01 森の探索者
新章突入!
いやー毎日投稿できるとかおもってませんでしたわw
つか毎日室温10℃、湿度20%ってそろそろキツイよ?
冬眠したいな
二十七話、始まります!
ほぼ丸一日寝たシノ。
目覚めたのは自分の腹の音だった。
「かわをさがさないと」
クロと共に方向も確認せず山を越えた為、現在地などをシノが知ることはできなかった。
来たことのない山で野宿はかなりつらい物がある。しかし、どんな山であってもシノが知る種類の草が生える場所はそう変わらない。ただ、水だけはどんな場所でも大きく変化する。
水がないと生きていけない。山で川を見つけると言うのは死活問題なのだ。
「クロ、クロ、おはよう」
シノが背もたれにしていたクロを揺り起こす。
クロは数回瞬きをすると、立ち上がり、洞窟の中から出て行く。
クロもお腹が空いていたのだろうからきっと外で草でも食んでいるのだろう、と思ってシノはクロから取り外した鞍の中身を確認していたのだが、返ってきたクロの咥えるものを見て驚いた。
クロは群生するヴィーラを一本丸々持ってきたのだ。
シノは急いで外に出て確認するが、洞窟の周りにヴィーラは一本たりとも生えていない。だと言うのに、どこから持ってきたのか。
「ん、クロ?」
考える暇もなく、ぐいぐいと洞窟の中にシノを押し込むクロ。
腹の音に合わせて嘶くそのさまは、早くご飯にしようと言っているようで、シノは考えることを放棄する。
水場を見つけなくても、ヴィーラの節に水は貯まっている。
その水だけで過ごせる、とシノは判断し、食事を用意することにする。食事の間、クロは外で草を食みに行っているのだが、返ってくるたびに何かしらお土産に持ってくるものだから、シノは少し呆れてしまった。
「たんけん、しよう?」
そうシノが言ったのは、洞窟に来て三日程たった日の事だった。
三日も立てばいい加減安全と判断できるのだが、もしかしたら奥に元の住人の痕跡が見つかるかも知れないと思ったからこその判断だ。
「くらい………」
洞窟の中は暗く、付いてきたクロがギリギリ通れるほどの高さでしかなかった。
洞窟は入り組んでいる、ということもなく、多少歪曲するものの一本道で、最奥には地底湖が広がっていた。
「トゥー?」
地底湖は大きく、その岸の岩辺には、大量のトゥーが群生していたのだ。緑色のトゥーが光って湖を照らしている様は何とも幻想的である。
「クロ、トゥーラエ、いる?」
シノにもクロにも、トゥーが生えている以上居るはずのトゥーラエの気配が全く感じられないのに驚く。
本来なら地面に生えているはずのトゥーが壁や天井にも張り付いて生きている事にも驚き、危険が無いと判断してからは見惚れてしまっていた。
トゥーラエは清浄な空気と水を好み、その多くは山中の水が湧き出る場所に暮らしている。歴史書には、神使として崇め奉られていたという記録も残っている。
「お水、飲んでて」
シノは一度洞窟の入り口近くの野営場所に戻り、あらかじめ水筒用にと加工しておいたヴィーラを持って地底湖まで戻る。
これだけトゥーが生えている地底湖周辺だ。栄養をため込むトゥーが発光していられるというのは、それだけその水が澄んでいるはずだと、シノはその水筒が水面に浮かんでこないように石を括り付け、蓋を開ける。
「『“CAUPONA” quasi ad repraesentandum effectum expectationem. Infinitus repono.』」
吐きそうになるほどの倦怠感を何とかこらえながら、シノはその簡易水筒を地底湖の中心に向かって投げる。
ゆっくり沈んでいった水筒を見て、シノは紐をつけ忘れたことを今更ながらに思いだす。
「………あたらしいのもってこなきゃ」
次は失敗しないように、と洞窟の入り口まで戻って同じような水筒を持って地底湖に戻ってみると、明らかに地底湖の水位が下がっていた。
「え?」
シノが水筒を投げ入れただろう場所からはごぽごぽと泡が出続け、少しずつ地底湖の水位が下がっている。
どうしようもなく、シノはそれをただ眺めつづけ、底が見えるほどに浅くなったすり鉢状の地底湖の中に入る。横倒れになっている水筒よりも水位が低いため、シノの足がぬれることはない。地底湖の壁の岩の一部が裂けており、そこから水がずっと流れ出しているのだが、水筒の吸収能力の方が多く、一定以上水位が上がることはない。
「お、おもい………」
シノの太ももと同じくらいの水筒にかけた魔術は、沢山のモノをしまえるようになる、と言う意味のモノ。
中に入っているモノに対する質量に比例する重量に関しては考えられていないので、重いのも当然だろう。
シノは持ち上がらないそれを目の前に、魔術を使うことを選択する。
「『“CAUPONA” uasi ad repraesentandum effectum expectationem. Pondus salva.』」
唱え終わったシノは水筒の横に倒れた。
賢明なことにクロは地底湖に降りては来なかったが、地底湖の周りをぐるぐるとまわりながら、シノの目覚めを心配しながら待っていた。
目覚めたのは数時間後。
「うぅ………」
岩にぶつけジンジンと痛む頭を押さえながら、起き上がったシノは心配そうに嘶くクロに無事だと手を振り、今度は保有魔力を確認してから魔術を使う。
「『Fixum statum.』」
もう水を吸い込むことは無く、羽のように軽くなった水筒を持ったシノは地底湖の壁を登り、クロを撫でる。
地底湖の水位はシノが登ってから少しずつ上がってきており、もしも枯らしてしまったらどうしようと考えていたシノはほっと胸を撫で下ろした。
そのまま入り口で水筒置き、大瓶一本と小瓶二本とナイフを持って地底湖へと向かう。こんなに沢山生えているトゥーは保管しておかなければもったいないと思ったからの行動である。
群生しているトゥーの中でも若く瑞々しい個体を狙って岩から剥いでいき、瓶の中に詰めていく。
「クロ、へいきだから、ね?」
瓶の中に欲しいだけ詰め込んだシノはその場で魔術を使用しようとしたのだが、クロに止められ寝泊まりしている場所に戻ることになる。そこでも詠唱の邪魔をしようとしたクロを何とかシノはなだめ、魔術を使用する。
「『“Aqua”uasi ad repraesentandum effectum expectationem. Nam umor retentione. 』『Fixum statum.』」
案の定シノは倒れる。
地底湖での時よりも長く眠り続けるシノにを心配して、クロは貧乏ゆすりを覚えてしまう。周囲から見ればせっかちな馬、としか見えないのは良かったことなのかどうかのか。
「だいじょうぶって、いったのに」
心配性だなぁとシノは言うが、クロはシノがいなくなると思ったのか、頭をシノの腹に押し付けここにいるということを確かめるようにすり寄った。
そんなこんなで、偶にティエリアが現状を記した手紙を運んできて、様々な料理をしながら母の手記の解読に勤しむ毎日が過ぎた。
季節は二つ代わり、草が青々と茂っている。
「お前ら、ここで何してんだ?」
いつも通りまったりと過ごしていると、洞窟に人が現れた。
人里よりかなり離れた場所にあるのだろうと思っていたシノは、その来客に目を丸くする。何と言っても、これが初めての来客だったのだ。
「………ごはんたべてる」
「見りゃわかる。………なんでここにいるんだ?」
そこに来た男は、シノが時間的に夕飯らしきものを食べていて、その側で馬のような影が寝そべっているのを見て、疑問に思ったのだろう。
シノたちが完全に入り口を占領しているから、退いてもらおうと声をかけたのかも知れないが。
シノは男の疑問に首を傾げ、男はシノが明確な答えを持っていないのか、言葉の意味が分かっていないのか測りかねずにその場で硬直している。
「ちょっとぉ! なにしてんのよぉ、斥候のあんたがいないと私たちは山籠もりしなきゃならなくなるのよぉ!? って、あらぁ?」
入ってきたのは薄着の女性。
軽量タイプの鎧を部分部分に付けていることから、きっと冒険者なのだろう。
「この子なぁにぃ~?」
「それを今聞いてるんだ。えっと、仲間たちを入れてもいいかな?」
「ん」
「ありがとよ。とりあえずあいつらも連れてこい。奥の地底湖に行くにはここを通るしかないし、どうせあそこで今夜は過ごさないといけないんだからさ」
「はぁ~い」
女性は洞窟から外へと出て行った。
残ったのは男とシノとクロ。
「まずは自己紹介だな。俺たちはCランクパーティー『森の探索者』。俺が斥候兼リーダーのジムだ。よろしく」
「ん。シノ、こっちはクロ。ぼうけんしゃみならい」
ジムと名乗った男がネームタグを見せてきたので、シノも首に下げている木片を見せる。
「見習い? あの制度を利用してるやつを見るのは初めてだよ。………シノ、ちゃん? かな。今何歳なんだい? 気にしたらごめんね、どう見ても冒険者をするような年齢に見えないから」
冒険者ギルドで冒険者として登録できるのは十歳からで、例外は、親が冒険者で身分証を作成しなきゃならない場合に冒険者見習いとして登録したり、公にできない身分をもって生まれてしまった者に与えられるような身分証として発行される。
「いい、ご………このまえろくさいになった」
「え……ろ、六歳」
男はそれを聞いて顔を引きつらせる。
公にできない身分というのは、基本的に冤罪処理に使われることが多いのだが、それが子供の場合、貴族の落胤である可能性が強くなる。その身分を表ざたにできない為に、幼い頃に冒険者登録させ、十歳でFランク冒険者として昇格し、町から追い出すということが慣例的に行われており、十歳よりも幼い子供の場合はどうにかして町の外に連れ出し、自らの手を汚さずに子供を葬る手段として未だに行われている悪習だったりもする。
「きったよぉ~、自己紹介したかんじぃ?」
「外に馬繋いできた。つか子供って………マジでいるし」
「………」
「あ、俺たちは四人で『森の探索者』を組んでるんだ。改めてよろしく」
全員揃ったとこで再度自己紹介を行い、シノは町の名前やなんやかんやを伏せて、冒険者登録は年齢的にできないから、返る町も無い為、山で愛馬と一緒に暮らしているんだと告げる。
嘘はついていない。
「へぇ~、まだちっちゃいのに大変ねぇ」
「クロがいるからへいき」
『森の探索者』は男二人に女二人のパーティーだった。
斥候に剣士、魔剣士に魔術師が居るというパーティーで、ここら辺じゃ割と有名なベテラン冒険者たちらしい。
ここら辺と言われてもシノには全く分からないのだが。
「そうだ、奥の地底湖見に行ってくるから、野営の準備しといてくれ」
斥候であるジムが奥へとすたすた進んでいく。
「なれてる?」
「ああ、俺たちはこの時期にここに良く来てるんだ。奥の地底湖は見たか?」
「みた」
雪の降る季節は積もって洞窟が見えなくて、草が芽吹く季節は水がここら一体を浸してしまって近づけないから、緑が生い茂る季節に来るのだと言う。
「奥にトゥーラエと呼ばれている大蛇が居るんだが、あの蛇か住んでいるところにだけ生えている苔があってな、調合師がそれを買い取ってくれるんだよ」
「ふーん………」
調合師ということは、薬師の卵のことだろう、とあたりをつけるシノ。トゥーと言う苔の名前はやはりその道に進んだ者しか知らないんだな、と考えながら、採ったこのトゥーは幾らになるのかと考える。
「あーでも小遣い程度にしかならないんだ。高ランク向けの依頼なくせに報酬は安いからほぼ慈善事業なんだよね………」
「いくら?」
「このくらいの匙すりきり一杯でぇ、五テルぐらいよぉ」
「へー」
魔剣士のリーネが指したのはシノが食べるのに使っていた自作の大匙だ。その匙の量であれば、小瓶一杯分と同程度だろう。大瓶だったら銀貨一枚になるかも知れないが、たった銀貨一枚だ。
小瓶一杯で賤貨五枚ぐらいになるとなると、高ランク依頼の報酬としてはかなり安いのだろうとシノは考える。
シノは今まで他の調合師にあったことがないのと、森に出る以外に外を出歩くこともあまり無かった為、ものの物価と言うものがよく分からない。しかもガラムは少々特殊な物価体系をしていた為、そんな町でそのおかしいところをわざわざ教えてくれる人も居なかったのだから、物の価値は分かっても、物の値段を知らないのは仕方ないことなのだ。
「やっすいでしょぉ~、でもなんでかこの苔の依頼だけはずぅーっと置いてあるのよぉ」
「変だ変だとは思うんだけどな、一応毎回こなしてんだ」
なぜか緊急以来の所に置いてあることもあるのよねぇー、と話が進む。
因みにシノの保存方法でトゥーを保存すれば、匙すりきり一杯で最低でも銀貨一枚程度にはなったりする。もしシノが瓶に入ったトゥーをどこかに売れば、その稼ぎと共に凶手が送られてくることだろう。もしくは、また飼い殺しにされるか。
「おいっ! 緊急だ!!」
「ど、どうした!?」
奥からジムが顔を青くして走って戻ってきた。
「奥に、トゥーラエが居ないんだ!」
「んー? いいことじゃないの。さっさとあの苔採るりましょぉー」
「トゥーラエが居ないってことは、あの苔をとれる場所が限られてくるんだぞ!緊急依頼がこなせなくなるじゃないか!」
「いや、そこまで慌てることはないだろ………」
シノはジムを見る。
あの様子だと知らないはずの苔の重要性でも知っているのかな? とシノは目を細める。
「トゥーラエは聖獣扱いされてるけどぉー、私たちには害獣と変わらないじゃなぁーい」
「もし狩られてたら、それをもしギルドに持ち込まれたら、一大事だぞ!?」
ジムの様子はどんどん悪化する。
人の話を聞かないその切迫した様子に、シノとクロは空気を読んで黙っている。
「とりあえず今ある苔を瓶に入れて一旦帰ろう、ギルド長に話してここのことを知らせないとっ」
「めんどくさぁ~いぃ」
「後で愚痴は聞いてやるから、とにかく片付けないと」
「………ジムは一度言い出したら聞かない。片づけるのが最善の選択」
「はぁ………ゆっくり休めると思ったのに。とんぼ返りか」
「むぅー」
野営の準備をしていた『森の探索者』メンバーはてきぱきと広げた荷物を片づけて行く。
「きょてんはとおいの?」
「そうだな、馬を急がせて三刻、いや、それ以上かかるかもしれない」
「ふーん、とおいね」
既に茜色に染まり始めている空。
三刻も過ぎれば、その拠点に着く頃には真夜中だろう。
「シノちゃん、キミも来るか? 拠点の名前はカゾス、ここじゃやれることもないだろう?」
片付けをしている合間に、ジムがそう言った。
『森の探索者』の面子はそんなジムを不思議そうに見ていたが、一瞬で納得した表情になり、片づけを続ける。
「ん」
その誘いにのるシノ。
半年ぶりに人と交流を持つのもいいかもしれないと、『森の探索者』たちと一緒に洞窟を出るのだった。
特に話の進み具合に関係ない人の名前は挙げない主義(‵・ω・´)
いや、話の長さが倍になってもいいならそうするんだけどね。
友人「馬鹿じゃね? もっと短くしろよ」
自分「え」
友人「今大体六千文字だろ」
自分「うん………」
友人「既になげぇよ」
自分「これでも短くしてる………」
友人「はぁ………(呆れ)」
って言われたのでね。
名前なんか考えてないのですよ………
明日更新!




