09 盗賊の襲撃
こたつとみかんが最強だね!
できれば緑茶も欲しいかな!!
まずはこたつが欲しいけど。
ストーブで焼いたお餅が美味しいです
三十五話! 始まります
宿へと戻ったシノは、クロを厩舎につなぎ直し、宿に入って女将にもみくちゃにされながら夕食を食べて眠りについた。
そして翌日。
昨日よりも早く起きたシノは、昨日とは打って変わって慌ただしい様子が村中に漂っているのを感じて首を傾げる。
「シノちゃん! シノちゃん起きてる!?」
部屋のドアを壊れんばかりに叩く女将の声で完全に覚醒したシノは、ドアを開けエンゼを中へと招き入れる。今の状況を短くシノへと説明し、とにかく冒険者は冒険者ギルドへと向かいなさいと助言をして、別の部屋の客を起すために部屋を去っていった。
「まものをしたがえたとうぞく?」
女将によると、魔物を従えた盗賊がこの村を襲撃しようとしている、という情報を冒険者が持ち込み、村民全員を集会場へと非難させようとしている、ということ。さらに冒険者はランクにかかわらずギルドへと集まり、速やかに盗賊への対処を行う為の話し合いが設けられるとのこと。
「んー? クロみたいのがいっぱい?」
黒曜馬の群れが村に訪れたなら、村は滅亡するだろう。それも一瞬の後に。
野生の黒曜馬の恐ろしさを知らないと考えられない出来事であるが故に、シノはそんなことは考えない。むしろそんな盗賊がせめて来たら、クロの仲間が増えて嬉しいとさえ感じている。
「いけば、わかるかな」
シノはしっかりと装備を確認し、クロは宿に置いて冒険者ギルドへと向かう。
冒険者ギルドでは、今村にいるほぼ全ての冒険者が集まっており、物々しい雰囲気を放っていた。体格のいい大人たちが多い為、シノは酒場の開いている椅子を引っ張り出し、その上に立って周囲の様子をうかがう。そんなことをしても周りの冒険者たちと同程度の目線にしかならないが、全く見えないよりはマシだ。
「皆さん! 緊急招集に集まって下さり、ありがとうございます!!」
受付の台の上に一人の女性が立って、声を張り上げる。前が見なかったらどうしようかと悩んでいたシノは、ちゃんと見えることに安心する。
その声を聞いた冒険者たちは静まり返り、次の言葉を待つ。
「ただ今、この村カゾスは未曽有の危機にさらされています。情報が提供された後、こちらでも確認を行ったところ、盗賊五十名に魔物二十匹が確認されました」
再び大きくなるざわめき。
「お静まりください! 情報提供者の『森の探索者』に詳しい話をしてもらいます」
「俺が情報提供者であるCランクパーティー『森の探索者』リーダー、ジムだ」
受付の上に女性と共に並び立ったのはジムだった。
「俺らは雪豹の出現が認められたと聞いて、昨日から山に籠っていた。その結果分かったのが、その雪豹こそ、盗賊たちが従えていた魔物だったんだ」
雪豹は寒い地域で群れを作らずに暮らす魔物だ。白い毛皮に黒い斑点の毛皮は、かなり高価に売買されると言うこともあり、ハイリスクハイリターンの魔物として有名である。
人里に下りてくることはあまりないが、山で食う物が無くなると人里の近くまで降りてきて食料確保のために暴れる、という習性がある。従えるのはそれほど難しくない獣だが、言いなりとなると、かなり自尊心の高い魔物である為に、従えている人の資質はかなり良いということになる。
「ただ、俺たちが確認した中で雪豹は一頭のみ。他は大猪や大熊なんかで、そんなに気を使う程の脅威でもない。問題は盗賊だ」
そこでジムは連れてきた仲間の一人を壇上へと引っ張り上げる。
「ははは………『森の探索者』の魔剣士よぉー」
自己紹介を始めたその女性は頭の半分が包帯で包まれ、片腕かなくなり、服は血で汚れ、包帯にも血がにじみ出ている。見ているだけで痛々しい。
この二人が生き残ったようで、魔術師と剣士は死んでしまったということを告げる魔剣士の女性。その眼には涙が滲んでいるようだが、懸命にこらえ、どういう状況だったのかを説明する。
「基本的に今回の盗賊は奇襲を得意としている。何処で手に入れたのかは知らないが、白っぽい服に身を包み、山や雪に隠れ、剣を刺してくる。リーダーは賞金首のパーガス。他にも賞金首になっている者を数名見かけている」
賞金首パーガス。
商人を襲うことで有名になった賞金首で、一番弱い者を生かし町へと返し、情報を持った町を蹂躙することで、己の声明を高め、愉しんでいる悪党。その賞金は銀貨二十五枚にも上がる。
「あいるたからこの村を守ってついでに稼ごうじゃないか! 俺らは自由を愛する冒険者!」
「隣人の敵に鉄槌を!!」
こういう場合の掛け声も決まり、再びざわめきが酷くなる。
「皆さん、これは緊急依頼となります。参加で銀貨一枚、成功報酬で加算されていきますので、村を宜しくお願いします!」
騒ぎに紛れないように声を張り上げて女性は受付への列を完成させていく。
シノは巻き込まれないように立っていた椅子に座って、その列が掃けるのを待っていた。
ギルドのタグには、倒した相手の残留魔力を記憶して、どの魔物を倒したか、人を何人倒したかを記録するようになっている。魔物は魔物の名前がギルドでちゃんと表示されるし、人も個人名が記録される。それで追加報酬が決まるのだ。
「君は参加しないのかい?」
「ヴァナグ。さんか、するよ」
「防衛、警備、撃滅、のどれに参加するのかな」
「げきめつ」
シノは迷うことなくそう告げる。
シノは今まで盗賊に直接会ったことは無かった。親方から冒険者として生活していく上で何度か盗賊の討伐なんかもやったと話を聞いたり、シーブから傭兵として生活していく上で一番稼げたのは盗賊の討伐だと言う話も聞いていた。だが、シノは本当に殺さなければならない、とされている理由がよく分からなかったのだ。
機会が巡って来たのなら、一度経験しておいた方がいい。それがシノの考えだ。
「ふむ。………よし、私と臨時パーティーを組まないか?」
「………なんで?」
「まずは子供だけ、というよりFランク冒険者だけでは撃滅に参加ができないということだな。私とパーティーを組めば撃滅にねじ込むことが出来るぞ」
元Bランクの冒険者で、今も戦闘指導を行っている実力者として優遇できると告げる。
「んー」
「他にはそうだな、ギルド職員だから、撃滅のレイドに加わらずに自由に動けることを約束しよう」
ダメ押しとばかりそう告げるヴァナグ。
「………わかった、よろしくたのみたい」
「了解。少し手続きをしてくるから待っていてくれ」
しぶしぶと言った様子で頷いたシノからギルドタグを受け取ったヴァナグは並んでいる冒険者たちの横を通り抜け、職員用入口から裏手へと入っていく。
待ってろと言われたシノは、椅子の上で足をぶらつかせながらぼーっとしていたのだが、そこにジムが現れる。
「無事冒険者になれたんだね、おめでとう」
「ありがとう」
「でもFランクなんだから、シノちゃんはちゃんと集会場で待機してなくちゃ。ここで座っているってことは参加はしないんだろう?」
仲間を失ったとは思えない程明るい、作った笑顔でジムはそう告げる。
「さんかする」
「なっ! 危ないよっ」
危ないから止めろ、と言う声に、周りの冒険者たちが振り返り、当事者のジムと、まだ幼いシノを認めると、仲間を失って取り乱しているのだろうジムに同情の視線を向けて、意識から完全に外す。
「盗賊は盗み、殺し、なんでもするんだよ? 子供はちゃんと守られてなさい!」
「こどもじゃない、ぼうけんしゃ」
「シノちゃん………」
それからジムはあの手この手でシノに出撃を諦めさせ、集会場へと行かせようとしていたが、一向に首を縦に振らないシノに項垂れ、唯一生き残った魔剣士の下へと戻って行った。
「強烈なラブコールだったじゃないか、いいのかい?」
「いい、のこるきはない」
「そうか。ほれ、これがパーティーの証だ。パーティー名は名前の一音と取って『シヴァ』としてある。借りだが、ここを掴むと念話ができるようになっている」
銀のギルドタグと共に返された、精密な模様が描かれた鉄のタグ。
書いてあるのは、パーティー名:シヴァ、とだけ。
[さて、この声は聞こえるかな?]
シノはヴァナグの声が聞こえて顔を上げるが、ヴァナグの口は動いていない。
[このタグをこうやって指を押し付けて何か喋ってごらん]
ヴァナグは掌にタグを置き、それに親指を押し付ける様子をシノに見せる。
「うん………ヴァナグきいろい」
[ヴァナグ黄色い]
二重になって声が聞こえてびっくりするが、それがそう言う機能だと理解し、ちょっと楽しくなるシノ。
パーティーの中でのみ使えるある程度の距離ならば念話による交信ができる、それがパーティータグに備え付けられた機能だ。ただし、発信できるのはパーティー内の上位二名で、他は受信しなければ会話が成立しないと言う、便利ではあるのだが、少々使い方に困る道具である。
因みに鉄の模様はパーティーによって異なり、同じ模様同士でしかつなぐことができない。登録された魔力を二つ混ぜ合わせて形作られる模様である為、世界でたった一つの模様のタグになる。複製は不可能だ。
「もし他人に聞こえないように話しかけたいときはコレを使うと良い。通じるのは私だけだがな………そして、黄色いとは髪の事かな?」
「ん、しっぽとみみも」
ヴァナグは苦笑いをし、シノと共にギルドの外へと出る。
「さて、撃滅に参加したはいいが、どうするんだい? 徒歩ではきついだろう?」
「クロをつかう。ヴァナグもうま、いるでしょ」
「確かに居るね。中央広場はそろそろ混むだろうし、多分スカスカになる東門で合流しようか」
シノは頷き、少し早目の足取りで宿へと戻る。
ヴァナグはそれを見送り、見えなくなったところで、厩舎の裏からギルドの裏手に回る。
「作戦通り、そのままあの娘の尾行を続ける。最悪の場合は………」
「ああ、切って捨てろ」
ヴァナグと話しているのは、新人冒険者講習会の時に的を作った魔術師だ。
「了解した、馬を一頭借りてくぞ」
「お前なら馬なんて要らないだろうに」
「俺の設定を思い出せよ、バカ」
「バカってなんだよ! ああ、そっか。片方動かし辛い設定だったけ」
「設定とか言うなよ、バカ」
「お前がそう説明したんだろ!? ほら、さっさと行け!」
ピリピリした雰囲気はどこかへと飛んでいき、残ったのは同僚を心配そうに見送る魔術師の双眸だけだった。
本文短いっ!
と言う訳で、ちょっとしたコラム(?)です。
カゾス村の冒険者ギルド職員に聞きました。
Q.ヴァナグってどんな人?
「かっこいい!」
「頼りになるよねー」
「このギルドじゃ一番の腕だな」
「怒ったときこえーよなー」
「かなり求婚されてるよな」
「なにそれ詳しく!」
「ってか、あいつ結婚しないの?」
「ギルド就職って普通冒険者やってて定住する手段なんだけどな」
「あー」
「つか、タイプとか聞いてないのかよ」
「いつもはぐらかされるんだもん!」
「だもんって。そんな年齢ブハァ!」
「なんか言った?」
「なんれもありまへむ」
A.とりあえずいい人
戦闘シーン上手く書けるようになったらヴァナグの冒険者生活のSSを書くのも面白いかも知れない。
明日更新しますん。




