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魔王選定  作者: 華宵 朔灼
第二章 幼少期・放浪開始
42/113

14 それぞれの戦闘方法

 忘年会とか終わらせました?

 熱出して欠席してしまったのが凄く悔しいです。

 新年会はきっと出てやる!


 キリが良いネ四十話! 始まります

 ファベリズ・エル=ジェイク・サバガマナ。

 それは国をまたいで名を轟かせる、ハーフエルフの賢者の名前でもある。

 六百年前にフィデリントを建国した主要な面子の中に居た、正当なエルフの一族サバガマナ家。その直系に当たり、血統を重んじるエルフという一族にその存在は異を唱えているが、自らの存在を認めさせ、正式にサバガマナを継いだ正式な貴族であり、人間との混血児だ。


 「すまんが、冒険者ギルドはどこら辺にあるかの?」

 「みずうみのはんたいがわ」


 その日シノは、山から街道に入ったあたりで、馬車の中にいる老人からそう声をかけられ、反射的にそう返した。

 シノが湖の反対側と話したのは、今いる街道を直進すればつくのはカゾスであり、丁度湖の反対側に出てしまう門につくからだ。

 カゾスの中央にある湖は大きい。街道から村に入っても、冒険者ギルドがどこにあるか分からず、初めて村を訪れる人から尋ねられたら、ある程度村を知ってもらうために答える、と言うのが、カゾスの冒険者の暗黙の了解であったりする。


 「そうか、ありがとう。ところで」

 「きにするひつようはない、クロ」


 何か続けようとした老人の言葉を途中で遮って、シノとクロはその集団を抜き去っていく。

 シノにとって重要なのは、早く依頼をこなして、本を読むことだ。

 最近のシノのお気に入りは、村長であるギルド長から借りた魔物図鑑と、鍛冶屋のおじさんが貸してくれた初級魔術教本である。

 久々に読む母のメモ以外の文字に、そのほかの有象無象など、シノの目に入っていなかった。

 例えその馬車に国外の王族の紋章が描かれていても、まじゃの中に明らかに老人以外の人が乗っていようとも、馬車の周囲に護衛の騎士団がいようとも、それらはことごとくシノにとって有象無象で興味の対象になり得なかった。


 「あの馬は早いねぇ………」

 「失礼ながら申し上げます」

 「うん?」

 「先ほどの馬、あれは魔物でございます」

 「ああ、確かに従魔の証が付いてたね」


 そんな声など過ぎ去ったシノの耳には入らない。

 シノは普通の馬が出せる速度を軽く超えていることに気が付くことも無く、村へと帰還した。


 「おや、今日も早いね」

 「ん」


 東西南北の門番たち。そこにいるのは国から派遣されている騎士がほとんどなのだが、何かあると必ず報告してくれるシノとはかなり仲良くなっていた。


 「ばしゃがいた」

 「馬車? お偉いさんの来客かな? ありがとよ」

 「ん」


 その後伝令がやってきて、このことがと頷く門番と、報告された上司の驚きようは天と地ほどの差があった。


 「クロ、まってて、ね?」


 シノがクロを厩舎に置いて向かったのは、冒険者ギルドの裏口、厩舎の裏手から入る大口の素材買い取りカウンター。

 本来なら表から入って、依頼用紙と依頼証明を渡してお金と交換してもらうのだが、生憎シノが持ってくる量は常軌を逸していた為、裏での取引となったのだ。


 「あら、もう採集終わったの」

 「ちかばにはえてた」


 近場が普通なら馬で半日かかる場所だとは知らない、既にシノ専属と言ってもいい受付の人は「そうなの」と微笑みながらシノを出迎える。


 「はい、じゃあここに全部並べてね。精査に一時間ほどかかるから、それまでヴァナグで遊んでて頂戴」

 「わかった」

 「私は遊び道具なのか………」


 受付の人はいきなり会話に入ってきたヴァナグに驚き、落ち着きを取り戻した後は睨み、大人しくシノが並べたものの精査を始める。

 まずシノが置いたのは、依頼書とそれに準ずる証明の品。三枚の依頼書は全て採取依頼で、薬草や香草の名前と簡単な絵が描いてある。

 そして、その依頼された品の過剰採取分をその横に置き、他にもその依頼人が欲しいと思うようなものをカバンから取り出していく。種や花などを置いて行き、最後に討伐して解体も終えた魔物を並べる。


 「ふむ。討伐はついで、か」

 「かんたんなのしか、してない」

 「自走野菜の討伐を簡単などと言われると、高ランクパーティーの立つ瀬が無くなってしまうと思うがな」


 シノが並べた魔物。それはタクと行っていたガラムの南の森でも稀に見られていた自走野菜の一種である。


 「普通自走野菜を狩る場合は、入念な準備と対策を用意していないといけないんだぞ?」

 「そうですね。こんなにも立派な自走野菜を一人で倒されては、ヴァナグ訓練員も立場がありませんね」


 品を数えていた受付の人とヴァナグが笑顔で睨み合う。


 「何だ? 君は私に何か恨みでもあるのかな?」

 「別に、何もありませんよ?」


 自走野菜は臆病な個体が多いのだが、一定以上の大きさに達すると、何モノにも怯えなくなる。そうなった自走野菜は、向かってくるもの全てを倒し、自らの養分としてしまうので、実質最強な魔物である。

 昔『勇者』によって討伐された魔野菜は、竜の住む山に住みつき、竜を食い物にしていたとも言われている。

 さすがに最近では竜種に食ってかかるような魔野菜は確認されていないが竜種も自らの巣の近くにこなければまともに取り合うこともしない為、真偽のほどが分からないが、きっと真実であろうと信じられている。


 「これでおわり」


 臨時依頼には、魔野菜の討伐依頼が並んでいるのだが、格安依頼である為かそれを受注する者が少ない。しかも討伐推奨ランクが高いと言うのに、金額が恐ろしく安いため、手に取ろうとする者すら少ない。

 稀に高ランク駆け出しのパーティーが冷やかしまがいでその依頼を受けるのだが、大抵無事に帰って来れた者は、冒険者を辞めるか、堅実な冒険者生活を送るか、と言う風に根本的に性格が変わってしまうということもある。

 EからDにランクを上げる時に、盗賊の討伐という試験を受けさせるように、DからCにランクを上げる時には臨時のパーティーでの魔物討伐の試験を、CからBにランクを上げる時には魔植物の討伐と処理の試験を行っている。

 普通の魔物討伐よりも、魔植物の討伐と採集が難しいとされているが故の試験内容だ。


 「にして、君は毎度毎度よくこの量を見つけて来るな」

 「そうですね。確かにこの量を採って来てくれるのは野菜が少ないこの村にとっては助かりますけど、何か、コツでもあるのかな?」


 ヴァナグは動かない自走野菜を、剣先で爆発しないかどうか突きながら、受付の人は精査中の収集物の処理の手を休めずに、シノに問う。


 「かん」


 簡潔なシノの答えに、何とも言えない顔をする二人。


 「おなじばしょでとったことないから」


 さらに生態系まで気にして狩りをしていると言われた二人はため息をつく。この成果を普通の冒険者が挙げていたら、一躍有名になって、カゾス支部も嬉しい悲鳴を上げられるのに、とも思ってしまい、シノに少しばかり申し訳なくなるが、本人が全くそういうことを気にしないので、言葉にするのもはばかられる。


 「ふぅ………あれ? シノ様、お帰りさない」

 「スペーラ、ただいま。じゅんちょう?」

 「あ、ははは。………多分」


 なぜこっちにいるのか? とシノに聞かれたスペーラは、集会場の方のトイレが壊れていてこっちを使う羽目になったのだと説明し、ヴァナグに続きはどうするのか目線で聞く。

 しかしヴァナグが聞いていたのは、あまりにも低いスペーラの自己評価の方だったらしい。


 「おいおい、もう少し自分に自信を持てよ。何もできなかったナヨルニが、この半月で満足に剣を振り回すことが出来るようになっただけでも本来は奇跡だぞ?」

 「とは言っても………イマイチ実感が」


 強者につきっきりで教えてもらっている分、自分がどのくらい強くなっているかが分からない。段階的に強さを変える事が出来る、有能な師匠の下に、比べる対象がいない状態で付いてしまったが故の弊害とも言える、かもしれない。


 「ならあした、まもののとうばついってみる? いっしょに」

 「え!?」

 「いいな、それ。行くといい」

 「ええっ!?」


 いきなりの提案と、あまりの決断の速さについていけないスペーラ。


 「正規料金じゃ取引できませんけど、それなりの金額にはしてあげられますよ」

 「それならヴァナグもくればいい」

 「それもいいな。『シヴァ』再結成か」


 有給使って明日の休み取ってくると言い残し、ヴァナグは冒険者ギルドの中へと入っていく。

 突然舞い降りた魔物討伐という実力試しの機会に、スペーラは震えていた。もちろん、武者震い、ではなく恐怖によって。


 「あの、本当に魔物討伐に行くんですか?」


 精査が終わるまで、シノが魔物役を引き受け、ヴァナグがスペーラの剣筋を傍から見るという修業方法に変わった。

 最初は逆でやろうとしていたのだが、我流で言葉足らずのシノよりも、ちゃんと師の下で剣を修めたヴァルナが口を出した方がスペーラの為になると、立場を交換したのだ。

 シノの、打ち合いが終わってから口出しする、という方針にスペーラが不安がったと言う面もあるが。


 「今更だな。まぁ、ここら辺はあんまり強い魔物はいないし、気楽にピクニック気分で行けると思うぞ。魔物の繁殖期はまだ先だからな」


 それは貴方が強いから言える事ですよね?

 なんて言う勇気は生憎スペーラは持ち合わせていない。

 元Bランク冒険者のギルド職員、Eランク冒険者の子供、冒険者ですらない人の三人のパーティーだ。普通に考えて、気軽にピクニックなんて思えない。


 「まものはまっすぐくる、よけてきゅうしょにいちげき」


 それをできるのはシノ様の速さと正確さがずば抜けているからですよ。

 ともスペーラは口元まで出かかっても言葉として出すことはない。


 「それができるのは君の素早さと、急所を突ける正確性があってこそ成立する戦闘方法だとおもうぞ? スペーラだったら、普通に動けないようにしてから攻撃する方が確率は上がるんじゃないか?」

 「動けなくさせるってどうやって………」


 言いたいことをヴァナグが言ってくれ、更に方針まで話してくれる。その方針を聞こうと身を乗り出すスペーラ。


 「そうだな。例えば、魔術で足止めしたり、四肢を切断したり、物を投げたり?」

 「物をどう投げたら足止めになるんですか………」


 スペーラは、雪豹に石を投げて、吠えられやられる姿が目に浮かぶ。

 当然、シノがナイフを投げた瞬間は見ていても、あの精度を出せるはずがないと踏んでいる為、想像できるはずもない。想像したとして、雪豹の鉄をも凍らせてしまうその体表を貫けることなんて出来やしない。


 「うん? 木を切り倒したり、岩をぶつけたり、完全に行動不能まではいかなくても、足止めって考えれば十分できるんじゃないかな?」


 雪豹に置き換えて考えてみよう。

 木を切り倒して雪豹の前に転がせば? その素晴らしい跳躍力で木を飛び越えてくるでしょう。

 岩を雪豹にぶつけてみれば? まず持ち上げる前にスペーラが岩の自重でつぶされるでしょう。

 自分が永遠に足止めされてしまう想像しかできずに頭を抱えたくなるスペーラ。


 「あしどめならできる」

 「なら、前衛スにペーラ、中衛に私、後衛がシノだな」

 「ん」


 スペーラが口をはさむ暇もなく、明日の討伐(ピクニック)計画は着々と完成に近づいている。


 「あしたのあさ、きたもん」

 「分かった」

 「………分かりました」


 狩りが楽しみで仕方ない様子の二人にスペーラがため息を付いたとき、ギルドの方から職員が集会場に顔をのぞかせる。


 「シノちゃんいる? 精査終わったらしいわよ」

 「ん」

 「もう行くのか。勉強がんばれよ」

 「あ、シノ様。今日の夕食は腸詰と根菜のスープらしいです」

 「わかった」


 シノは二人に別れを告げ、精査で得た金額を聞きに行き、全額ギルドの個人口座に預ける。

 本来ギルドの個人口座設立はDランク以上でないと申請できないのだが、功績と年齢を考慮して、引出不可で作ってもらったのだ。もちろんDランクになれば引き出しもできるようになる。

 シノの後見人として登録していた『森の探索者』のジムが犯罪者となったので、今のシノの後見人はヴァナグになっている。

 ギルド関係者なら口座の引き落としもできるので、宿の支払いは全てヴァナグに一任している。ヴァナグとエンゼが知り合い名だけあって、その手続きはかなり上手くいったのであった。


 「クロ、いこう」


 シノは厩舎からクロを連れ出し、軽食を屋台で買い、分厚い氷で覆われた湖の中央の小島へと向かう。

 そこが最近のシノの休憩所兼勉強場所だ。

 その小島も、湖が氷に覆われて居なかったら、きっと浮島、という名前に変わるだろう。そここは一層寒く、誰も好んで立ち寄らない為、静かに本を読め、好きに実験できる場所として、シノは好んでいた。

 スペーラの素は、すごく平凡な顔です。

 化粧によって見た目が大きく変わる典型的な普顔です。むっきむきを本人は目指しているけど、絶対になることはありません。

 それは、(作者が)女装を辞めさせたくないからです。


 あ、ナヨルニ=もやし的な野菜です

 白くてほそっこいから言われたんだろうね


 更新は明日なはずー

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