブたちについていく。

 ノルドの元には、三人ほどの冒険者のリーダーが集まっていて、すでに作戦を決めているようだった。


 「こんにちわ。志願者なんだけど、前面に入れてもらえる?」

 「ああ、よろしく。大歓迎さ。でも、いいのかい? ここは一番危険な場所だが」

 「だから来たのさ」


 ニッと笑うシーブ。


 「シーブ。多分そろそろティエリアが戻ってくる。外すがいいか?」

 「私も行きます」

 「付いて来んなよ」

 「二人仲良く行って来いよ。後で話は伝える」


 ぐだぐだ言い合っている二人をシーブは外へと追い出す。


 「えっと、君たちは五人かな?」

 「いや、四人だ。こいつはまだ十歳にもなってないからな」

 「あ、すみません。話だけ聞きたくて親父についてきたんです」

 「俺の子だ」

 「せ、精悍な顔立ちの息子さんですね」

 「よく言われます」


 ノルドは少し頬を引きつらせながら、タクと親方に応える。


 「それで? 作戦はどんな感じ?」

 「それといった作戦はないな。向かってきたらなるべく長く相手をして、大けがを負う前に次へと順番を渡すぐらいしか考えていないよ。まあ、治癒魔術が使える者がいないから回復薬をかなりの量持っていかないと行かないといけないことが注意事項かな」

 「行動はパーティー単位?」

 「ああ。レイドを組むつもりも組んでもらうつもりもないよ」


 それだけ話して解散する。

 吹雪が吹かないと雪の魔物は現れないため、一番北の門に近い宿で泊まって吹雪くのを待つしかないからである。

 吹雪いていないときに北の山に入ってしまえば、雪の魔物以外の魔物も襲ってくる。吹雪による被害もあるが、吹雪が吹けばほかの魔物たちは巣の中で吹雪を過ぎるのをじっと待つ習性があるため、吹雪の日に決行するのだ。


 「宿の名前はサンクルアンセス。北門の目の前の騎士御用達の宿だそうだ」


 それを聞いたエヴァンスとメティオーラの表情がゆがむ。


 「シーブ、お前だけそこ泊まれよ」

 「なんでだよっ」

 「シーブでもエヴァンスでも生贄はどちらでもいいですが、私はそこに泊まるのを遠慮します」

 「メティオノーラ、お前こそあそこに泊まるべきじゃないのか? 普段とは違った生活ができるぞ」


 そういう擦り付け合いに発展する。


 「タク、泊まるか?」

 「え、いや、どんな宿なのさ」

 「タク君、気にする必要はない。宿自体はこの町にあるどの宿よりもいいし、食事もおいしい。一日貴族体験だと思って是非あの宿を利用したまえ」


 押し切られ、宿に泊まることになったタク。

 夕飯はシノの料理よりはおいしくないが、普通じゃ食べられないようなものが出てきたため舌鼓を打ち、親方と別になってしまったが、ふかふかのベッドに横になっって寝た。そこまでは良かったのだ。


 「あら、いい顔といい物を持ってるじゃない」

 「若いわね………初物かしら?」


 夜中に人の気配で目覚め、親方が部屋に割って入るまで、タクは前世の記憶があって本当によかったと、女性恐怖症になるところだったと、一人胸をなで下ろした。


 ■□■□■


 執事服を着た初老の男が慌てて、領主の政務室に飛び込んだ。


 「仕事中だが、急ぎの用でもあったのか?」

 「坊ちゃまがっ!」

 「!?」


 一人の少年が行方不明となる。

 こんな非常時にどこに行ったのかと、心配になる父親。

 息子が関わらなければ優秀な領主。

 息子の行方不明は、優秀な領主を優秀でなくさせるには十分すぎるきっかけだった。


 「探せ! この町の隅から隅まで。幸いこの町には優秀な冒険者と騎士たちが集まっている。その全てを使って、必ず息子を見つけ出せ!」


 領主の命令はすぐに公布させられた。

 緊急依頼よりも領主命令が重要視されるのは当然のこと。

 志願者以外緊急依頼に参加した者たちは、全員この騒ぎに参加させられることになる。


 「お前すごいな! でもここ、どこなんだ?」

 「にゃー、ここは僕の泊まってる宿の屋根なのにゃー。『白』はどこ行きたいのにゃー?」

 「おれの名前はアキだ! 覚えろよティレー!!」

 「それはすまなかったのにゃー。アキ。次はどこへ行きたいのかにゃー?」

 「あっち! 北の山に行きたい!!」

 「了解にゃー!」


 一人の猫人は、汚い色をしたマントを被った少年を抱えて、屋根を飛んで塀を超える。その先は北の山。


 「おれは『勇者』になるんだ! まものなんかけちらしてやる!」

 「にゃー」


 ティレーの瞳には、嘲りが浮かび、獣人特有の脚力で駆けるように北の山を進んでいく。

 その先の吹雪の中に魔物が潜んでいると知りながら。

 『夢』の住人は、シノ(5)、アキ(6)、タク(8)でしたー。

 他に居るかは不明。

 てか、久々に六千文字突破ェ


 いやーティレーさん、いい仕事してくれるじゃないですか。

 でもティレーさん、あんたどんな命令書もらってんの?

 最近キャラが自分勝手に動き出してまとめるのがつらいw

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