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魔王選定  作者: 華宵 朔灼
第二章 幼少期・放浪開始
46/113

18 ふっわふわのもっふもふ

 A HAPPY NEW YEAR!!

 新しい一年が始まってしまったよ!

 抱負とか考えました?

 自分はもちろん「毎日投稿」

 髪の毛より薄い決心ですね、とか言わないっ!


 四十四話! 今年も宜しくお願いします

 人々がマメロの肉に舌鼓を打っていた頃、高級宿では村を訪れた三人の客人が白磁牛のステーキを頬張っていた。


 「久々に食べたの………ここの冒険者は優秀なのだろうね」

 「いえ、これを狩ってきたのは元Bランクの冒険者で、今はギルド職員をしている者らしいですよ」

 「そうか」


 若い商人は美味しそうに食べるファベリズの姿を見て、先ほど仕入れた情報を惜しげもなく話す。


 「しかし、これを狩ったということは、一人ではなくパーティーで倒したのだろう?」

 「そうですね」

 「白磁牛なんて、そう簡単に狩れるようなものではないからの。………うちの国(魔導国家フィデリント)に勧誘しようと思ったんだが、その様子だとあまり進められないのかな?」


 商人は苦笑いをするしかない。

 なんせ、これを届けに来た冒険者ギルドの者曰く、ギルド職員である豹人のヴァナグと共に現地に赴いたのは、まだ冒険者登録もしていない青年と、Eランク冒険者の少女だと言われたのだから。


 「挑んだのは三名で、そのギルド職員の他には、Eランク冒険者の少女と、冒険者登録もしていない青年だったそうです。丁度弱っているところに急襲でもしたのではないでしょうか」

 「そうか………それは残念じゃの」


 老人は、商人の伝えたかった意味通りに受け取った。

 ギルド職員が将来見込みのある者を遠征に連れて行くことはままあること。そして、冒険者である、と言うことは既に十歳以上であると考える。そこに、黒曜馬に乗っていた少女が同一人物と考える隙が入るはずもない。


 「この村には『夢』の子らはいなさそうだから、私の仕事はないですなぁ………」

 「勅命ではそれがついでですよ。我慢してください」


 本気で拗ね始めるファベリズの様子に、商人は困ったように眉を垂れ下げる。


 「ほら、きみからも言ってあげて」

 「………何をですか?」

 「ちゃんとお仕事して下さいって」


 この三人の人間関係は少々特殊だ。


 「………ファベリズ様、お仕事をないがしろにすることは元豪商の娘として容認できるものではありませんわ」

 「………流石はエドワルの御息女じゃな」


 丁寧に口を拭い、ファベリズに面と向かってそう告げるクリュエル。


 「それよりも、早く他の『夢』を見た子たちに会ってみたいですわ。灰が脱落者なら、黒を灰にするのも、わたくしたち白の役割だと思いますもの」


 そう言ったクリュエルは、「美味しくいただきました」と言って部屋へと戻ってしまった。


 「サバガマナ様、一体その『夢』って何なんですか? 詳しくは知らないんですが………」

 「そうだな………君は『魔王』と『勇者』についてどんな知識を持っいるかな?」


 そんな、解釈の仕方から始まった即興の講義は、皿を下げる為に来た宿の職員が来るまで続き、結果、商人は訳が分からないということを理解した。


 □■□■□


 スペーラの対人修行が開始される日。

 その日の天候は生憎の雨だった。


 「おや、今日は雨か………ってことはー、シノちゃん! 床拭きを手伝ってくれるのね!!」

 「てつだう。することないし」


 朝食前、雨が降っている日は必ずエンゼに手伝いを申し出るシノ。

 それを他の客へ出す朝食の準備をしながらスペーラは聞いていた。


 「シノ様は、一日ゆっくりするということを覚えた方が良い気がします」

 「ゆっくりしてるよ?」

 「………隙があれば手伝いをするような子供なんて、そうそういませんよ」


 そんな子供いてたまるか、とも思うスペーラ。

 スペーラはシノに仕えるようになって半月が過ぎたわけだが、余りにも従順で我が儘を言わないシノを不思議に思っていた。外見も呂律の回らなさも子供、といった感じだが、その知識とあり方はかなり中途半端なのだ。


 「そうねぇ………なら、スピィちゃんの裾を直すの、やってもらおうかしら」

 「それも手伝いだと思いますよ、エンゼさん」

 「でもウチに子供もいないから、一緒に遊ぶって言っても………あ、ヴァナグで遊んで来たら?」


 この宿でお世話になって分かったことだが、どうもエンゼとヴァナグは幼馴染に当たるらしい。ギルド長が連れてきた養子であるヴァナグは、何度もエンゼと喧嘩をして仲良くなったのだとか。その過去話を聞かされたシノとスペーラはヴァナグに同情した。

 エンゼの趣味は、幼い頃からあったようで。

 ヴァナグは頼み込んでも着てくれなかったばかりか、まるで当てつけるように筋肉隆々の立派な男になりやがって、と恨みがましく呟いていたのをスペーラは忘れることは無いだろう。

 別に恋愛対象として男を見ているわけではないようで、そういう趣味は流石に持ち合わせていないスペーラは安心したのだが、なにぶんエンゼの化粧によって変えられた女版スペーラのあまりの人気に辟易している。

 しかも、女性は恐れずに話しかけてくれるだけなのだが、絶対に男としては見てくれないと言う敗北感を味あわされ、男性からは熱い視線を注がれ、男として貞操の危機を味わうという危機感を味あわされていた。


 「すそ、どんなふうにするの? ヴァナグのとこにはスペーラといっしょにいく」

 「あら、やってくれるの? じゃあ、とりあえずコレ着てちょうだい」


 そう言ってエンゼが脇から取り出したのは、貴族の子女が遊ぶ人形に着せるような、布が沢山使われてヒラヒラしているワンピースだった。

 雨で、絶対手伝いをしてくれる確信があるからこそ、持ってきていたのだろう。


 「てづくり?」

 「そうよ! 余った布でつくってみたの、しのちゃんなら似合うでしょ」

 「………どうやってきるの?」

 「大丈夫よ、私がばっちり着せてあげるわ!」

 「あ、朝食べに来た見たいですね、僕配膳してきます」


 スペーラが朝食の配膳を行っている間、エンゼはシノで人形遊びをしていた。

 場所は調理場の奥の小部屋(化粧部屋)である。


 「うーん、髪の毛は上にあげちゃいましょうね、目を瞑ってて」

 「ん」


 大人しく目を瞑ったシノ。

 子供らしくちょっと力んでいるのが可愛い。

 エンゼは長く伸びているシノの髪を複雑に編み込んでいく。


 「さ、ここに腕を通して。そうそう。少しじっとしててね」

 「ん」


 長袖のワンピースに腕を通し、背中にある紐とボタンできっちりと服を着せていくエンゼ。


 「さて完成よ! もうばっちりお嬢様っ!!」


 完成させたお人形をエンゼは食堂へと連れて行く。


 「あ、戻って………うっそー………」

 「? スペーラ、どうしたの」

 「めちゃめちゃ可愛いじゃないですか、シノ様」

 「あれ? スピィちゃん知らなかったの? シノちゃんはとーっても可愛いわよ」


 エンゼによって着付けられたシノは、無表情であることも相まって、本当に人形の様であった。それもかなり高級で目を奪われてしまう程、価値があるような人形に。


 「へん?」

 「いや、変じゃないですよ。しっくりきすぎてもうなんて言ったらかからない程可愛いですシノ様」

 「ふーん?」


 スピィちゃん(・・・・・・)は頬を染めてそう熱く語る。


 「それじゃシノちゃん、食堂の隅でこの作業をお願いね。終わったら協力料も含めた料理を出すわ」

 「ん」


 シノは女将から渡された布地をもttえ、食堂の隅でちくちくと裁縫を始める。

 雨の日は朝の鍛錬をしないので、シノの朝食はいつも最後なのだ。スペーラとエンゼはもちろん配膳前に軽食を食べている。


 「え? あれ、誰だ?」

 「新しい客か?」

 「あんな子、居たか?」

 「あの子も男の子なのか?」


 などと言う、食堂を訪れた人々の想像を掻き立てながら、シノは黙って手元の布をちくちくとし続けていた。

 いつものシノは、長くなった髪を、前髪だけは残してつむじあたりで一まとめに結んだだけの、一見地味な少女だ。六歳の子供に化粧っ気もあったもんではないのだが。

 そこにエンゼの技術が加わるとどうなるのか。

 もともと顔のつくりはかなり良いシノ。いつも目を隠すほど伸ばしてしまっている髪を横へと流し、長い髪も三つ編みにして、ヘアバンドのようにすることで、髪全体の長さを調節し、肩につくかつかないか、という長さにしている。さらに少しウェーブをかけることによって沢山使っている髪留めを見えないように工夫されている。

 服の大部分は深緑色で、足首より少し上まであるスカートは腰から切込みが入っており、それぞれを白い飾紐が隙間を残してつけられている。その間からのぞく布は若草色で見栄えもいい。そのスカートの下からのぞく足には、土色のブーツ。上半身の部分にも細かい装飾がなされていて、ものすごく似合っている。


 「外に出る時は、必ずこれを着せなさい」

 「なんですか、コレ」

 「私が自作したケープコートよ! 可愛いでしょ!!」

 「はい、とっても………ってか、本気でヴァナグで遊ぶつもりなんですね」

 「ふふふ、ヴァナグの驚いた顔を見る為に超特急で作ったんだからっ!」


 そう言うエンゼの目はらんらんと輝いているのだが、目の下にはうっすらと隈が出来ている。超特急で作った、というのは本当なのだろう。

 ケープコートは真っ白のウサギの毛皮で作られていて、コートに使った量も、質も、とても庶民が着るものではない。

 ある者は不思議な顔をしながら、ある者は頬を染めながら、ある者は羨望の眼差しをシノに送りながら、食堂を退場し、だれも居なくなった頃、シノは朝食にありついた。

 その間スペーラは化粧を落とし、普通の服に着替え、傘をさしながら集会場へと向かう。

 以前シノを抱えて歩くのに大変な思いをしたと言うのに、今じゃ全然苦にも思わない自分を感じて、スペーラは苦笑する。

 なぜシノは自分で歩かずに、スペーラに抱えられているのか。


 ―――私の|作品《作った服を着たシノちゃん》を汚す気!? スピィちゃんが抱えるのは当然でしょ!!


 というエンゼの声があった為である。

 宿を出る前、シノに傘を渡そうとしたスペーラは、肩を掴まれ、真剣な顔をしたエンゼにそう言われたのだ。漢らしいドスの効いた低い声で。


 「お、今日もちゃんと来たな。対人戦、できるようにしといたぞ」


 ヴァナグの格好は、いつものラフな物ではなく、戦闘指導要員としての正装をしていた。ソノが新人冒険者講習会を受けた時に見た格好である。

 いつものようにスペーラを迎えたヴァナグは、傘を閉じたスペーラの持つ、白い丸っこい物体に興味が引かれる。


 「それは君の荷物かい?」

 「にもつじゃない」


 対人戦に向けて何か秘策でも持ってきたのかい? という意味で聞いたヴァナグは、荷物だと思っていたものが答えたことで目を瞬く。

 シノはスペーラの腕から地面へと降り、下からヴァナグを見上げる。


 「にもつじゃない」

 「………シノ、君かい?」

 「わたしいがいに、だれがいるの」


 本気でだれだか分からないという顔をしていたヴァナグに、まるで気分が悪そうに眉を寄せて見せるシノ。

 それは、人形ではない、と示しているように見える。


 「可愛いね、誰かと思ったよ」


 腰あたりまでしかない身長のシノは、小さな手でヴァナグのコートの袖を持ち、下から見上げている。本人は荷物ではなくエンゼに言われて着ただけなのだ、と言いたいのだろうが、その姿は可愛いと言う感想しかありえない。

 しかもシノの顔はケープに隠れてしまっている為、周りの人には見えていないのが、すこしヴァナグに優越感を与える。


 「ヴァナグ、それ以上感想を言うと、多分周囲の人に幼女趣味だと思われるとおもいますよ」


 ヴァナグの黒い戦闘指導員としてのコートを着て、剣帯に剣を指した、それはもう女性が放っておかない格好なのである。周囲の女性の目がある中で、ほぼ口説いていると思える発言をすれば、幼女趣味という噂は瞬く間に広がるだろう。


 「エンゼか?」

 「ん」

 「なら汚れると怒るな。私が抱えよう、今日はどうせ対人戦ばかりで私の出番はなさそうだから」


 ヴァナグは自らの服に付いた埃を払うと、シノを抱きかかえる。

 シノは頭を震わせてフードを落とし、小さい手でヴァナグの肩を掴む。安定してスッと目を上げたシノの顔を見た人は一瞬で硬直し、ヴァナグという豹人の美丈夫とシノと言う美少女の組み合わせに熱いため息を吐く。

 当然スペーラは背景の一部と化しているが、自分の普顔を理解してるスペーラは特に何も感じない。


 「では、スペーラの対人戦を始める」


 始まったスペーラの対人戦。

 全員がギラギラとした目でスペーラを見ていることで、挑まれるスペーラはタジタジだ。なにせ、挑むために来たのに、なぜか挑まれず図になっているのだ。腰が引けない理由がない。


 「第一試合――――」


 スペーラの試合の審判は、最初のうちはヴァナグがやっていたのだが、あまりにも一方的にスペーラが勝利してしまうので、その審判を放棄し、別の人に任せてシノとともに後方へと下がった。


 「さて、何がしたい?」


 ヴァナグはシノを自分の膝に座らせ、シノの顔を覗き込む。


 「まじゅつ、おしえて?」


 コテンと首を傾げたシノの様子に、ヴァナグはなかなか見せない満面の笑顔で応え、周囲の頬を染める。

 ヴァナグの得意な魔術は攻撃に偏った火の系統の魔術で、中級程度までなら好きに扱う事ができる。本来の戦闘形式は魔術剣と言って、魔術で生み出した効果を剣に付与することで、剣での殺傷能力を上げる、という力の使い方をする。


 「魔術は、詠唱をして現す現代魔術があるだろう?」

 「ん」

 「他に何があるか知ってるか?」

 「こゆう、とくゆう、こだい」

 「そうだ」


 固有魔術は、別名ギフト(神からの祝福)とも呼ばれる、一個人が必ず持っている特殊能力の事で、その能力のあり方は一人一人違う為、死ぬまで自分の固有魔術が分からなかった、なんて例も少なくない。

 特有魔術は種族的に使える魔術を示していて、人間族は何もないが、別の種族の特有魔術が仕えるようになったりもする。妖精族の精霊魔術や、獣人族の獣化魔術はここに分類される。

 最後に古代魔術だが、これは使用方法や形態が分からず、文献にしか残っていない魔術全般を指す。シノが使える調合魔術はここに分類されると云う訳だ。


 「それだけ知っていれば、発現系体も知ってるな?」

 「ん」

 「一応復習もかねて言ってみようか」

 「ぞくせい、ふよ、ちゆ、せいかつ、しんせい?」

 「まぁ、神聖魔術は疑問視されてるけどな」


 いわゆる、信じる者は救われる、と言った魔術であり、神聖帝国フロウェルでは系体の一つとして考えられているが、それ以外の国では疑問視されているのだ。より一般的な名前は宗教魔術であり、「宗教魔術使えます」という言葉は、私の宗教に入りませんか? という呼びかけだったりする。


 「あれー、なになにー。魔術教育ー?」

 「なんだよ」

 「だったら僕もはいるー」

 「私も付与魔術なら得意よ」

 「少なくとも生活魔術なら俺はマスターしてるぜ」

 「それ、ここにいるみんなそうだから」


 なんだかんだ正装をしたギルド職員がシノの元に集まってくる。

 楽しそうに魔術の勉強という名のお披露目会が開かれているその横で、何度目になるか分からない剣戟をスペーラは受け止めていた。

 因みにこの対人戦、日々ヴァナグに挑んで負けている者がほとんどだったりする。彼らにスペーラ対人戦をしてもらう為に、ヴァナグは朝一番に挑んできた冒険者にこう言ったのだ。


 ―――最近私が稽古をつけているスペーラに勝ったら、剣を使わないというハンデをあげてもいいだろう。勝てたら、の話だが


 一人身のヴァナグだが、それなりに村の女性と女性の冒険者に人気がある。本人は豹人だからそれはただの流行の様は物で、本気ではないだろうと思っているが、女性たちは割と本気である。

 そして、そんな恋する乙女に横恋慕(?)してしまった男どもは、その女性に思いを告げると、必ず条件を一つ出されるのだ。


 ―――じゃあ、一度、たった一度でもヴァナグ様に勝てたら考えてあげてもいいですよ


 女性の方は、出直して来いと。

 男性の方は、希望が見えたと。

 そう納得して、ヴァナグは体よく人避けに扱われていたりもする。本人が戦闘大好きなので文句を言う訳はないし、美丈夫が女性の視線から逃れられるわけもないので、このある意味対人戦の申し込みが止むことはない。

 どんなをしてでも勝つ。

 それが、スペーラに挑む男たちの目にギラギラと光る欲の正体。

 ギルド職員がシノと遊んでいる間、スペーラはギラギラとした目の男どもにかこまれて少しずつ疲れていくのだった。

 シノちゃんが可愛い。

 初夢にシノちゃん出てこないかな?

 一日のこれから寝てみる初夢の内容はどんなのが良いだろうか。枕の下に写真置いたりするとその人の夢が見れたりするんだっけ?


 明日も更新するよー

 今年も良いお年を過ごされますことを!

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